寄生する神
神機プロメテウス・エフィメラ。それは、もはや一人の人間が成せる姿ではなかった。
黄金のパイプオルガンとドクターの肉体が完全に融合し、巨大な真鍮の触手が、心臓部であるエンジンを保護するように、それでいて侵入者を拒絶するように空間を縦横無尽にのたうっている。
その光景は、巨大な黄金の蜘蛛が都市の心臓を捕食し、己の血肉へと変えているようでもあった。
「愚かな。君たちは、この都市の心臓を傷つける覚悟があるのか? 私を撃てば、このエンジンも止まる。私の神経系はこのプロメテウスと完全に同期しているのだ。私を殺すことは、ネオ・ロンドニウムを永遠の闇に沈め、数百万の民を死に追いやることに他ならないぞ」
エフィメラの歪んだ声が、四方八方の排気管から反響し、重低音となって床を震わせる。広場全体が彼の拡声器であり、喉そのものだった。だが、ジェミニの瞳に迷いの色は微塵もない。彼は愛用の重量級レンチを、かつて戦場で振るった愛剣を握るかのような確かな手応えと共に握り直す。
「勘違いするな、ドクター。我々は探偵だ。街のゴミ溜めに隠された真実を暴き、歪んだ機構を正すのが仕事でね。この都市という巨大な機構に寄生した、貴様という名の悪質なバグを特定し、取り除きに来たに過ぎない。このレンチは、そのためのメスだ」
ジェミニはベルに鋭い合図を送った。言葉を交わさずとも、視線だけで互いの最適解を汲み取れるほど、三人の連携は極限まで研ぎ澄まされていた。
「ベル。ターゲットは寄生している外部増設ユニットのみだ。エンジン本体の基幹パイプには指一本触れるな。エフィメラと連結している不法なバイパスだけを狙い打て」
「シュ、ゥ、ゥ、ヴォォォォン」
ベルが黄金の瞳を強く発光させ、床を蹴った。彼女の真鍮の踵が石畳を木端微塵に砕き、弾丸のような速度で空間を舞う。四肢のリールから放たれた三本の極太の鉄鎖は、暴れ狂う真鍮の触手を次々と絡め取り、その凶悪な機動力を力ずくで封じ込めていく。ベルの動きは超精密なものだった。エンジンの脆弱な計器類をミリ単位で回避しながら、エフィメラの肉体と化した後付けの装甲のみを確実に捉え、締め上げていく。




