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友人はいるが面倒くさい

初めて友人キャラを出させてもらいました。

そして最近投稿していなかったのにも関わらずブックマークや感想をくれた方々ありがとうございました。


 月曜日の朝。

 俺は何とも言えない気分で目覚めた。

 

 (……まさか、あんな夢を見るなんて……)


 神倉先輩の夢を見るのはまだ分かるとしても、何しろ内容が酷い。神倉先輩が俺に片想いをしている……という夢。


 (……あるわけねぇだろ、そんなこと。)


 俺は自分の愚かしさに毒づくと、冷たい水で顔を洗った。

 一通りの準備を済ませると、普段とは違う心持ちで学校へと向かった。


 



 自転車小屋に自転車を置くと、すぐに玄関に向かう。

 今は登校してくる生徒が少ない時間帯だ。しかしもう少しで、大勢の生徒がやって来る時間帯になる。

 俺は気持ち駆け足で玄関へと向かった。


 靴箱にかけてある鍵を外す。

 今時の高校は大抵が靴箱に鍵をかけておく。万が一盗難にあった場合学校側が責任をとれないからだ。

 というか、盗難するなよ……と言いたくもなるが、年々盗難数は増えているらしい。なので一年生は殆んど全員が鍵をつけている。


 これが二年、三年になっていくと段々とつけなくなっていく様だ。……俺も正直面倒くさい。




 そんなこんなで、まだ生徒の数が少ない校舎の中を歩き、五階にある自分のクラスに向かった。

 ガラガラっと扉を開けると既に何人かの生徒は勉強をし始めている。ここは特進クラスという事もあり真面目に勉強したい子もいるのだ。


 最初は殆んどの生徒がそうだったのだが……日が経つにつれて、やはり高校生らしくエンジョイでパーリーな日常を送りたいらしい。無理だろうとは思うけど。


 俺は廊下側の後ろから二番目の席に座る。

 机の横に鞄をかけると、鞄の中からスマホを取り出す。

 俺の学校は基本的にスマホ禁止なのでもし先生にでも見つかれば即没収だ。


 ……とはいえ、それは表向きの規則で、先生達も生徒がスマホを使っているのを分かっているからそんなに言及してこないし、そんなに厳しくもしてこない。



 俺はスマホの電源を入れる。

 すると嫌でも目につく大量の通知が送られて来ていた。

 俺は、はあ……と小さく溜め息を吐きながら、99+と表示されたアプリを起動させる。


 <ねえ、見てるの?>


 <またブロックしてるの?>


 <もしかし⎯⎯⎯と、そこで見るのを止めた。

 

 (……またか。まあ、最近は神倉先輩の事で頭がいっぱいだったから忘れられてたけど)


 俺は冷めた目で、大量のメッセージを送ってきた人物をブロックした。もう慣れたものだ。何回この動作をしたことか。

 しかし、気になる事がある。


 (今回は少なめだったな……)


 少しの違和感を持ちながら俺はスマホを鞄の中に入れた。そして文庫本を取りだし、ホームルームまでの間読むことにした。


 


 


 本を読んでいると、自分が世界から乖離していく気分になる。

 俺が文庫本を楽しく読んでいると、突然俺の肩が叩かれた。


 「どーん!」


 「…………」


 (ういぃぃ!?)


 余りにも驚いたせいで言葉も発せない。

 内心で、なに?なに?と慌てていると、後ろからニュッと友人が現れる。


 「……なんだ、春雨か……おどろかすなよ」

 

 俺は冷や汗をかきながら、友人にそう言った。

 しかしそんな俺に対して友人は大きな声で笑い。


 「ははは!そんなに慌てるなんてな!面白かったぜ!」

 

 「…………は?」


 俺が出せる最大限の低い声を出した。

 

 「……す、すいません」

 

 「いいよ……。それよりおはよう」 

 

 「おお、おはよう」


 そう挨拶を交わして、春雨は自分の机に向かっていく。

 俺はそんな春雨を見送りつつ本に視線を戻した。



 



 

 「はーい、今日は“激励会”があるからなぁ~!選手として出る、事はまだ流石に無いか……とにかくちゃんと体育館に並ぶんだぞぉー!うるさくしないようにー」


 朝のホームルームが始まり、まず最初に担任の教師が言ったのは、今日の“激励会”の事についてだった。

 

 ウチの学校は部活に力を入れていて、そこそこの強豪だ。

 それに加えて部活動の数も多い。もう、こんなにか……ってぐらいには多い。何だったら“激励会”が校長の話よりも長いくらいだ。


 しかし、生徒からは絶大な人気を誇るイベントなのだ。


 そんな感じでホームルームが終わり、一時間目は移動教室となる。俺は教材の準備をして席から立つと、突然、後ろから肩を掴まれた。


 「おいおい、高利ぃ~まてよ~!ちょっと話があんだよぉー」


 「…………なに?」


 やけにテンションが高めの春雨は面倒くさくて相手にしたくはないのだが、ここは我慢して一応聞いてみる。


 「今日は激励会だろぉ~?」


 「え、うん……後そのキモい喋り方やめろ」

 

 「あ、ああ………、んんっ!まあなんだ……今日は激励会だな」


 「そうだね……うん」


 先程先生から言われたことを繰り返す春雨。

 それにどういう反応をしたら良いのか分からないので、俺は曖昧な相槌をうつ。


 だが、春雨はそれを意にも介さずに話を続ける。

 

 「そうだよ。今日は激励会なんだよっ!……普段は一般の生徒とは全くと言っても良いほど関わりの少ない俺らでさえも会えるチャンス……」


 「あ、あー……なるほど」

 

 そこで春雨が何を言いたいのか分かった。

 要するに普段なら時間の都合上絶対に会えない人に会えるチャンスって訳だな……でも、この場合の会いたい人とは、憧れの人という意味だ。

 アイドルの様なそんな存在、憧れる存在の事をさす。


 そしてその憧れの存在とは恐らく⎯⎯

 

 「今日は俺らも⎯⎯⎯神倉先輩に会えるんだぜっ!」


 そう、神倉先輩の事だ。


 「でも、会えるって言っても、こっちが一方的に見るだけでしょ……」


 「ふぅ~やれやれ~バカだなぁ……お前は……バカだなぁ……お前は」


 「おいお前なんで二回言った?」


 「神倉先輩に会えるなんて滅多にないチャンスなんだ、しかも前に一回だけ会った時は……マジで驚いたからな。こんなに綺麗な人がいるんだ、と」


 (悔しいがその気持ちは痛いほど分かる……)


 「でも、神倉先輩からは⎯⎯⎯⎯」



 と、俺が友人に話しかけようとした所で、まさかの一時間目の始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。


 (え、チャイムって……もうこんな時間!?)


 時計を見れば確かに一時間目開始の時刻だった。俺と友人は話を中断して移動教室である家庭科室へと向かった。



 ⎯⎯⎯一時間目からこんな調子で大丈夫だろうかと不安に思いながらも、大騒動となる“今日”が始まったのだった。


 

次回、神倉先輩登場予定です。

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