第13話 村の解放(結末)
村からエルフたちが去り、子どもたちがリアナに率いられて帰ってきた。
両親との久しぶりの再会に、嬉しそうに駆け寄っていく。
「お母さん、ただいまー」
「嫌なエルフがいなくなったねー」
「一緒に暮らせるぞ、やったな、わははははー」
村全体が笑顔に包まれた。
村人たちが心から笑うのは、いつぶりなのだろうか。
そして、子どもたちと一緒にきた優しいエルフ娘のノエルさん。
ノエルさんは、やはり人間の村では暮らし辛いということで、神聖エヴァリス王国の王都へと帰ることになった。
エルフをよく思っていない村人が多いわけだし、それはそう。
引き留めるわけにもいかないので、僕は携帯食や水を渡すなど、帰路で困らないようできるだけのことをした。
ノエルさんは、エルフの中でも魔力が強いため帰路での不安もなく、王都に戻ったあとの生活にも問題はないらしい。
「心配はいらないよ、レオン君」、ノエルさんはそう言って、いつもの笑顔を見せてくれた。
やはりノエルさんは良い人だ。
最後に挨拶をして別れたが、またどこかで会えたら嬉しいなと思う。
村中が笑顔に包まれ、ノエルさんと別れたあと、僕も両親の元へと急ぐ。
父さん、母さんとも元気だろうか。
「おお、レオン! 大きくなったな!」
「レオン、元気そうだね。母さん、安心したよ」
「父さんと母さんも元気そうだね!」
見ると、母さんが小さな子を連れている。
この小さな子は、もしかして……。
「母さん、その子は?」
「レオンの妹だよ。ほら、お兄ちゃんだよ?」
母さんが優しく促すと、小さな子はキラキラした目で僕を見上げて、少し恥ずかしそうに口を開いた。
「ル、ルナ……。ニシャイ」
か、可愛い! ルナ、二歳か。
僕の妹がこんなに可愛くて良いのかと思うほどの可愛いさだ。
しばらくの間、僕は妹も交えて、久しぶりの両親との会話を楽しんでいたのだが。
「ところで、さっきの大きな怪獣、あれ、レオンじゃないかい?」
「えっ!? ええぇ!? な、な、なんで、母さんはそう思うの!?」
僕は不意打ちの発言に、思いっきり動揺する。
「うーん、そうだね、雰囲気? 気を使っている感じとか。ねぇ、父さん」
「そうだな、歩き方や表情もレオンに似てたぞ」
「そ、そうなの!?」
「やっぱり自分の子だしね。分かるもんだよ。うふふ」
「レオンは産まれたときから不思議な子だったからな。はははっ」
なんということだ。
僕が怪獣だということがバレている。
ついでに産まれた時からヘンな子だと思われていた。
もう完全にバレているし、僕は両親にだけ怪獣に変身できるようになったことを話すことにした。
僕が怪獣になるまでの経緯を聞いた両親は、「怪獣だろうが何だろうが変わらず自分たちの子だよ。うん、大きくなったな。本当に」と言って、笑ってくれた。
僕はその言葉を聞いたことで、気持ちが軽くなった気がした。
心のどこかに、自分でも気がつかなかったモヤモヤが残っていたのだろう。
なんと言っても人間ではなくなり、謎の怪獣になったわけだし。
しかし、そんなモヤモヤがなくなり、今の僕はスッキリ爽やか。
さすがは父さんと母さんだ。ありがとう。
それから、ちょうど良いタイミングだと思ったので、僕はエレナとリアナを両親に紹介した。
双子の美少女を前にした父さんはデレデレになってしまい、母さんに怒られていた。
◇◇◇
村を解放したあと、エレナとリアナの住居用に、エルフの管理官が住んでいた建物を融通してもらった。
村から少し離れた場所にある立派な一軒家で、とても使い勝手が良さそうだ。
二人は怪獣と一緒に現れたため、村人から「怪獣の使い」だとか言われて、チヤホヤされている。
特に男性からの優遇がすごかった。
ということで、今はエレナとリアナと一緒に、エルフの管理官が住んでいた建物の一室にいる。
三人で今後の方針を検討中だ。
「村のみんなが決起したのは嬉しいけど、これだとエルフから狙われるかな」
「そうですね。その可能性は高まりましたね」
本当は、神聖エヴァリス王国に『辺境の地で頭のおかしい怪獣たちが暴れているので近づかない方が得。村は全滅だろう』と思われたかった。
凍ったまま走り回るピグモーなどは、頭のおかしい怪獣らしさが出ていて非常に良かったと思う。
僕も村人たちが避難したあと、アピールのために村の一部を破壊するつもりでいた。
しかし、村人たちが決起するという事態になり、想定が変わった。
頭のおかしい怪獣がいたとしても、人間の反乱行為を神聖エヴァリス王国が見逃してくれるかは不透明だ。
神聖エヴァリス王国の出方は気になるが、考えても分からないので、まずは警備を厳重にすることにする。
当然ながら村人たちもエルフを警戒して、何人かを見回りに出している。
ただ、村人だけでは不足だと思うので、僕自身も見回りに行きたい。
しかし、僕が見回りに行って、その間に村が襲撃されてしまうのは困る。
そのため、僕は村を離れづらい。
他の候補としては、ピグモーとモフモフ。
どちらも機動力がないので、見回りには不向きだ。
それにピグモーとモフモフには食料としても頑張ってもらっているし、これ以上の無理はさせられない。
特にピグモーは、凍ったまま走り回っていたので、少し風邪の症状が出ている。色々とすまない。
これは完全に駒不足だ。
もっと怪獣仲間が欲しい。
そこで、いつも頼りになるエレナに尋ねてみる。
「なんか機動力のある良い感じの怪獣はいないかな?」
「レオン様、ピッタリな怪獣がいますよ」
さすがはエレナ。
僕のざっくりとした投げっぱなしの質問にも即答だ。
と思ったら、リアナも同じく反応する。
「レオっち、たぶん近くに来ていると思うよ」
「えっ!? そうなの!?」
さすがはリアナだ。
リアナの発言には、毎回のように驚かされる。
それにしても、どういうことだ。
僕はピグモーとモフモフ以外の怪獣を見た記憶が全くない。
基本的に怪獣なら巨大なはずなので、見落とすことなどありえない。
驚異的な視力がある僕なわけだし。
「外に行こっ」
「レオン様、ついて来てください」
僕は二人に促されて、村の外へ出ることにした。
いったい村の外に、どんな怪獣がいるのだと言うのか。




