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王女の従者  作者:
22/27

第22話 クーデター

 国王にすべてを話してから一か月が立とうとしていた。

 返却された霧丸は俺の腰に刺さっている。本来なら当主である親父が持つべきものだが、現代の地球で持ち歩くわけにもいかないし、異世界にいる俺のほうが必要だろうということだった。

 それなら姉ちゃんが持てばいいんじゃないかと思ったが、姉ちゃんにはあんたが持っていなさいと怒られた。

 それから虎凛は、あの後ソフィアの私室の扉を通って地球へ行き、松堂の里へ姉ちゃんと修業に行ったらしい。それが昨日帰ってきていかに感動したかを俺たちに聞かせ続けている。

「そうなのよ、あの走る箱なんて、馬もいないのにあんなに早く走るなんて、すごかったわよ、それになんて言ってもあの長細い箱、あんなものを作るなんてすごいわよね」

 どうやら松堂の里への道中に乗った車と電車がよほど気に入ったらしくさっきからこればっかりだ。しかもそれを俺とソフィアに話している。俺が聞いてもしょうがないけど、ソフィアは虎凛の話を熱心に聞いているようだった。

「ユキ殿の世界は本当にすごいのですね」

「まぁな、でも、空気はこっちのほうが断然うまいけどな、俺からしたらこっちの世界のほうがかなりいいと思うけど」

「まぁ、確かに、息しづらかったわね」

「だろ、まぁ、便利なのは確かだけどな」

「そうよね、あれがあればバルノールまでだってあっという間でしょうね」

「ああ、一日もいらないだろうな」

 そんな会話を楽しんでいるときだった。

 突然部屋に誰かが駆け込んできた。

「し、失礼足します。殿下」

「どうしました」

 あまりに急だったので虎凛は隠密を使う暇がなかったが入ってきたものはそれどころではなかったようだ。

「殿下、謀反でございます」

「む、謀反だって」

 その場にいた誰もが凍り付いた。

「そ、それは一体どなたですか?」

「はい、第一王子ユミル殿下です」

 その人物に俺たちはさらに動揺が走った。

「お兄様がですか、そんな、そんなはずは、何かの間違いでは」

 さすがのソフィアもかなりの動揺を見せた。

「いえ、間違いございません」

「そ、そうですか、ご苦労様です」

「はっ、失礼足しました」

 そう言って部屋から出て行った。

「謀反か、どうする、ソフィア」

「とにかく、お父様にお尋ねしませんと」

「そうだな」

 俺たちは早速国王に話を聞きに行った。


 国王の執務室につくと国王は忙しそうにしていた。

 それを見た俺とソフィアは本当のことだったんだと確信できた。

「ソフィアか、そこで待っていろ」

「はい」

 俺とソフィアは言われた通り執務室の隅で待機した。

 すると少ししてようやく手が空いたのか国王が話し始めた。

「全く、ユミルのやつは何を考えておるのか」

「お父様、本当なのですか、お兄様が、その」

「うむ、あやつめ、謀反など、きっと、誰かにそそのかされたんだろうて」

 内心俺もそう思った、話に聞いたユミル王子は謀反なんてことを考える頭はなさそうだったからだ。

「お父様、私は一体どうすれば、いいのですか?」

 さすがのソフィアも不干渉ってわけにはいかない事態だった。

 そのとき執務室に兵士が一人入ってきた。

「報告します」

「うむ」

 兵士は隅にいる俺とソフィアを見た後国王に向き直って報告を始めた。

「ユミル殿下の軍勢は八万この王都に進軍しております」

「なっ、は、八万だと」

「ま、まさか」

 俺と国王はほぼ同時に声を上げた。

「そ、それはまことなのか」

「はっ、間違いありません」

「あ、あの、ユキ殿、いったい」

 この驚愕の事実についていけないのはソフィアだけだった。

「ああ、そっか、姫様は我が国の兵力をご存じなかったのでしたね」

「え、ええ、申し訳ありません」

 一応報告の兵や国王がいるのでソフィアに対して警護を使っている。

「八万というのは我が国の兵力を上回る数字なのですよ」

「そ、そうなのですか」

「うむ、我が国の兵力はおよそ七万だ」

 そこへ国王が入ってきた。

「どういうことですか」

「まず城内に大体二千、王都に三千、そして、王都の周りに砦が五つあって、そこにそれぞれ二千の兵がいます。これで、王都周りに一万五千となります」

「え、ええ」

「それから、トリタニアは全部で六つの国と隣接しています。そのうち四つの国とは同盟を結んでいますので、それぞれの国境には合計で五か所砦を設けており、そこにそれぞれ三千、現在交戦中のラムナエル商業国とシュミール公国には二万ずつ配備しております」

 俺がそう説明すると国王とそれを聞いていた兵がうなずいていた。

「そうなのですか、そうなると、本来ならお兄様は」

「そうです、ユミル殿下はラムナエル商業国との戦地に降りますので本来なら二万の兵しか自由にできないのです。それが、八万となると、残りの六万が気になります」

「うむ、その通りだ、それで、それはわかっておるのか」

「はっ、軍の構成は我がトリタニアの兵が四万、ラムナエル商業国の兵が二万、シュミール公国の兵が二万となっております」

「なんだと」

「嘘だろ」

「そんな」

 今度こそ執務室にいた全員が驚愕した。

 なんとユミル王子は敵国であるラムナエルとシュミールの両国の兵をあろうことか招き入れて仲良く行軍しているらしい。

「ぐっ、あの愚か者め」

 さすがの陛下も怒り心頭という感じだった。

 そして一度目を閉じてからカッと見開いてから言い放った。

「よいか、ユミルはもはや王子ではない、ただの反逆者、これよりあやつに殿下などの敬称はいらぬ、みなにもそう伝えよ」

「はっ」

 こうして報告をした兵士は執務室を去っていった。

 俺たちはというと陛下の雰囲気を察して静かに執務室を去ろうとした。

 そのとき、ふと国王が俺に声をかけてきた。

「……ユキ殿」

「えっ、あっ、はい」

 とっさのことで俺はあわてて返事をした。

「ユキ殿はあの戦場の悪魔と親戚であったな」

「はい、そうですが」

「あのように強いものがほかにもいるのか」

 俺は国王が何を言いたいのか何となく想像ができた。

「はい、おります」

「そうか、いるか、ならば、ユキ殿、頼みがある。その力わしに貸してはくれまいか。頼む」

 そう言って国王は俺に頭を下げてきた。

 普通に考えたらありえない一国の王が王女の従者に頭を下げるなんてそれこそありえなかった。

「へ、陛下、頭を上げてください」

 俺がそういったのもつかの間、今度はソフィアまでも頭を下げてきた。

「ユキ殿、私からもお願いいたします、お父様をお助けください」

「ソフィアまで……」

 俺は少し考えてから言った。

「わかりました、俺は姫様に忠誠を誓った身、姫様にまで頭を下げられれば断れません。しかし、陛下、俺は次期当主で会って現当主ではありません、なので現当主に話をしてみます」

「そうか、頼む」

 こうして俺とソフィアは執務室を出た。


 執務室を出た後ソフィアが俺に話しかけてきた。

「ユキ殿、申し訳ありません、無理なお願いをしてしまいまして」

「いや、気にするな、さっきも言ったろ、俺はソフィアに忠誠を誓っている。だから、まぁ、何とかするさ」

 俺はそう言ってソフィアの頭をポンと叩いた。

「はい」

 それを受けたソフィアは少し微笑んだ。


 ソフィアの私室に戻った俺は早速親父に相談しようとした。

「お帰り、どうだった」

 するとそこに姉ちゃんがそこにいた、どうやら虎凛が連絡をしておいてくれたらしい。

「ああ、かなり厄介なことになった」

 俺は先ほどのこと話した。

「……」

 さすがの姉ちゃんも絶句した。

「す、すごいわね、そのユミルって王子」

「私も兄がこのようなことをするとは思いもよりませんでした」

「確かに、俺もそう思う」

「それで、これからどうするの、いくら何でも八万が相手じゃ無理でしょ」

 姉ちゃんにもこの国の兵力は伝えてあった。

「ああ、それで、この前霧丸を取り戻すとき国王に話したろ、それで、国王自ら俺たちに力を貸してほしいって依頼があった。そのあと、ソフィアからもいらされたからな、姉ちゃん、親父いる」

 それだけで姉ちゃんは察したようだった。

「ええ、今呼んでくる」

「ああ、休みでよかった」

 するとすぐに姉ちゃんは親父を連れてきた。

「これはこれは、いつも息子がすみませんね」

 親父はそう言いながらなんだかでれっとしていた。それを見た姉ちゃんが親父に肘内をしていた。

「いいえ、こちらこそ、お世話になっております」

 ソフィアも丁寧に親父に挨拶をしていた。

「親父、そんなことより」

「ああ、沙織から聞いた。謀反だそうだな、しかも相手は八万か」

「ああ、それで、松堂家の力を使いたい」

「そうか、そうだな、よし」

 そこで親父は何かを決意したようだった。

「なんだよ、親父」

「ユキ、俺は今日を持って松堂家当主の座をお前に譲るぞ」

「はっ、何言っているんだ、親父」

 俺は突然親父が血迷ったのかと思った。

「俺は、仕事があるから地球を離れることはできない、それに、いまの地球に松堂家の力はいらんだろう。だが、この世界には必要だ。そして、お前はこの世界に今後もいるつもりだろう」

「う、うん、まぁ、そうだと思う」

「だからこそ、お前のほうが松堂家の当主にふさわしい」

 親父はそう説明した。

「まぁ、俺もすべてをお前に任せるつもりはない、前当主としてお前のサポートはするさ」

「わかったよ親父、おれ、松堂家の当主になるよ。でも、俺でいいのか、俺は剣の才能が皆無なんだぞ」

「そうだな、だが、お前は嫡流の嫡男だ」

 親父はそう言った。

「わかった」

 俺はそう返事するしかなかった。

 それから親父は早速といわんばかりに一族のものたちに連絡を取った。

「招集場所はここにしておいた」

「それじゃ、どこか場所を用意しなくちゃいけないな」

 俺は早速集合場所を確保するためにソフィアの部屋に一番近い広間を確保するために動き出すことにした。

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