【VOICE~日本酒奇譚~ #01】酒嫌いの僕にだけ聞こえる″声″…
酒が嫌いだ。
正確には、酒そのものが嫌いというより
酒に酔った人間が嫌いだった。
そして、もう一つ。
俺には、酒を飲むと″声″が聞こえる。――
俺の名前は「小川俊」。
浅草生まれ浅草育ちの21歳。
職業は公務員。
ガラスアートが趣味。
……少なくとも、普通の人間だ。
三人兄弟の末っ子で、甘え上手だった俺は、愛嬌が良いのか、学生の頃から人間関係も良好だった。
それは社会人になっても変わらず。
周囲に可愛がってもらい、仕事もよく任せてもらうようになり、順風満帆な公務員生活を送っている。
ただ…唯一苦手なことがある。飲み会だ。
俺は…酒が嫌いなんだ。
しかも最近、その飲み会の場になると、どこからか脳内に語り掛けてくるような声が聞こえるんだ。
特に霊媒体質ってわけじゃないのに…
そして、それは今日も…
「どうした小川くん!酒が進んでないじゃないか!」
「あ、いや…僕お酒弱いんすよね…」
懇親会という名目のただの飲み会。
上司とのお決まりのやり取りだ。
「かぁ~これだから最近の若いもんは。」
「いいかい!酒が飲めてこそ男ってもんだろう。」
「特に日本酒はいいよ~!初心者はね、まずすっきりとしたクセのない純米吟醸なんか…」
酒が入り、上司はすっかり饒舌になってきた。
『はぁ…出た出た。』
『こういう押しつけとかうんちくとか語り出すから酒飲みは嫌いなんだよ…』
『大体、酒飲むなら飲まれんなよ。』
そう、俺が酒嫌いの理由はこれだ。
もちろん味も分からないというのもあるし、そもそも弱いというのもある。
だけど一番は、酔っぱらう人が居ると、興ざめするということ。
「ささ、小川君!まずはこれを飲んで!!」
「え、いや、あの…」
急に酒をすすめられ、戸惑っている間に、店員さんが目の前に置かれたお猪口に日本酒を手際よく注いでくれた。
そして、その一升瓶をテーブルにそっと残してくれた。
俊は改めてお酒のラベルに目を向ける。
俊
『六根…純米吟醸…華さやか?』
『ふーん。日本酒なんてどれも同じ味だろう。』
謎の声
「違うよ。」
え?なんだ今の声!?
まただ!またあの声が聞こえた!
ーーーーーーー
この日、俺はまだ知らなかった。
これから日本中の酒と出会い、そして、その声を聞くことになるなんて…
【VOICE ~日本酒奇譚~】
第一章 日本全国酒巡り――すべては、この一杯から始まった。




