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レイコン  作者: 沙φ亜竜
第四章 幽霊部発足!
18/40

-1-

 翌日、僕たちは昼休みに、また旧体育倉庫に集まっていた。

 とはいえ、今日はこれまでとちょっと違う。

 昼休みになってすぐにここへ来ると、どうしても昼食抜きになってしまう。というわけで、朝、登校の途中でコンビニに寄って食べ物と飲み物を買ってきてあったのだ。


 飲み物はさすがにぬるくなってしまっているけど、まだ真夏でもないから、さほど気にはならない。

 同じように、響姫にもお昼を用意してくるように連絡してあった。

 ということを桜さんに話し、早めに食べるからちょっと待っていてほしいと伝えると、


「それなら今日は、お昼を食べながらのお喋りタイムにしましょう!」


 ポンと両手を合わせて、彼女はひまわりのような笑顔を輝かせた。


「お友達とお喋りしながらのご飯、これも学校の醍醐味だと思いますの!」


 そこまで言われたら、僕たちに否と答える理由はない。

 ただ、幽霊ってご飯を食べるのかな? という疑問だけが、ちょっとだけ心に引っかかってはいたのだけど。



 ☆☆☆☆☆



 そんなこんなで、食卓を囲んだ僕たち。


 食卓とはいっても、当然ながら旧体育倉庫にある会議テーブルなのだけど。さすがにフキンで拭いたものの、ホコリっぽいことには変わりない。

 こんな場所で昼食をいただくなんて。

 しかも、総勢四名の幽霊と一緒に……。


 はたしてどんな団らんの時間になってしまうのやら。

 そう思いながらも、僕は自分のお昼ご飯を会議テーブルの上に広げる。


 菓子パンふたつと惣菜パンひとつ、それに紙パックのカフェオレ。それが僕の昼食メニューだった。

 友雪も僕と大して変わらず、菓子パンふたつに、プラスチックパックのミニつけ麺、紙パックのコーヒーといった感じ。

 まぁ、コンビニで買ってくるとしたら、この程度だよね。朝方に買っておくとなると、温めるだけのお弁当類では冷めてしまって美味しくないし。


 一方、意外にも響姫は、ちょっと小さめながら可愛らしく彩りも鮮やかなお弁当を持ってきていた。

 鳥のそぼろがかかったご飯に、厚焼き玉子、小さめのから揚げ。

 ウインナー数本はタコさんの形に切ってあり、健康のためか野菜サラダも添えられている。

 さらには苺がいくつか、デザートとして乗せられているようだ。


「おっ、響姫のお母さん、料理上手みたいだな! 美味しそうだ!」


 パンを片手に持ちながら、友雪が感嘆の声を上げる。


「美味しそうって思ってくれたのは嬉しいけど、言っとくけど、これ、あたしが作ったのよ? 大したおかずじゃないけど……」

『えええっ!?』


 僕と友雪の声が重なる。

 それどころか、桜さんたち幽霊のみんなまで、驚きの表情を見せていた。


「響姫、料理できたんだ……」

「し……失礼ね! 当たり前でしょ?」

「嘘だ……響姫は絶対もぐ、鍋を爆発させるような人間だと(もぐ)、思ってたのに(もぐもぐ)」

「そんなヤツ、いないわよ!」


 バシッ!

 いい音を響かせて、響姫の正拳突きが見事に友雪の顔面にヒットする。

 だけど、口にパンを含んでいる状態の相手を殴るのはリスクが伴うというのを、響姫は完全に失念していたようだ。


「うぐぼわっ!」


 思いっきり殴られた友雪は、咀嚼していただ液まみれのパンくずを、口から吐き出してしまう。

 正拳突き……ということは、真正面からの攻撃だったということで。

 友雪が吐き出したパンは、見事、響姫の顔面にベチャリ。


「ぎゃっ!」


 女の子らしくない悲鳴を上げようと状況が変わるわけもなく、それどころか、顔面にぶつかったものの貼りつかず、そのまま落下したパンくずは、狙い済ましたかのように響姫のお弁当の上へとその身を躍らせた。


「汚ったな~い! うわ、お弁当にまで! あ~ん、これじゃもう、食べられないじゃない!」


 ハンカチで顔面を拭きながら、響姫は文句たらたら。

 ……原因を作ったのは響姫自身なんだけどねぇ。


「仕方ないわね、あんたたち、罰としてパンをひとつずつ、あたしによこしなさい!」


 どういうわけか、僕まで被害をこうむってしまった。

 問答無用でパンを奪われた僕と友雪。すると友雪がこんなことを言い出した。


「それなら、俺が食べていいか? その響姫の手作り弁当」

「え? ……べ、べつにいいけどさ……」

「悪かったな、響姫」

「……うん」


 すっと、響姫のお弁当を自分のほうへと引き寄せる。


「んじゃ、玲。お前も一緒に食おうぜ」

「え?」


 さっきのパンで、友雪のだ液まみれになったお弁当を?

 と思ったけど、まぁ、気にするほどベッタリついているわけでもないし、だいたい表面以外は被害を受けていないだろうし。

 そう考えれば、パンで昼食を終えるより、お弁当をいただけるほうがありがたいと言える。


「俺は割り箸も持ってきてるが、玲はないだろ? お前は響姫の箸を貸してもらって食え」

「あっ、うん。それじゃ、そうするね。響姫、借りるよ?」

「あう……う……うん……。(……でも、すでにちょっと食べてたから、あたしが使った箸……はぅ、これって、間接キス……)」


 響姫のやつ、耳まで真っ赤になってるけど、どうしたのかな……?

 なんだか、幽霊の四人が(幽霊のくせに)生温かな視線を向けてきているような気もしたけど……。

 ともかくこんな感じで、僕たちは昼休みの前半を過ごしたのだった。



 ☆☆☆☆☆



 さて、昼休みも半分くらいが過ぎ去った。

 僕と友雪はまだお弁当を食べている途中だ。響姫もパンを頬張っている。

 そんな中。


 それまでは僕たちの様子を黙って眺めていた、桜さんを初めとする幽霊たちだったのだけど。


「見ているだけでも微笑ましくていいですけど、そろそろわたくしたちも、会話に参加させてもらいたいですの!」


 桜さんがそうお願いしてきたので、ここから幽霊たちの昔話タイムが始まることになった。


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