そのメッセージは俺にとっての
沢山の方に読んで頂いて嬉しいです。後、感想をくれた方々ありがとうございました。
なるべく早くに投稿します!
ジジジジと時計の針が止まることなく動き続けている。
俺はボーッとそれを眺めながら今日の昼間の出来事を思い出す。
ーーー今日の昼間のカフェで先輩は話した。男の人が怖くなってしまったこと。拒否反応を起こすこと。父親と何故か俺だけは大丈夫なこと。
そして、解決法方を俺と先輩は考えた。
……俺なんかが相談に乗ってどうすんだという気持ちもあったが、俺は何か協力したかったのだ。
そして今後の学校生活についても考えた。
今のままだと男の人が怖くて行けないーーーそう先輩は震える声で言っていた。
なので取り敢えずは男の友人に会ってみる事にするそうだ。要するにリハビリの様なものだ。
元々仲の良かった男子となら、症状が出ずに、そして先輩自身が怯えずに接する事が出来る筈だ。
それでも駄目なら、その時はーーー
・・・・・その時はどうするんだ?
もしも学校の男友達すら許容できなかったとしたら、一体この先どうすれば良いのだろうか。そしてそんな先輩に俺は何が出来るのだろうか。
だが今考えても仕方がない。
今日の先輩を見て思ったが、先輩の意思とは関係なく身体が拒否反応を起こす……のではなく。先輩が心の奥で男の人を拒否しているのでは無いだろうか。
そう考えるのがやはり自然だ。全く知らない他人ではなく、そこそこ知っている男の人となら……きっと、大丈夫な筈だ。
先輩は明日も学校を休むらしい。
そして明後日は土曜日なので、その日に男友達と会うらしい。知り合いで友達とはいえ今の先輩にはやっぱり不安らしく、一緒に付いてて?なんてお願いを俺にしてきたが、す、すいません……と断っておいた。
多分だけど神倉先輩には友人が沢山いると思う。
いや確実にいるな……。
だったらその男友達と無関係の俺が付いているより、その男友達とも仲の良い、そして神倉先輩とも友達の、女子を連れていった方が良いと思ったのだ。
その事を先輩に伝えたら、そうだね……と納得していた。
俺は目を瞑りベッドに倒れこむ。
胸のモヤモヤの正体が何なのか、胸の形容しがたい不安の原因は何なのか、そんな事を考えながら俺は眠りについた。
翌朝。
朝起きるとボヤけた頭で一番先に考えたのは、神倉先輩の事だった。
段々と自分の思考が神倉先輩に侵食されてきているな……と呆れつつも、やはり神倉先輩について考えてしまっていた。
今日は神倉先輩休むのか……そう思ってしまったが最後、俺自身も休みたくて仕方なくなってくる。
(今日も休みたいな……って、無理か……)
俺はちらっと母ちゃんの方を見る、すると母ちゃんから怒ってますよオーラーが涌き出ていた。
(ひええぇ……母ちゃんが怖いよぉ……)
まあ、俺に原因があるのだが……。
昨日学校を休んだ所までは許してくれた母ちゃんだったが、俺が昼間に外出していたことが母ちゃんに知られてしまってからはあんな感じだ。
神倉先輩の事を説明しようかとも考えたが、身内とはいえ余り言うべきでは無い気がした。まあ、なんとなくだ。
(あ、でも妹には知られてたな……)
と、まあそんな訳で、お怒り中の母ちゃんに学校を休みたいと言えるわけもなく……渋々学校に向かうことにした。
さらにその翌日の夕方。
俺は駅前のカフェに先輩といた。
「⎯⎯なるほど、なら大丈夫だったんですね?」
「うん。そう、なるかな……?」
今日は土曜日なだけあってカフェに大勢の人がいる。つまりは必然的に男の人も多くなってしまう、なので俺と先輩は一番隅の周りに他の客がいない席を店員さんに頼んだ。
そして現在ーーー
俺は先輩から、今日の先輩の成果について聞いていた。
「なら良かったです。少なくともその人には拒否反応が出なかったんですよね……?」
「うん、多分だけど……他の同級生の男子なら、大丈夫だと思う」
少し弱気な声で話す先輩。
「……ただ、少しだけ怖くて怯んじゃうけど……でも平静は保てるはず」
(そのくらいなら、全然許容範囲だな……ただ)
「やっぱり、今日会った人も怖く思っちゃいましたか?」
「⎯⎯うん……思った」
「ですが、神倉さんが普通には無理だとしても、この前の様な状態になることは無さそうで良かったです」
(……だけど、学校には色んな人がいるからな……)
「あの、因みにですけど……男の友人ってどのくらいいますか?」
突然の質問に、えっ、と驚いた表情の神倉先輩。
だが、次の神倉先輩の発言によって、俺は先輩とは比にならないほど驚愕することになる。
「⎯⎯⎯えーっと、大体……200人くらい、かな?」
「⎯⎯⎯⎯は?え、え?えええ!?」
(200人……?200人……?んんん!?)
そう言えば忘れていた。先輩は元々超が付くほどのリア充さんでしたね。
……こんな俺ですら神倉先輩の事を知っていたぐらいに有名な人だもんな。改めて、俺は今ヤバイ人と関わっているんじゃないかと……急に不安になってくる。
(俺なんかが関わって大丈夫な人なのか……)
急に押し黙った俺に何を思ったのか、先輩は手をわちゃわちゃと動かしながら勢い良くーーー
「ち、違うんだよっ?その人たちは知り合いっていうか……本当にただの友達だしっ、別に特別仲良くしてる人もいなくてねっ」
「は、はあ……?」
そんなに勢い良く捲し立てられては、逆にこちらが困惑してしまう。先輩の言いたい事は良く分からなかったが、取り敢えず俺は頷いておいた。
ただ日が経つにつれて、少しずつ、本当の意味で元気になってきている先輩が俺は嬉しかった。
すると、先輩は俺を真っ直ぐに見つめて。
「でね、石田くんのクラスを教えてもらえ」
「⎯⎯無理です」
先輩の発言を遮りつつ、即断った。
少しだけ、ほんの少しだけ考えたが、やはり学校で先輩と接触するのは非常にマズイ気がする。その為やはり断らせてもらった。
しかし、先輩はそんな俺の言葉が気に入らなかったのか、可愛らしくぷくーっと膨れて文句を溢す。
「なんで~!っていうか私、大抵の生徒を知っている気がするんだけどなぁー、でも石田くんの事知らなかったし……」
グサッ。
胸に突き刺さった。
(……先輩、悪気なくそんな発言はちょっと……)
普通に考えて俺みたいな一年生の陰キャラを知っている方がおかしいのだが……大抵の生徒を知っていると言われた後のその台詞は少しだけ心にくるものがあった。
だが同時に、やはり、こんな俺と神倉先輩が学校で接触したらそれこそ周りは大騒ぎになるだろうとも思った。
俺の選択は正しい筈だ。
まあ、この人なら全クラスを調べそうな気もするが……そこら辺は考えないようにしておいた。
それから俺と先輩は店を出て、暫く歩いた辺りで一つの交差点にたどり着いた。
夕日に染まった先輩が俺に小さく手を振ってくる。
「⎯⎯じゃあ、ね」
幻想的な先輩の姿に見惚れつつ、俺も先輩に返事を返す。
「はい、それでは……また」
(また……?また会うことなんてあるのか……?)
そんな疑問が己の中に浮かんできた。
この先の学校生活で俺が会うことなんてあるのかどうか分からない。だけど、ほんの少しの期待をこめて先輩にそう言った。
それから先輩と別れた俺は歩きながらスマホの電源を入れ、一つのアプリを起動させると、【ミリ】と表示されている人物にこう送った。
<もし困っていたら、助けますから>
ーーーそれは何の根拠も確証もないただの意気込みであり覚悟であり誓いである。
今回でプロローグの様なモノは終わりです。
次回からは本編である主人公と神倉先輩の学校生活を書いていきます。