第68話『目覚める闇の王! “薬草”の娘が起こした奇跡』
◆◇ 1. 迫る黒き脅威
「……来る。」
カゼハが低く唸り、ピンと立てた耳をすばやく動かした。
「この気配……あのギルダスとは比べ物にならねぇ……」
「“影の手”が動き出したのか?」
ルークが剣を握りしめ、辺りを見渡した。
「いや……これは……」
カゼハが言葉を詰まらせる。
「……シャドウモアが目覚めかけてるのかもしれない。」
フィーナが震える声で言った。
「奴が完全に復活したら、俺たちだけじゃどうしようもなくなるぞ。」
ルークが険しい顔で呟く。
「……でも、止めなきゃ。今しかない!」
フィーナが《フローズン・ティア》を握りしめ、決意を固めた。
「行こう、あの遺跡へ!」
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◆◇ 2. 遺跡の最奥で
古びた遺跡の最奥。
闇の精霊王シャドウモアの石棺が、今にも破裂しそうなほどに黒い霧を噴き出していた。
「……シャドウモア様……目覚めの時です。」
“影の手”の幹部が恭しく跪き、呪文を唱える。
「今こそ、世界を闇に……」
バキィィン!!
突然、石棺に大きなヒビが走り、黒い手が不気味に飛び出した。
「……闇の……精霊王……」
幹部がうっとりと呟く。
「……フフフ……」
シャドウモアの低い声が、闇に溶けるように響き渡った。
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◆◇ 3. 間一髪の乱入
「そこまでだ!」
ルークの声が響き、剣が黒い霧を切り裂いた。
「くっ……!?」
幹部が驚いて振り返る。
「お前たち……邪魔をするか。」
幹部がにらみつけるが、ルークは剣を構えたまま、フィーナを振り返った。
「フィーナ、奴が完全に目覚める前に、封印を強化できるか?」
「……わからない。でも、やってみる!」
「頼んだぞ!」
ルークが再び剣を構え、カゼハと共に敵の前に立ちはだかった。
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◆◇ 4. シャドウモア、降臨
「……遅い。」
突如、闇の中から低く冷たい声が響いた。
石棺が弾けるように砕け、そこから現れたのは、黒い鎧に包まれた巨大な影。
その目は赤黒く光り、不気味に揺らめいていた。
「我が名は……シャドウモア……」
「ついに……」
フィーナの顔が青ざめる。
「……お前が“薬草の娘”か。」
シャドウモアが冷たく笑った。
「その命、我が力として喰らってくれよう……!」
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◆◇ 5. 最後の賭け
「フィーナ、今だ!」
ルークが叫び、剣を振るってシャドウモアに斬りかかる。
「《フレイム・ブレイド》!!」
燃え上がる刃がシャドウモアの肩を裂いたが、黒い霧がその傷を瞬時に塞いだ。
「そんな……効かないのかよ!」
ルークが歯を食いしばる。
「《ウィンド・スラッシュ》!!」
カゼハの風の刃も、霧に飲み込まれて消えてしまった。
「……フィーナ、やるなら今しかねぇ!」
カゼハが叫ぶ。
「お願い……力を貸して!」
フィーナが《フローズン・ティア》を強く握りしめた。
《グレイシャル・エンド》!!
氷の剣が現れ、フィーナがそれをシャドウモアに突き刺した。
「これで……終わりだぁ!!」
「甘い……!」
シャドウモアが嘲笑い、フィーナの剣を弾き返した。
「やっぱりダメなの……?」
「いや、まだだ!」
ルークが再び駆け出した。
「フィーナ! お前の魔法を信じろ!!」
「……うん!」
フィーナは震える手で《フローズン・ティア》に祈りを込めた。
「お願い……みんなを守って!!」
《アイシクル・カタストロフ》!!
無数の氷の槍が空中に出現し、シャドウモアの体を貫いた。
「ギャアァァァァ!!」
黒い霧が激しく渦を巻き、シャドウモアの姿が消えていく。
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◆◇ 6. 不気味な余韻と新たな脅威
「……見てろよ……」
消えゆく闇の中から、シャドウモアの声が響いた。
「……いずれ、お前たちの光は……私がすべて飲み込む……」
不気味な声と共に、闇の精霊王は完全に姿を消した。
「……次は、本気で来るかもしれないな。」
ルークが険しい顔で言う。
「……でも、大丈夫。」
フィーナは震える手でルークの手をぎゅっと握った。
「今度こそ、負けない。」
「オレ様たちがついてるからな!」
カゼハが得意げに笑う。
「よし、行こう。」
ルークの力強い声が響き、3人は再び歩き出した——。
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◆◇ 次回『光の精霊王ルミナスと“薬草”の真実』】




