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策略

マリアとしてこの家にお世話になって、もうすぐ2ヶ月。

この家は居心地が良すぎる。


美味しい食事に沢山の本。

使用人にすれ違えば笑顔で挨拶され、用事を頼めば笑顔で引き受けてくれる。


それが何時までも続かないと心の何処かで思っている自分がいるけど、みんなの笑顔を見ると、今楽しければいいか……と思っている自分もいる。


こんなことじゃいけないと、失った記憶を思いだそうとすると、頭がズキズキして考える事が出来なくなる。


お医者様からは無理をしてはいけないと。

幸い生活に必要なものは思い出せた。

しかし、その他の事……特に両親や実家の事を思い出そうとすると頭が割れるように痛い。

頭痛がすると言うことは、今は思い出す時ではないと言われた。





そんなある日、何時もの散歩に行こうとすると、侍女のマリーが何時もとは違う庭園の花が綺麗だと教えてくれた。


この家の主であるフランソワ様の許可は貰っていると言われ、それならばと何時もとは違う庭園に向かった。


その庭は、沢山の種類の薔薇が咲き誇っていて、とても綺麗だった。

その中でも鮮やかな真紅、黄金に光輝く大輪の薔薇に囲まれて、小振りな薄紅色した薔薇に私は引かれた。


ひっそりと大輪の色鮮やかな花に埋もれるように咲いていた花。

私には大輪の花たちに守られるように咲いているように見えた。


その小振りな薔薇を見ていると、私と薔薇だけのような錯覚に陥った。

それはとても心地よく穏やかな空間、すっぽりと覆われ全てのものから守られている感覚だった。


目を閉じて深呼吸する。

体から無駄な力が抜けて心も体もリラックスする。


「気持ちいい」


ゆっくりと目を開けとそこは元の庭園だった。

でも私の体はまだ、あの穏やかな空間に浸っていた。


だから気付くのに遅れたのだと思う。


「ヴァレリー!」


怒鳴り声と腕を捕まれた痛みに体が硬直してしまった。









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