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17話: 格闘都市ライオス

馬車が揺れるたび、レンの脳裏には忌まわしい「特訓」の日々が蘇っていた。

ガンドはパーティの中でも一際体格が良く、重い手石のような拳を持っていた。


「おい、レン! 今日も特訓だ。歯を食いしばれ!」


そう言って、防具も持たないレンの腹に、容赦なく拳を叩き込む。

何度も嘔吐し、内臓が弾けるような痛みにのたうち回るレンの耳元で、ガンドはいつも聖者のような顔をして囁く。


「いいか、これもお前のためにやってるんだぞ。お前は無能なんだから、せめて打たれ強くならなきゃ死ぬからな。俺の優しさに感謝しろよ」


その言葉を信じ、ボロボロになりながら「ありがとうございます、ガンドさん……」と血を吐きながら笑っていた自分。


辿り着いた街『ライオス』は、異様な熱気と、それ以上にドロリとした悪意に満ちていた。


ここでは人間が絶対的な支配者であり、獣人たちは家畜以下の扱いを受けていた。通りを歩けば、鎖に繋がれた獣人の子供たちが、道端で泥水をすすっている光景が当たり前のように転がっていました。


「……酷すぎる。ガンドさんは、こんな場所で……」


レンは拳を握りしめ、シオンと共に地下格闘場へと向かった。


そこでは、血の匂いと酒の臭いが混ざり合い、観客たちの野蛮な咆哮が響き渡っていた。


「おい、もっと殴れ! その獣人の面をぐちゃぐちゃにしてやれ!」


リングの上には、かつての兄貴分、ガンドが立っていた。

その足元には、原型を留めないほど顔を腫らし、ピクピクと痙攣する若い狼獣人の青年が転がっている。


「はっ、だらしねえな。ほら、ヒールだ! 起きろ! まだ俺の『特訓』は終わってねえぞ!」


ガンドはニヤニヤと笑いながら、治癒魔法で無理やり青年を立たせると、再びその顔面に重いストレートを叩き込んだ。

ボキッ、と鼻骨が砕ける嫌な音が響き、観客が沸き立ちます。


「……もう、やめてください!!」


レンの声が、熱狂する格闘場に響き渡る。

騒ぎに気づいたガンドが、リングの上から怪訝そうに目を向ける。


「あぁ……? 誰だ、俺の特訓を邪魔する野郎は……。って、レンじゃねえか! 生きてたのか、お前!」


ガンドは懐かしい弟分を見つけたかのように、爽やかな笑顔を浮かべました。その拳が、少年の血で真っ赤に染まっていることも忘れたかのように。

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