プロローグ
大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした!!
これからはまた遅くではありますが、続きを書いていけると思います。
石田高利、高校一年生。可もなく不可もなくな人生を送ってきたつもりだが、時には思春期の男子らしく、突拍子も無い空想を思い描いたりしたこともある。
その中の一つに、美少女と偶然出会い、仲良くなるというものがあった。それはテンプレと化した、今ではもうありきたりで、当たり前な、けれど絶対に現実では起こりえないような、馬鹿げた空想。
そんな空想が、ここ最近では、現実のものとなっていた。信じられない出会いに始まり、まるで自分が主人公になったかの様な体験をした俺は、少しいつもと違っていた。
自惚れというか、調子に乗ったというべきか、それは確かに自覚もしていたのだけれど、けれどそれはどうしても抑える事は出来なかった。
いつか思い描いた空想の、夢の様な物語。
それが現実で起こった気がして、夢の美少女と出会えた気がして、自分が空想の主人公になれた気がして……だからきっと間違えた。
後悔しても、全て遅い。
後悔した瞬間、それは、もう手遅れであったという証明。
馬鹿で未熟な子供のやった事なのだと、周りはフォローしてくれるだろうか。
否、それを俺は許さない。決してそんな事は、認めない。例え他の誰が、俺の事を許そうとも、俺だけは、決して俺を許さない。
誓いだなんだと言いながら、結局は空想の世界に紛れ込んだ感覚でいたのだ。
ーーーそこは確かに現実だというのにも関わらず。
何が、何が、何が……!!
自分に対して言いたい事など山ほどある。
やれた筈の事も、やらなければならなかった事も沢山ある。
けれどそれを今考えても、もう遅い。
ならば、だからこそ、『今』だ。
後悔なんて言葉で綺麗に締めくくろうとしてはいけない。そんなものは、全ての選択肢を選び、全てを行動に移したものだけが使っていい言葉なのだ。
……まだ、使ってはいけない。
けれど、使っても良いと、思いたい。
空想は空想であり、決して現実では無い。空想を広げて思い描くのは自由ではあるが、決してそれを現実で当てはめてはならない。
人にはその人の考えがある。それはもちろん俺にもある。それは、その人がしっかりと考え、進み、一歩ずつ一歩ずつ歩んできた人生があるということ。
自分の空想は、自分が思い描いた空想だ。そこに出てくる、夢の美少女も、もちろん現実には居ない。居る訳が、無い。
だから俺はそこできっと間違えたのだろう。
きちんと、あの人を見ていなかった。どこかで、現実では無い、自分の思い描いた夢の美少女と、そう思っていたのだと思う。
違う。それは違うんだ。あの人は、確かに現実にいて、普通の高校生と同じように、悩んでいる。
いつも陽気に笑っていて、簡単に感情が変わって、すぐに原因が解消されて、全てが終わって元通り……なんて、そんな空想上の人物じゃない。
時には不可解な行動もするし、よくわからないところできっと悩んでいたりもするのだろう、分からない事が分からないとか、思春期丸出しの恥ずかしい悩みとかもあるのだろう、でも、それが……あの人だ。
俺は知らない、何も知らない。あの人の事を、何も知らないし、知れるとも思わない。
だから最後には、空想上にいる、夢の美少女なんかじゃなくて、ただの、普通の女子高校生のあの人と、俺は笑って泣いていたい。
……あの人と一緒に、最後、全てが終わったその後で、俺は後悔したいのだ。
ふんっ、と息を吸い込んで、前髪を上げた。鏡を見れば妙に緊張した冴えない男子が。けれどその顔には、少しだけだが勇気が見えた。
玄関を開けて、学校へと向かう。
もう一度、息を吸い込んだ。
ーーーさあ、後悔を、しにいこう。




