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未来視の魔女  作者: 譜楽士
臆病な魔女は空を駆ける
37/37

終幕~お茶会は再び

※主な登場人物(吹奏楽部OG)

・高久広美…バスクラリネット担当。

・今泉智恵…ユーフォニアム担当。

・貝島優…打楽器担当。元部長。

・関堀まやか…フルート担当。元副部長。

・平ケ崎弓枝…トランペット担当。

 そこから先はもう、事後処理のようなもので。

 新しく部長になった(あたしがした)あの子の未来を、よりよい方向に導くため、あたしは全力を尽くすことになる。


 幸い(さく)ちゃんが来てくれて、バスクラリネットを譲り渡すことができたから、これで大抵のことは安心だ。

 彼女も彼女で弓枝(ゆみえ)とはまた違った意味で『眼』のいい子だから、少々のトラブルは事前になんとかするだろう。


 学校祭であの子もいい感じに弾けてくれて、ま、今度こそ思い残すことはないかな。


 あとはもう、馬鹿弟子たち自身の話だ。

 あたしはここで身を引こう。どうせいつまでも、後輩たちの面倒はみていられない。


 あのとき無理をしたしっぺ返しの影響か、ショートしてぶっ壊れたのか。

 あたしの未来予測は、ちょっとした機能不全を今起こしている。だから実はここにいる、女子会のメンバーたちの未来は、あまり見えなくなってしまっていて――


「ねえ、今度新しくできたお店にいかない? 熱々のデニッシュの上にソフトクリームをかけて、その上からシロップをかけるお菓子を食べに行きたい!」


 まあ智恵(ともえ)がこんなことを言い出すことも、予想はできなかった。

 まったく、相変わらず色気より食い気の同い年だよ。そーいうとこが好きなんだけど。


「また食べに行くの? まったく智恵は、おいしいものが好きねえ」

「だーって、お腹がいっぱいのが楽しいじゃん? だったら春休みにもなったし、大学に通い出す前にぱーっと遊ぼうよ!」


 そんな智恵に、まやかがクスクス笑って上品に言う。こいつ、大学合格できたんだっけか……練習ばっかしてて、意外と成績悪くて大変だったって聞いてたけど……。

 まあそれでも、そんね苦労をねぎらいにいってもいいのかな。

 ずっとずっと満たされなかった彼女の器も、ようやく底が補修されてどうにかなってきたってことか。

 そしてそんな同い年の言葉に、(ゆう)が相変わらずクソ真面目に言う。


「遊び、ですか。ふむ、(みなと)くんも言っていたとおり、私にはその要素が足りないようです。学んで補給しなければ」

「そーいう考え方してる限り、ずっとあの子の言いたいことはあんたには分からないと思うけどねえ……」

「何か言いましたか広美!?」


 いいや、なーんにも。

 この期に及んでも堅苦しい同い年に、あたしはそんなジェスチャーをして意思表明をした。そう、知っての通りあんなことがあったけど、あたしと優は今は特段、仲が悪いというわけではない。


 まあ、未だにあのときのことを根に持たれてる部分はあるけどさ……でも、それは自業自得だよ優。あのままいったらどうなっていたか、あんただって分かっていたろう?


 本人もそれは自覚しているらしく、そして引退したことでしがらみもなくなったらしく、以前のように突っかかってくるようなことはない。無視したりもしない。たぶんフェアじゃないとか、そーいう頑固なこと考えてるんだろうな。


 あたしが、あのとき本心を見せたからさ。

 自分も、そうしなきゃならないとか、義理堅く考えてるんだろーねえ。


 未来予測を使わなくても、そのくらいはこれまでの付き合いから想像できる。さてはて、この不調はいつまで続くのだろう。まあ、ないならないで頭がスッキリするからいいんだけど――なくなったらなくなったで、パンツはいてないみたいにスースーするもんだ。


 これまでは見えていたこの同い年たちの未来も。

 まるで頭空っぽのこの女子会みたいに、スッカスカで見えなくなっている。


 まあ、完全に感じ取れないわけじゃないんだが――まあいいか。それはそれで、こいつらの先に、特に心配事がなくなったということだ。

 これから何かありそうなとき、その危機に応じてあたしの力は復活することだろう。

 なにせあたしは、臆病な魔女である。危機回避に全力を尽くす、脇役みたいな根性のキャラクターである。


 だから覚えていろ。第二、第三のあたしが、いつか必ずやってくることだろう――なんて、適当なことを考えていたら。


「……広美も、行くんでしょう」


 いつものように弓枝(ゆみえ)に、先手を打たれて集まりに引きずり込まれた。

 やれやれ。友達の頼みとあっては仕方がない。あたしも一緒に行くとしますかね。


「大学生になる前にもうちょっとだけ、楽しいことをしちゃいますか」

「言い方……」


 そんな風に返すと、彼女はいつものジト目であたしを見返してきた。

 いいじゃないか。調子がいいんだからこのくらいふざけたって。

 紅茶しか飲めなかったあの頃と比べりゃ、あたしの体調はだいぶ良くなってきている。

 だから今日もコーヒーは美味しいし、美味しいということは幸せだ。それは智恵の言うとおりなのだろう。


「じゃあ、どうする? いつみんなヒマ?」


 柄にもないけどそう言って、あたしはみんなの輪の中心に立った。

 これからのことは分からないし、周りは相変わらずの馬鹿女たちだけれども。


 未来()の見えなくなったこいつらと一緒に、生きていくのもまた一興さね。

完結です。

ご愛読、ありがとうございました!

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