第98話「施設再構成」
巨大な扉が完全に開く。
その先には、広大な地下区画が広がっていた。
無数の配管。
大型の制御装置。
何本もの搬送レール。
そして、壁一面に並ぶ古いモニター。
ミリアが端末を見つめる。
「……施設全体のシステムが、この区画に集約されてる」
ジェイクが周囲を見る。
「つまり、ここが第1施設の中心?」
「たぶん。でも……」
ミリアが画面を拡大する。
「今までの施設図には、この場所が存在してない」
ルーカスが三体のロボットを見る。
「こいつらは、この場所を知ってたのか?」
三体は中央設備へ接続したまま動かない。
すると、壁のモニターが一斉に点灯した。
ピッ。
『管理システム起動』
『施設再構成開始』
ゴゴゴゴゴ……。
地下全体が揺れる。
「何が始まった?」
ジェイクが身構える。
床のレールが動き出す。
壁が左右へ移動し、いくつもの区画が繋がっていく。
ミリアが端末を操作する。
「施設の区画そのものを組み替えてる!」
「そんなことできるのか?」
「搬送設備や隔壁を動かして、内部の経路を変更してるみたい!」
ルーカスが周囲を見る。
「目的は?」
「分からない」
その瞬間、三体のロボットが中央設備からケーブルを外した。
「動いた!」
三体は再び歩き始める。
ジェイクが追おうとする。
「待て!」
だが、三体は攻撃してこない。
ただ、地下区画の奥へ進んでいく。
ミリアが端末を確認する。
「待って……」
「どうした?」
「三体が向かってる場所が表示された」
画面には、
『機体情報保管区画』
と表示されている。
ルーカスが眉をひそめる。
「また機体のデータか?」
「違う」
ミリアが首を振る。
「今度は情報を集めてるんじゃない」
「じゃあ?」
「保管されているデータを持ち出そうとしてる」
ジェイクが武器を握る。
「だったら止めるぞ」
三人は三体を追って走り出す。
しばらく進むと、左右の壁に大量の収納装置が現れた。
一つ一つに番号が振られている。
『戦闘機体』
『警備機体』
『搬送機体』
『作業機体』
そして最奥には、
『特殊機体』
と表示された区画があった。
ミリアが足を止める。
「……ここだけ暗号化されてる」
ジェイクが見る。
「何が入ってる?」
「分からない」
三体のロボットが、その扉の前で停止した。
一体が端子へ接続する。
カチッ。
ミリアの端末に警告が出た。
『特殊機体保管区画』
『認証開始』
「また認証……」
ルーカスが拳を構える。
「開けさせるな」
三人が三体の前へ立つ。
ジェイクが武器を構える。
「ここまで来たんだ。そろそろ何をしようとしてるのか、教えてもらうぞ」
ロボットは反応しない。
赤いセンサーだけが三人を捉える。
次の瞬間。
扉の横に表示が浮かんだ。
『認証済み』
ジェイクが目を見開く。
「何?」
巨大な扉が開き始める。
ゴゴゴゴ……。
ミリアが画面を見る。
「認証したのは、あいつらじゃない」
「じゃあ誰だ?」
「この施設に残っていた古い認証情報」
扉が開く。
中は真っ暗だった。
その奥に、巨大な保管装置が並んでいる。
しかし、機体そのものは見当たらない。
ミリアがライトを向ける。
「……空っぽ?」
ジェイクが中へ入る。
「保管庫なのに?」
ミリアが端末を確認する。
「違う」
「何が?」
「ここに保管されていたのは機体じゃない」
壁の表示を読み取る。
『特殊機体・開発記録』
『制御方式』
『動力系統』
『戦闘行動記録』
そして最後に、
『現在位置』
という項目があった。
ミリアの表情が変わる。
「……現在位置?」
ルーカスが画面を見る。
「その機体は、どこにある?」
ミリアがデータを開こうとする。
しかし――
『アクセス拒否』
「駄目……」
その直後。
三体のロボットが保管庫の奥へ進む。
そして壁の一部へ手を伸ばした。
カチッ。
隠されていた小さな端末が開く。
ミリアが驚く。
「そんな場所に端末が……」
三体のうち一体が接続する。
画面に一つの表示が浮かんだ。
『特殊機体・現在位置』
そして、その下に座標が表示される。
ミリアが息を呑む。
「これ……」
ジェイクが振り返る。
「どこだ?」
ミリアは座標を見つめる。
「第1施設でも、第2施設でもない」
ルーカスが三体を見る。
「じゃあ……どこなんだ?」
ミリアが答える。
「この施設の外」
その瞬間。
三体のロボットが、同時に座標データを取得した。
そして保管庫の奥で、別の扉が開く。
ゴゴゴゴ……。
その先には、地上へ向かう長い搬送路が伸びていた。
第98話 完




