※※ ― 残念だ(ローランド)
―― ※※ ――
ほんとうに残念だ、とあの声が言う。
「きいてくれ!ぼくは、ぼくはどうしても、も、もどりたくて」
戻るも何も、きみは仲間でもなかった、と冷たくかえされる。
「そう!仲間になりたかったんだ。あんなに頼んだのに、ぼくはいれてもらえなかったから・・・」
ベッドの隅で体を固く丸め、自分のくぐもった声を聞き、ローランドは恐怖で涙を流す。
きみは仲間にはいれない、と、冷たい声が言う。
「そんな! 納得いかなかいよ。なんでぼくはだめなんだ? だいたいあの女たちにしたって、 ―― 」
鞭うつような声が返り、ローランドは続きの言葉をだせなくなる。
「・・・だ、だいじょうぶさ。いまのは、誰にも聞かれてないよ。ほんとうだ。だって、この独房は他とちがってばかみたいに壁が厚いし、それに、監視官だって普段は近くにいなくて監視のモニターがある部屋に・・・ほんとうだよ! 誰にもきかれてない! たのむよ! 譜面を持ち出したのは謝るよ! でも、 ぼくは、 あなたの秘密をもらしてない!」
わめきながらベッドに顔をこすりつける。
監視官が二人、部屋のモニターでその様子をながめ、コーヒーを片手に笑い合っていた。
「みろよ。今日もローランドのお祈りの時間がはじまったぜ」
「早く病院にいれたほうがいい」
「それが、ようやく今日、病院送りが決まったのに、ここから出るのを嫌だっていいやがる」
「ああ、いつもの『ずっとみられてる』ってやつか。やっぱりあんなパーティーするぐらいだから、恐いものがおれたちとは違うんだ。刑罰とかじゃなくて、『呪い』だなんて」
監視二人が笑ってうなずきあったとき、バチンという音とともに視界が消えた。
停電だと理解できたときには、すでに補助電力へと切り替わっていた。
だが、警報が鳴り響き、部屋の明かりはついたにもかかわらず、いくつもあるモニターは闇のように黒いままだった。
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