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思春期フットボーラー  作者: kasic
2章 足掻く少女
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34/54

急展開

「うええ、何か吐きそう。もう帰りたいよお」

「彩音先輩、何言ってるんですか。もう整列の時間ですよ?」

「だってだって、今日負けたら終わりかもしれないんだよ?私には無理だあー」


(昨日はあれだけ威勢が良かったのに)


 静心館との二次リーグ初戦に大敗を喫した一日後、早くも運命を決めるとも言っていい、長田中央(ながたちゅうおう)高校との試合がやってきた。お互い一敗同士で迎えるこの一戦、負けた方は同時刻に行われるもう一つの試合の結果によっては敗退が決定する。それだというのに今大会初先発を迎えるというボランチの荒木 彩音先輩は泣き言を吐きまくっている。


「無理じゃないです。先輩は十分うまいんですから、安心して行ってきてください」

「ホントにい?」

「はい、練習では隣でプレーしてた私が言うんですから、間違いないです!」


(まあ数週間しかプレーしてないんだけど)


 そんな心の声を読み取られないよう、しっかりと手を握り、目を見て話した。


「……うん、分かった。沢ちゃんにそう言ってもらえたら元気出てきた。頑張ってくるね」


 虚ろであった目はようやく輝きを取り戻し、荒木先輩は力強く整列に向かってくれた。ちなみに昨日の練習後から一部の上級生からは沢ちゃんと呼ばれることが増えた。距離が縮まってきたようでなんだか嬉しい。


(ふっ、チョロい先輩だぜ……)


「沢ちゃん、乗せるのうまいんだね」


 心の中でドヤ顔を浮かべていると、今日は控えに回った、新谷 夏美先輩が声をかけてきた。


「いやあ、それほどでも。元々控えの選手の自信が無いっていう気持ちは良く分かるんです。誰かに大丈夫って言われたら、意外と元気が出るんですよ」

「ふうん。ま、何にせよ力出し切って欲しいよね。私達を差し置いて試合に出るんだし」


 ナツ先輩の表情は穏やかだが、言葉の節々に悔しさを滲ませている。私もまたそんな先輩の気持ちも分かる。


「まあ、今日は連戦っていうこともありますし、フレッシュな選手を入れたいってことなんじゃないですか?」

「別に私に気ぃ遣わなくても大丈夫だよ。ターンオーバーってのもあるんだろうけど、キャプテンとか綾乃先輩とか、ホントに欠かせない選手は今日もスタメンだし」


 確かにココアちゃんやCB、FWの二人、綾乃先輩は今日も先発だ。疲労を考慮しても試合に出られるくらい、これらの選手は評価されているということだ。


「それに、沢ちゃんの方が悔しいよね?私の昨日のプレーは散々だったけど、沢ちゃんは途中出場で頑張ったのに、今日のスタメンは自分じゃないんだもん」

「……まあ、それは認めます」


 今日は私がスタメンじゃないかと思っていて、名前が呼ばれなかった時は正直に言うと少しムカついていたのは事実だ。私の言葉を聞いたナツ先輩は両手を口で押さえてクスクスと笑い、続ける。


「だと思った。ま、試合出る機会があったらお互い頑張ろうね」

「はい!頑張りましょう!」


 試合展開によっては今日も出番が来る。昨日の試合で運動量を活かした上下動は強豪相手にも形になることは分かった。そこを出していけばチームに貢献できるはずだ。


(今日で終わりになんかさせない。まだこのチームでサッカーがしたい)


 やっとチームも団結してきた時だ。ここで終わってしまっては余りに寂しすぎる。決意を胸に秘め、私は先発メンバーの入場を見守った。




 前半開始のホイッスルが鳴った。長田中央高校は今年五年ぶりに二次リーグに進んできたチームで、同グループの中では組織としては一番成熟していないチームだ。ビデオを見る限り、ワントップのFWのスピードとCBの高さには注意しなければならないが、それにしっかりと対応できれば十分勝てる相手である。


「来た、彩音先輩しっかり!」


 キックオフからの流れで、相手がヘディングに前に返したボールが早くも彩音先輩の所にこぼれてくるのを見て、ナツ先輩が祈るようにつぶやいた。


 彩音先輩はその浮いたボールを何ということも無く、自分の足の近くにピタリと止め、危なげなくサイドに回した。


「やった、ちょっと心配でしたけど、ちゃんと落ち着いてますね!」

「うん、心配して損した気分だよ。にしてもやっぱ上手いねえ。私だったら足下に入りすぎちゃったりするんだけど」


 少し足下の技術に難のあるナツ先輩に対して、彩音先輩は基礎スキルが高く、試合を落ち着かせることができる存在だと言える。おそらく監督はボールの預け所を増やすために、ダブルボランチに強度よりも技術を求めたのだろう。そのプラン通り、彩音先輩、綾乃先輩は皆と声をかけ合いながら安定したパス回しを行っている。


 もう一つ、この前の試合と変わったことがある。これは私達で決めたことなのだが、攻撃時のツートップの役割をより明確にした。


 前までは、ツートップの右がケイで左が高城先輩と言った曖昧な担当分野があったようだが、この試合からはテクニックのある高城先輩をセカンドトップのようなポジションとし、下がってボールを前線に呼び込む役割を担うそうだ。そうしてケイを最前線で自由に動き回れるようにするらしい。


 そのような変更が実を結んだのか、前半の十五分、立ち上がりを過ぎた辺りまでは、私達が中盤でボールを支配し、相手を押し込む展開となっている。しかし、相手もボールを持たれながらも真ん中をしっかり締めて、前線にボールを入れさせまいと踏ん張っている状態だ。


(前に上手くボールが入れば…………)


 右SBの先輩が前線にロングボールを送り、跳ね返されたボールが彩音先輩と相手ボランチの間に落ちようとした。


「ここ!彩音先輩強く!!」


 その状況を見たナツ先輩がベンチから立ち上がって叫んだ。その声が聞こえたのか、彩音先輩はダッシュでこぼれ球に突っ込み、相手より高く跳んで強くヘディングをした。


「ファール!」


 彩音先輩に強く体をぶつけられたのを見て、相手チームが抗議をしているが、笛は鳴っていない。正直ファールスレスレのラインだが、これは幸運だ。そしてそのボールが下がってきていた高城先輩に渡り、中盤を破ることができた。


(これはチャンス!あとはFW次第!)


「前出せ!前!」


 ここで右サイドに位置取っていたケイが斜めに走り込みながらボールを呼び込んだ。すると高城先輩は浮き球をダイレクトでスペースにパスを送り、ケイは左足でのシュートモーションに入った。それを阻止するべく、相手DFもスライディングでブロックしようとした。


(よし!かかった!!)


 当然これはシュートフェイントであり、シュートは撃たずに右足に持ち替えた。何もプレッシャーの無い状態でシュートを撃たせればケイは逃さない。

 

 右足を振り抜き、ニアサイドを狙ったシュートはキーパーが反応することすら許さず、ゴールネットに乾いた音を鳴らしながら突き刺さった。


(うわー、えっぐいシュートだな。これは流石にかわいそう)


「メイちゃん、やった!」


 私が引き気味にゴールの瞬間を見ていると、隣に座っていた姫花先輩が珍しくテンションが上がった様子で私に抱きついてきた。


 ゴールしたケイは先輩達にもみくちゃにされ、後方のDF陣はベンチに駆け寄り、給水ついでにリザーブメンバーとハイタッチを交わすなど、大一番での先制点にチーム全体のボルテージは最高潮だ。


(みんな盛り上がってるなあ。……あれ、綾乃先輩は何してるんだろう?)


 盛り上がっている選手達の輪からいつの間にか出て、我がチームの背番号10はボトルを持ったまま、腰に手を当て、立ち尽くしていた。


「綾乃先輩!」


 思わず声をかけると、綾乃先輩はこちらに顔を向け、微笑みながら手を振ってくれた。


「どうしたの?」

「こっちの台詞ですよ。どうしたんですか?ボーッとして」

「ごめんね、なんかふっと疲れちゃって」


 その眉毛を下げた顔は、いつもの飄々とした先輩の姿では無く、私に一抹の不安を感じさせた。


「連戦疲れですか?ちゃんと走れます?」

「あー大丈夫大丈夫、スタミナは余裕なんだよ」

「綾乃、そろそろ戻るよ」

「分かってる、今行くよー。じゃ、応援よろしくね」


 そうこう話しているとそろそろ試合再開の時間らしい。先輩はいつもの笑顔に表情を戻し、ピッチに戻っていった。


(なんだろう、心配しすぎかな。まあ、連戦だし、プレーの切れ目に少し気が抜けちゃうぐらいあるか)


 私は気を取り直し、ピッチに目を向け、戦況を見つめた。




(おかしい、もっと押し込めると思ったのに)


 前半も三十分を過ぎ、未だスコアは一対〇のままだ。ボールは相変わらず保持しているが、決定的なシュートまで行けない展開が続く。失点後も相手がラインを高く保っていることもあるが、こうまで攻めきれないのは理由がある。


「もっとボールを早く動かそう!ピッチを広く使ってもいいんだよ!みんな勇気持って!!」 


 監督のコーチングが聞こえる。監督の言葉通り、ボールを持っているとは言っても、サイドチェンジや縦パス、ダイレクトパスなど、ピッチ全体を使ったダイナミックな展開ができていない。ボールを持っても隣の選手に繋ぐに止まっていることで、攻撃が遅れ、相手に対応されてしまっている。


(けど、一次トーナメントの時はできてたのに……)


 その時にはあって今は無いもの、思い当たる理由は一つだった。


「……綾乃先輩、調子良くない?……いや、いつも通りみたいだけど……何かおかしい」

「姫花もそう思った?」


 ウォーミングアップ中の姫花先輩がぼそっと呟き、それにナツ先輩が反応した。


「やっぱり、何かおかしいんですか?」

「うん、前までの綾乃先輩は、サイドチェンジとか縦への楔のパスとか、攻撃に繋がるパスをしてくれてたんだけど、今日は全然……いや、正確に言えば昨日からおかしかったのかも」


 今も綾乃先輩は隣の彩音先輩からボールを受け取り、一度前を見たものの、結局ボールをサイドに流した。今のもやりようによっては縦にボールを通せたかもしれない。


(それだけ綾乃先輩に頼ってたってことか。だけど、それなら他の選手がやれれば)


「キャプテン!」


 左CBの長瀬キャプテンがボールを持つと、今日サイドハーフでスタメンの仁美先輩が中盤とDFの間でボールを呼び込んだ。そこにキャプテンが強い縦パスを送ると、仁美先輩はダイレクトで真ん中の高城先輩に流し、それをまたダイレクトで味方の左SBが走り込んでいた、相手SBの裏のスペースにパスを通した。


(ダイレクト二つで良い崩し!!中の動き出しに良いクロスが入れば……)


 サイドからグラウンダーのクロスが入るが、中にはケイ一人しか居らず、DFに跳ね返されてしまった。そのボールのこぼれ球を中盤から上がってきた綾乃先輩の所に転がった。


(シュートだ!行け!ってあれ、綾乃先輩!?)


 綾乃先輩は少し迷った様子で左右を見回し、ようやくシュートを撃つが、相手のディフェンスが間に合い、後ろにこぼれたルーズボールが相手のトップ下に渡ってしまう最悪な状況となった。


(まずい、四対三で数的不利だ!)


 この攻撃の流れでこちらの左SBは前線に上がっているため、DF陣は一人少ない状態でカウンターを受けきらなければいけない。彩音先輩がなんとかカバーしようと戻っているが間に合っていない。


 右CBの渥美先輩が相手トップ下と対峙するが、万が一にも抜かれる訳にはいかなので、飛び込むわけにもいかず、下がるだけとなってしまう。そしてトップ下はディフェンスラインの裏にボールを出し、スピードが武器のFWを走らせた。


「キャプテン!何とかして!」


 リザーブメンバーからも悲鳴が上がる。何とかキャプテンが追いすがり、シュートコースに足を出すが、なんと相手FWはその足を出した股を通すクロスを選択し、フリーとなっていた右サイドハーフにボールを送った。彩音先輩も必死に戻っていたが間に合わず、ネットを揺らされ、同点となった。


「クソ!」


 控えの先輩が悔しそうに地団駄を踏んだ。相手の速いカウンターという警戒していた形で綺麗にやられたのだから、それも無理はない。この暗い雰囲気を引きずったまま、前半は終了し、同点で折り返しとなった。




 先発メンバーが戻ってきた。流石に終了間際に、しかもあんなにダメージを与えられる形で得点を決められては空気が重い。そんな中、綾乃先輩が口を開いた。


「ごめん、さっきの失点、完全に私のせいだ」


 下を向いており、表情は見えないが、責任を感じているのだろう。しかし、いつも頼もしい先輩のあんな姿を見るのは初めてだ。それを見て真っ先に声を上げたのがボランチコンビを組む彩音先輩だ。


「そんな、綾乃だけのせいじゃないよ。私だってサイドのカバーに戻ってなかったし」

「彩音の言う通りだよ。私も完璧に読まれて股通されたし、だから、反省は後にして、切り替えて後半に行こうよ」


 それにキャプテンも続いたのを皮切りに、皆が次々に綾乃先輩を元気づけるような言葉を発した。


「うん、そうだね、みんなありがとう」


 綾乃先輩は微笑を浮かべ、そう返した。なんとか雰囲気も暖まった所で、監督が戻ってきて、選手に向かって話し始めた。


「はい、みんな注目!前半はボールを持ててたし、人に強く行けてたし、まずまず良かったよ。最後のカウンターも積極的に行った結果だし、これを続けていきましょう。ただ、最後の方に言ったけど、もっとピッチを広く使って、積極的にボールを動かしていくこと。分かった?」

「はい!!!」


 選手達の返事に監督は満足したように頷き、続けた。


「まず、後半から、姫花に右サイドハーフに入ってもらいます。それで」

「あの」


 監督が選手交代の話をした所で、綾乃先輩が手を挙げ、話を遮った。


「何?」

「後半、私を下げてください」


(えっ)


 そう思ったのは私だけでは無かったようで、周りから少し驚きの声が上がった。それでも綾乃先輩は監督の方をじっと見つめている。


「どうして?ミスしたから?」

「それもあります。今日は、試合開始から、体が動きませんでした。このままやっても良いプレーはできないです」

「そう。……分かりました。メイ!」

「は、はい!」

 

(ナツさんじゃなくて私なのか)


 いきなりの急展開についていけない。監督からの声に私は何とか反応した。


「後半から行くよ。姫花と一緒に準備して」

「分かりました」


 何が何だか分からないままウォーミングアップゾーンに戻り、準備を進めていく。綾乃先輩は確かに失点に繋がるミスはあったし、いつもとは違ったけど、今日も悪くは無かった。ボールを持ててたのも、綾乃先輩の技術と的確なポジショニングがあったからだ。


(自分から交代だなんて、なんで……それに、そんな綾乃先輩の代わりなんて、私にできる?)


「メイちゃん」


 気持ちの整理がつかないまま、ウォーミングアップを終えると、姫花先輩に顔を覗き込まれた。


「うわ、な、なんですか?」

「困ってそうな顔、してたから。……一緒に出れるの、私は嬉しい。だから、がんばろ?」

「は、はい。分かりました」


 久しぶりの人を殺す笑顔を味わった。こうなれば私は頷くしか無い。物静かな先輩がこうして励ましてくれたのは嬉しいことだ。


「二人とも、後半頑張ろうね!」


 ベンチに戻ると、前半から奮闘していた仁美先輩に抱きつかれた。


「姫花とメイちゃんが居てくれたら心強いよ。今日はBチーム組でチームを勝たせようね!」

「は、はい!あの、監督の所に行かないといけないので……」

「あ、ごめんごめん!じゃ、また後で」


 相変わらず賑やかな先輩である。しかし、ピッチに仲が良い人が多いのは幸いだ。


 監督の所に向かうと、笑顔で迎えられ、後半の指示を聞かされた。


「メイは昨日の静心館戦のプレーをイメージして。チャンスがあったら前のスペースに飛び込んでボールに絡んでいくような。もちろんリスク管理についてはしっかり彩音と話し合ってね」

「はい」


 私の返事を聞き、監督は優しい笑顔を浮かべながら続けた。


「綾乃の代わりとか、そういうことは意識しなくていいからね。今日は自分なりに、堂々とプレーしなさい」

「は、はい!頑張ります」


(自分なり、か。静心館戦のような。だけど、同点の状態であんなプレーをしても良いものか……)


「沢ちゃん!」


 監督からの指示を受け、少し考え込んでいると、今度は彩音先輩が近づいてきた。


「後半は頑張ろうね。私、一生懸命フォローするから、沢ちゃんはチャンスだと思ったら前に行ってね。私じゃあ、頼りないかもだけど」

「いえ、とても心強いです。私の方こそ、二試合目だし、多分たくさん迷惑かけます」

「全然!寧ろ私の方がだよ。綾乃が居ないのは正直怖いけど、相方が沢ちゃんで良かった」

「それは、私もです」


 緊急登板には確かに戸惑うが、練習で一緒だった先輩とコンビを組むのは心強い。そうこうしているウチに審判団が入場の合図の笛を鳴らした。


「みんな行くよ!」

「はい!!」


 キャプテンの声と同時にピッチに向かう。いよいよ後半開始だ。


「ファイト!」

「はい!頑張ります!」


 ナツ先輩に笑顔で手を差し伸べられ、私もハイタッチで応えた。昨日までレギュラーだったのに、途中出場まで後輩に譲るという状況で、とても悔しい筈の状況でこの対応、結果を残さなければ先輩が浮かばれない。


(今日は頑張らなきゃ)


 しかし今日は色んな人に励まされる。みんな気を遣ってくれているのだろうか。


(チームの柱に変わってこんな緊迫した状況で出場か。しかも負けたら終わりかもしれない。ちゃんとうまくプレーできるかな?)


「メーイ!」

「メイちゃん!」


 そんなことを考えながら、審判に交代を申請しに行っていると、ケイとココアちゃんが近づいてきていたようで、左右から肩を組まれた。


「二人とも、どうしたの?」

「メイのことだから、またくっだらないことで悩んでるんじゃないかと思って」

「そうですね、メイちゃんはすぐウジウジしますから」


 二人は私をからかうように笑いながらそう話した。


「くだらないって、チームの中心選手の代わりに出るんだから、そんなの当然じゃん」


 私が拗ねたように話すと、ケイはクスクス笑いながら話す。


「いい?これは大チャンス到来よ?」

「大チャンス?」

「そう。チームの中心が同点の状況で変わるなんて本来あり得ないわ。これは幸運、棚からぼた餅なのよ。このチャンス、絶対活かすわよ」

「そうです、そのチャンスが巡ってきたのもメイちゃんの実力のおかげです」


(そっか、チャンスか。ここで結果を残せばチームからも、監督からも信頼される)


「だから、ちゃんと前見て、思い切って行きましょう。私達もついてるから」

「……うん、一緒に頑張ろうね!」


 二人はその返事に満足したようにうなずき、私の背中をポンポンと叩き、ピッチに入っていった。


「私は、綾乃先輩(十番)と交代です」


(綾乃先輩の代わりになるかは分からない。だけど、そんなの関係ない。私がチームを勝たせる!)


 審判に交代を告げ、ピッチに入り、私は強い気持ちを持って円陣の輪に加わった。


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