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プロローグ さよならの時

(はじめに)


本作は、「GC短い小説大賞」参加用に書かれた同タイトル短編を、お手軽に読みやすいよう分割編集し、加筆修正を加えた「連載版」です。


いくばくかの変更点がございますが、原則として同じ話ですので、既読の方はご注意かつご了承くださいませ。





          ☆



「──それじゃあルリちゃん。これで今度こそ本当にお別れだ」


 体と瞳をぷるぷるさせながら、悲しそうな顔でプルルは言った。


「うん」と私も小さくうなずく。

 悲しくないと言ったら嘘になる。



「キミと過ごしたこの1年間は、ボクにとって最高の想い出だよ」

「まぁいろいろあった……けどね」

「ホントだよまったくもう。でも……そういうのも含めて、やっぱりすごく素敵な時間だった。ボクはそう思う」

「うん。……そうだね」



 この光景は、他人からはどう見えているんだろう。


 子供がぬいぐるみに向かって一人で話しているように見えるだろうか。

 それとも……季節の節目にアニメの最終回なんかでよく見かける、戦いを終えた魔法少女とそのパートナーとの感動的な別れのシーン、そんな風に見えるだろうか。


 それが正解なのだ、と言ったら、果たしてあなたは信じてくれるだろうか。


 本当に私は魔法少女で、

 この謎の生き物はそのパートナー。

 今まさに、別れの時が訪れているのだ、と。



「キミと出会ったあの日のことを、まるで昨日のことみたいに覚えてるよ」

 目を閉じ、しみじみとプルルが語り出す。

 彼はパッと見カワイイし根は決して悪い奴じゃないんだけれど、ちょいちょい説教臭くて、話し出すとやたら長くなるのが難である。


「ボクはそう、あの時──」


 ……あぁ。

 どうも長めの想い出語りが始まったっぽい。

 お別れだと言いつつ、実際に別れの時が訪れるまでにはまだしばらく時間がありそうだ。


 私は軽く相づちを打ちながらプルルを見つめる。

 ちょっと涙ぐんで……みたりなんかして。

 別れの寂しさを必死にこらえている……顔なんかしてみせたりもしながら。


 嬉しいような、さびしいような。

 悲しいような、どこか温かいような。

 穏やかな空気がそこに流れていた。


「なのにキミときたら──」


 だけど。


 正直この時の私は、まったく別のことを思っていた。



 どうか頼むから、

 お願いだから、



 早く帰ってくんないかな。





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