第9話 松堂家
常盤が両親と再開して次の日、常盤はとうとうバルマール王国に変える時が来た。
俺は姉ちゃんを通して常盤の両親からスマホとソーラーの充電器を預かり、それを常盤に渡した。すると常盤は嬉しそうにしながら俺にお礼を言ってきた。その光景を見ていたシュバル伯爵が俺をにらんできた。どうやら俺が常盤にプレゼントでも渡したように見られていたようだ。そこで、すかさずソフィアが言った。
「リミーナさんそれは私からの友好の品です」
その一言で俺をにらむ目がなくなってソフィアにナイスと心になかで親指を立てた。
こうしてリミーナ・シュバルこと、常盤理美とシュバル伯爵はバルマール王国へと帰っていったのだった。
それからしばらくして常盤から手紙が届いた。
常盤とはこうして手紙でやり取りをすることとなている。常盤からの宛先は俺だ。常盤側としては男の俺に手紙を出すというのは少々問題があったが、ソフィアに出すと閲覧などで時間がかかってしまう、そのため俺に出すことになった。逆に俺から手紙を出すときはソフィアが出すということになっている。そのほうが有無を言わせずに届くからだった。
といっても手紙が届くのは大体片道で五日はかかってしまうのだった。
そして常盤からの手紙には、両親との再会についてのお礼と、近況報告だった。
どうやらあれからすぐにスマホの着信があったらしい。そこで初めてのメールのやり取りができたことがうれしいと書いてあった。
「どうやら、うまくいったようだな、まぁ、あとはこれからどうするかってことだろうな」
「ええ、そうですね、これから理美様がどのようにされるかは理美様次第です」
「ああ、まったくだな」
俺とソフィアは手紙を手に取りながらそんな会話をしていた。
さらに日にちが立ったある日、俺はベッドの上で寝ていた。
傍らにはソフィアがいて、近くのパソコンの画面では姉ちゃんが呆れた顔で映し出されていた。
『全く、ユキ、ケガしたっていうから心配してみれば情けないわよ』
「うっ、しょ、しょうがないだろ、俺は姉ちゃんとは違って剣の才能なんてないんだから」
これは剣の修業をしているときのけがだった。
なんで俺が剣の修業をしているのかというと、従者のたしなみの一つだからだ、いざというとき王女と一緒におろおろしているようじゃだめらしい。そこで、ソフィアの騎士に剣を学んでいる。俺だって子供のころは剣を学んでいた。そう思いながら始めたけど、やはり俺には才能がまるでなかったいつまでたっても弱いままだ。
『ユキは、いつも踏み込みが甘いのよ』
姉ちゃんはそんな俺を見て珍しく辛口のコメントを言った。
「あ、あの、ユキ殿沙織様はなんと、先ほどと表情が違うような」
姉ちゃんがパソコンの画面に出ているのはソフィアが、俺がけがをしたと姉ちゃんに伝えたからだった。最初は剣の修業中だといわなかったため姉ちゃんはあわててスカイプをつないできた。
「ああ、情けないって怒られてる」
「えっ、怒る? ですか」
ソフィアはどういうことかわからないようだった。
「ああ、まぁね、昔から、剣の修業となると厳しかったからな」
「剣の修業ですか?」
そこで俺は気が付いた。
「あっ、そうか、ソフィアにはまだ行ってなかったな。俺もあまり人に行ったことなかったから忘れていたよ」
「何でしょうか?」
「うちの、松堂家についてだよ」
「松堂家、ですか」
「そう、俺の一族は代々剣術を伝えてきた一族でね」
「ケンジュツ、ですか、それはいったい」
「まぁ、簡単言えば剣の技ってこと」
「剣、ということは、ユキ殿はもともと剣を扱えていたのですか?」
ソフィアがもっともなことを訪ねてきた。
「いや、確かに俺も小さいときはやってたけど、俺には才能が全くなくてさ、全然強くないよ。その代り姉ちゃんが最強なんだけど」
「沙織様が!」
ソフィアは驚いていた。
「うん、姉ちゃんは初代の再来って言われているほどの強さなんだ。まぁ、才能がないのは俺だけで俺以外はみんな強いけどね。どういうわけかうちの一族でもごくたまに俺みたいな剣の才能がないのが生まれるらしい」
「そうなのですか」
「まぁね、それで、うちの初代は松堂虎之進っていう人で今から大体五百年ぐらい前の人なんだけど、この人がまたありえないくらい強い人でさ。その時代、俺の国では戦国時代っていう戦乱の世の中だったんだけど、虎之進は誰かにつくわけでもなく戦場を駆け巡っていたんだ。それで、虎之進が付いた人は必ず戦争に勝った。その理由は虎之進が強すぎるからなんだ。一説には一人で千人ぐらいを軽くあしらったっていう話もあるぐらいだからね」
「たった一人で千人ですか?」
さすがのソフィアも驚いた。いくら魔法のあるこの世界でもそこまでの強さを誇る人はいないらしい。
「そう、すごいだろ、でも、これは史実には乗っていないから実際はわからないけど、姉ちゃんの強さを見たらもしかしたらありえるんじゃないかと思うことはあるけどね」
「沙織様は、それほどに、強いのですか」
「ああ、ありえないくらい、何せ小学校時代、ああ、つまり十歳の時かな、そのとき、剣道の最高段位の人、つまり最強クラスの人たちを次々に倒していったんだ、今思えばあれはかなりかわいそうなことだよな」
『うっ、しょうがないじゃない、あの時は全力で行くことしか知らなかったんだから』
すかさず姉ちゃんが言い訳を言ってきた。
「それでは沙織様は……」
「そう、敵なし、たぶんこの世界の達人相手でも勝てると思うよ、圧勝で」
「そ、それは素晴らしいですね」
今後ソフィアの姉ちゃんに対する目が変わりそうだった。
「まぁ、そんな強さを誇っていた初代なんだ、それで、あまりに強いから殿様から、ある剣を授かったんだ」
「剣ですか」
「そう、名刀、霧丸」
「キリマルですか」
「それ以来松堂家の家宝なんだ」
「家宝ですか、それはぜひ拝見したいですね」
俺はそこで表情を曇らせた。
「見せてやりたいのはやまやまなんだけど、霧丸は今、うちにはないんだ」
「なぜですか」
「今から百年ぐらい前、当時の当主次男、松堂虎助という人がいたんだけど、当主である父親に届ける途中で霧丸を持ったまま行方不明になってね」
『虎助さんが持ち逃げしたんじゃないかって当時は騒ぎになったそうよ』
姉ちゃんが補足したがソフィアには伝わらなかったので俺が通訳をした。
「そうですか、それは残念ですね」
そこで俺はふと気が付いた。
「なぁ、姉ちゃん」
『どうしたの』
「あっ、いや、虎助さんって前触れもなく突然消えたんだよな」
『ええ、神隠しみたいだったといわれているけど、ってまさか』
どうやら姉ちゃんも気が付いたようだ。
「姉ちゃんも気づいた。もしかしたら、虎助さんこっちに来たんじゃ」
『うん、ありえるかも、何せ……」
「常盤のこともあるしな。それに、俺だって……」
「どうしたのですか」
俺と姉ちゃんで話し合っていることからソフィアがそう尋ねてきた。
「ああ、実はさ、ソフィアに聞きたいんだけど、今から百年ぐらい前にこの世界のどこかにすごい剣の達人がいたって聞いたことない、虎助って名前で」
「剣の達人ですか、お名前はコスケ殿……」
ソフィアは考えた挙句こう答えた。
「……申し訳ありません、私はあまりこういったことに詳しくなく」
「ああ、いや、いいんだ、でも、だったらさこういうことに詳しい人って知らない」
「詳しい方ですか、それでしたら、ソルダ殿ですね」
「ソルダ殿、その人は?」
「はい、私が幼少のころまでこの城に仕えてくださった方で、もうその当時で六十を超えた方だったのですか、それでもかなりの剣の達人だったと聞き及んでおります。私も幼少のころかわいがっていただきました」
「そっか、そういう人なら知っていかもな」
『ユキ、どうしたの、ソルダって』
「ああ、その人なら知っているかもしれないって」
『あら、そうなの、それじゃ、ぜひ会いに行かないとね』
「ああ、ケガが治ったら時間もらって行ってみるよ」
こうして俺はけがを直してソルダさんに会いに行くことに決めた。




