第20話 作戦会議
霧丸を探しバルノール王国まで旅立った俺たちだったが、たらい回しにされた挙句トリタニア王国にあるというなんというか勘弁してほしい状況となっていた。
「やっと城が見えてきたぞ」
俺たちの目の前には役一か月ぶりのトリタニアの城が見えてきた。
こうやって外から見るとほんとにでかいと感じていた。それはおrだけじゃないようだった。
「すごい、あれが、バルノールの城もおっきかったけど、トリタニアも大きい」
そう言っているのは生まれて初めてバルノールを出た虎凛だった。
そうこうしているうちに城に到着した。到着した場所は工房の入り口、俺やムルダ、理美は城の関係者だから表門から入ればいいけど、姉ちゃんと虎凛は違う、この二人は城の関係者じゃない、本来なら入れるはずがない、だからこそ、門番がソフィアの騎士である工房の入り口から入ることにした。
到着した俺たちはそれぞれ荷物を降ろしていた。
「俺はとりあえず、寄り道してからソフィアのところに行くから、理美あとは頼む」
「任せて」
俺は理美に姉ちゃんと虎凛を任せて城側の入り口に向かった。
「それでは、俺も団長に報告があるから、行くぜ」
ムルダも出て行った。
工房を出た俺はまずは宝物庫の管理員控室に向かった。
控室に入ると管理員が俺のほうを一斉に見た。
「おう、ユキじゃないか、お前最近どこ行ってたんだ」
「まぁ、ちょっと野暮用でな、それで、お前らに聞きたいんだけど、ここの宝物庫にデュランダルっていう剣は置いてるか、バルノールから送られたもんだが」
「デュランダル、ああ、あの片刃の剣か? あるぜ」
「まじでか」
俺は少し衝撃を覚えた。
「ああ、それがどうしたんだ」
「……い、いや、まぁ、わかったすまんな」
俺はそう言って控室を後にした。
控室を出た俺はソフィアの私室に行く途中で考えた。
「やっぱり、ここにあったか、まぁ、国王が誰かに渡してないだけありがたいか」
そう考えている間に懐かしいソフィアの私室が見えた。
俺がいつものように中に入ると中にはこれまたいつものようにソフィアが椅子に座っていた。
「ソフィア、今帰ったぜ」
「ユキ殿、お帰りなさいませ」
ソフィアは目に少し涙を浮かべながらそういった。
「ああ、ただいま」
俺も思わず目を細めながら答えていた。
「ユキ殿、いかがでしたか」
「ああ、まぁ、或る意味散々だったよ」
俺はこの一か月の旅の話をした。
するとソフィアは同情するように言った。
「……そうでしたか、それで、霧丸はどちらに」
「ああ、それなんだけど、驚くなよ、ここらしい」
「えっ、ここって、まさか」
さすがのソフィアも驚愕を隠せていなかった。
「そう、この城の宝物庫だ、さっきここに来る途中宝物庫の管理員から聞いたから間違いない」
「そ、そうですか、それでは、お父様に言えば……」
そこでソフィアも止まった。
そう、問題はどうやって国王から霧丸を返してもらうかだった。
なにせ、国王には俺が異世界人であるということも話していないし、何より、他国からの友好の品を簡単に渡せるとは思えないからだ。
まぁ、なんにせよここにあることだけは確かみたいだし、取り合えずソフィアに虎凛を紹介することにした。
「話は変わるけど、ソフィアに紹介したいやつがいるんんだ。虎凛って言って、虎助さんのひ孫なんだけどな、だから虎凛も剣の使い手だよ」
「まぁ、そうですか、その方はどこに」
「今、工房にいる」
「そうですか、ぜひ、会わせてください」
こうして俺とソフィアは工房に向かった。
工房につくといつも通り職人たちが歓迎してくれた。
それを見ると帰ってきたんだという実感がわいてきた。
「相変わらずだな、ここは」
「姫様、わざわざお越しいただきありがとうございます」
アレルもわざとらしく挨拶をしている。これもいつも通りだった。
「アレル、虎凛と姉ちゃんは?」
「ああ、あの子か、あの子なら、今、お前の姉さんと理美と三人で何か話してるぞ、たぶんお前の世界の話だと思うけど」
「そっか、というわけらしい、行くかソフィア」
「ええ、そうしましょう」
それから俺たちはアレルの案内で工房長室の隣にある理美の部屋に向かった。
俺が扉をノックすると理美が出てきた。
「よう、理美、ソフィアを連れてきた」
「ああ、姫様、どうぞお入りください」
「ええ、失礼しますね」
ソフィアが理美に導かれて中に入るとテーブルの上にお菓子とお茶を並べて虎凛と姉ちゃんが座っていた。
「あら、ソフィア、久しぶりね、元気だった」
「はい、サオリ様もお変わりないようで安心しました。そちらが、コリンさんですか?」
「え、えっと」
虎凛はよくわからないといった感じだった。
そこで俺が紹介した。
「虎凛、彼女はこのトリタニアの第二王女、ソフィア殿下だ」
「えっ、あ、えっと、その、私は、その、虎凛です、お初にお目に描かれて光栄です」
どうやら虎凛は初めて王族に出会ったことで緊張したようだった。
「私もですよ、虎凛さん、どうぞ、気を楽にしてください」
「は、はい」
それでも緊張は解けなかった。まぁ、無理もない、俺や姉ちゃんは生粋の日本人だから王族の扱いとかわからないし、ソフィアともそれなりに長いからな。理美も貴族令嬢として育っているから王族相手でも後れを取らない、それに対して、虎凛はこの世界で育ち、平民として生きてきたから当たり前だった。
「コリンさん、ユキ殿からお聞きしましたが、あなたもユキ殿と同じショウドウの名をお持ちなのでしょう」
「は、はい」
「でしたら、ユキ殿やサオリ様と同じようにソフィアと及びくださってかまいませんよ」
「あっ、いえ、そんな」
まぁ、無理だろうな、俺はそう思った。
「まぁまぁ、それよりもソフィア、ユキから聞いたかしら」
「はい、キリマルはこのトリタニアにあるということですね」
「そう、何か取り戻す方法はないかしら」
姉ちゃんはソフィアに尋ねた。
「そうですね、一番簡単なのは、お父様にすべてをお話しする。ということでしょうか」
「まぁ、それしかないわよね。ユキもそう思う」
「ああ、でも、危険といえば危険だしな」
「そうなのよね」
「ねぇ、どうして危険なの」
虎凛は俺に聞いてきた。
「ああ、それはな、相手が国王だからだ。もちろんソフィアの父親であり、あのイリーナ王妃の弟君でもあるわけだから、信用はできる。でも、その周りにいる貴族連中は無理だろ」
「う、うん」
「残念ですが」
「もし、俺が国王陛下にすべてを話すということは、トリタニア公認で異世界があるということになる。俺が今ままで作ってきたものはすべて俺の世界の技術をアレルに伝えて、利用してきたものだ、そして、俺の世界にはもっと多くの技術がある。それを手に入れれば軍備をかなり強化することも容易なんだ。それでだ、もし俺の世界の技術を奪うために軍を俺の世界に送り込んだらどうなると思う」
「えっと、それは、ユキの世界がめちゃくちゃになるってこと」
「それだけだといいけどな」
「どういうこと」
「いいか、俺の世界では魔法がない、その変わり発展したのは科学だ。その科学で作った兵器の中にはこの世界では考えられないようなものが多い、というかほとんどがそうだ」
「つまり、返り討ちに会うのよこの世界がね」
「えっ、そんなことが、まさか」
「いや、十中八九、間違いないと思うぜ」
虎凛が驚く中俺はそう断言した。
それから話し合った結果国王に時間をもらい、すべてを話すことになった。もちろんここに至るまでにはかなりの論争があった。しかし、話さなければ霧丸を取り戻すのは無理だろうという意見が大きくこれを決行することになった。




