第46話 会いたかった奴に限って変な場所で会う。
前回のあらすじィ!
特人が自分のレポートと入れ替えに手にしてしまったソレは、通りすがりのJKの直筆令嬢系小説(官能的)、つまり、黒歴史そのものであった!
ナノハとその小説を共有して悪趣味な雑談に花を咲かせていると、そこに「紹介したい人が居る」と言う江口が姿を現す。その言葉に興味を惹かれついて行くと、どうやらその人物とは特課の新入りのことらしいじゃないか。
この展開、...普通なら今朝のお嬢様JKが現れる流れだが、果たして...!?
「特課に入る、新入りの紹介や」
及川がぶっきらぼうに、そう言い放った。
(新入り...だと!?)
この流れ、今まで数多の学園系を見てきた俺には分かる。
そう!転校生は、「あー!アンタはあの時の~!」ってなる美少女だと相場が決まっているのだ!!と言う事は、つまりこのパターンで登場するのは、今日の朝ぶつかった、あのお嬢様JKッ!
「そんじゃあ紹介するで。おーい、入ってきてくれ~」
及川が呼び込む、出入り口の奥。
そして数秒後、新入りの姿が露わとなり___
「...あ、ドモ、こんちゃ。えっとー、『堀内・ブルーアイズ・純』デス。気軽にブルーって呼んでくだサイ」
「...テメェかよーーーーッ!!」
気が付いた時には、叫んでいた。入り口から姿を現したその人物は、今朝ぶつかった華奢な体つきのお嬢様JKではなかった。むしろそれと対極の位置に居るであろう、ガチムチマッチョな金髪ドレッド黒人のブルーであったのだ。
「え、ってかなんでブルーがここに居るの!?この間の一件で逮捕されたんじゃなかったの!?しかも、し、新入り!?」
「そ、そうじゃぞ!元々指名手配犯だったお主は、ワシと特人と一緒にヤクザ潰しに行って、そこで江口に捕まって刑務所にぶち込まれた筈じゃ!なんでここにおる!?」
俺とナノハは、想定外のブルーの登場に驚きを隠しもせず、疑問をぶつけまくる。それもそうだ、俺とナノハは数日前、初仕事として指名手配犯だった彼を追い、そこからなんやかんやあって彼と共に和田組というヤクザ組織を潰しに行ったのだ。あの時は特能を発動して暴走したブルーが、江口の麻酔弾に撃たれて撃沈し、その後逮捕されて刑務所に送られたと思っていたのだが...
俺たちの姿を見たブルーは決まりが悪そうな笑顔を作った。しかし、俺とナノハの怒涛の問いに答えたのは、彼の隣に立っていた及川であった。
「まぁジブンらの疑問も分かる。ブルーは本来罪人で、今まであらゆる場所でその特能を使って大暴れしてきた男や。...せやけど、今回捕まった経緯の元々を辿ると、コイツが反社会的勢力と敵対したからや。おかげで世間に蔓延る悪が一つ消えたのも事実。その動機にも、情状酌量の余地があったしな」
実際、ブルーが悪い奴じゃないのは俺もナノハも知っている。彼が指名手配犯となるまで暴れていた理由は、親の仇である和田組の信頼を得るためだった。そして俺とナノハと出会ったブルーは、自分の事を信用しきっていた和田組を裏切り、親の仇を討つ計画を実行したのだった。
続けるように、及川が一呼吸おいてから再び話を始める。
「...そして何より、ブルーは強い。実力至上主義の特課は、コイツみたいなパワータイプを欲してたんや。せやからウチが何とか上に話を通して、『ウチと江口が主となってブルーを制御する』という条件付きで特課への編成が認められたんや」
彼女はそう言うと、自分の腰のあたりをポンポンっと叩く。そこには一丁の拳銃が装備されていた。彼女は今まで刀しか装備していなかったが、ブルーが暴走した時用の麻酔銃も携帯するようになったらしい。
と、ここでようやく、ブルー本人が遠慮がちに口を開けた。
「そのー、何というか、...オレもこうやってチャンスを貰えて嬉しいし、また特人とナノハと協力できるのも、嬉しく思っテル。特能はまだ制御できないけど、この特課の為に貢献したいと思ってるンダ。だからその、...改めて、よろしくお願いしマス」
ブルーは恥ずかしそうに眼を泳がせると、深々と頭を下げた。大して久々でもないのに、彼の声を懐かしいと思ったのはおかしな話だろうか。
彼の姿を見て、サキちゃんは「よろしくお願いしますね!」と拍手をし、江口は「筋肉系のオトコ追加~!」とはしゃぎ、ナノハは「まったく、お主に協力したせいでワシは減給したんじゃが...」と言いながらも少し嬉しそうに表情を緩めていた。
俺もつい一歩前に出て、ブルーに対して手を伸ばす。それはもちろん、新しい仲間を歓迎するための、握手をするために。
「歓迎するよ、ブルー。今度は俺たちを殺しかけるなよ?」
「!...アリガトウ、...みんな、アリガトウ...!」
ブルーは俺の手を固く握ると、涙ぐんだ様子で顔を綻ばせた。そんな彼の安心したような顔に、こちらも心が温かくなった。
...それはそうと。
彼の手を握ったまま、ズイっと顔を近づける。
「ところでブラザー。あの時の契約を忘れたわけじゃねぇだろうな?」
ブルーの顔はみるみる内に、漢の顔になった。
「...あぁ。オレに協力した報酬、4Dエロ本(人妻系)の話ダナ?漢と漢の約束を忘れるわけがねぇだろ、ブラザー」
俺とブルーは皆に見えないように、小さくグータッチを交わした。
ブルーはヤクザに親を殺された悲しき男であり、途轍もない力を秘めた特能の持ち主であり、そして何より、俺と紳士的な話題を語り明かせるBrotherなのだ。俺とブルーは、ニヤリとほくそ笑んだ。
「はい!そんじゃあ、新入りを温かく迎え入れてもうた所で、早速やけどお仕事の時間やで!ついさっき、特課宛てに出動要請が届いた。内容はラリったチンピラ集団の鎮圧、場所は西東京市や!」
及川が、場を仕切り直すようなテキパキとした口調で宣告した。告げられた業務内容は、いかにも特課らしい、武力行使歓迎といった内容である。俺は溜息をついて、自分の出番が訪れないことを神に祈るしかない。
「今回出動するのは、下っ端タッグの特人とナノハ、そして新入りのブルー、見張り役にウチの計4人や!はい、今呼ばれたメンバーはすぐに準備に取り掛かる~!」
でしょうね。下っ端の俺とナノハは、当然の様に出動メンバーに組み込まれている。今回はそこに加え、特課としての初仕事であるブルー、その見張り役の及川の2人が参加する。まぁ戦闘力の高い2人が来てくれるのはありがたいが...
俺とナノハはため息をついて、出動の準備に取り掛かるのであった。さっきナノハに見せた、お嬢様JKの直筆小説もポケットに突っ込んで...
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30分後...
「う、うっぷ...。ちょっと及川、飛ばしすぎじゃない?あとタイヤのない未来の車、浮遊感ヤバすぎ......ウ”ゥ”ップ!」
真っ先にパトカーから降りて、込み上げる胃の内容物を制しながら愚痴だけを吐き出す。まぁパトカーと言っても、外観は未来特有のタイヤレスな車で、現代で見るそれとは大きく異なっている様相をしているが。
運転席から颯爽と降りた及川は、俺に脇目も振らないで、「運転AIがそういう設定になっとるんや。我慢しぃ」とだけ吐き捨て、目的地まで歩き始めた。続いて降りてきたナノハとブルーも、心なしか具合の悪そうな顔色で及川の後をついて行く。
パトカーを降車した地点から2分ほど。ズンズンと先を行く及川たち3人と俺の間には、十数メートルの距離が生まれていた。しかし、そんな先陣を切って歩みを進めていた及川が、突然立ち止まった。そのすぐ後を追っていたナノハとブルーも、彼女の隣まで歩くとピタッと足を止める。例の、「チンピラ集団がいる」と通報を受けた地点に着いたのだろうか。
...しかし、何か様子が変だ。そこにチンピラ集団がいるのなら、及川の性格上、問答無用で刀を振り回し始めてもいい気がする。いや、ナノハとブルーに至ってもそうだ。3人とも、何か愕然と立ち尽くしているように見えてしまう。
「お~い、3人とも急に立ち止まってどうしたんだよ。中学時代仲良かったあの子のグレた姿でも見ちゃいましたかって___......え、なにこれ?」
ようやく3人の隣まで追いついた俺は、彼女たちの視線の先にある、ソレを目撃してしまった。
そこには広々とした空き地が広がっていた。...そしてその空き地の中央には、なんとすでにボッコボコにやられたチンピラ集団が、山積みになっていたのである。
「なんやねんコレ...!特課にしか出動命令は出ていないハズや!一体誰がこないなこと...」
珍しく困惑しているように見えた及川は目を見開いて、おおよそ30人は居るであろう山積みのチンピラ集団を見上げた。チンピラ山からは所々に、「痛ぇよ...」「助けて...」と嗚咽が聞こえるので、どうやら彼らも命まで奪われたわけではないらしい。
俺達4人がその異常事態を前に呆気に取られて立ち尽くしていると、ふいに、チンピラ山の向こう側から2つの人影がひょこりと現れた。及川が一番最初にその人影たちに反応し、腰に差した刀の鞘を触った。彼女の反応に急かされ、俺達も1テンポ遅れて臨戦態勢をとる。
すると、山の頂上に立つ人影の片方から、快活そうな女性の声が響く。
「その制服からお見受けするに、貴方方も警察でいらして?でしたらごめんあそばせ。ここは既にあたくし達が制圧_____おや、少しお待ちを。そこの眼鏡の貴方、見覚えが...」
こちら側に眼鏡は1人、俺だけだ。と言う事は、どうやら最後の一文は俺に向けられた言葉らしい。特課を除いた女の知り合いなんて、指を詰めたヤクザでも片手で数えられるくらいしか居ないが...
彼女?は数秒の間考え込むように黙ると、突然、堰を切ったように声を張り上げた。
「あ!!貴方は、今朝通学路の路地で衝突した、あの大学生!!」
嫌な予感が、寒気となって背筋を伝う。慌てて俺は、度の合わなくなってきている眼鏡越しに、彼女の顔に目を凝らす。
少し吊り目気味の、猫のような眼。切り裂く様にくっきりとした輪郭と、筋の通った強気な鼻。そして何より、オレンジ色の縦ロールしたツインテール。一瞬で理解した。...理解せざるを得なかった。
本来、謎の転校生として再会するべきだった美少女は、チンピラ山の頂上から再登場したのであった。
続く!
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