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それはいつかの責任の行方ーーー


夕方の空を眺めながら、段々と迫り来る夜を待つ男が居た。その出で立ちは、一言で言えば、怪しいだった。


男は、人気ひとけの無い道路を歩み進めていく。……嫌な笑いを浮かべながら。



「今日は……今日こそは……いる筈だ」



醜悪な笑みを顔に貼り付け、ぶつぶつと独り言を呟く。もしも周りに人が居たとすれば、最悪通報されてもおかしく無いほどの、異常さを男は放っていた。



「あの時……あの時……あの時……。……後悔するのかなぁ……なぁ? ……どうなんだろなぁ。なぁ?」



男の脳裏に浮かんでいるのは、ねっとりとした暑さに包まれた『あの夜』だった。

自分の、もはや恒例と化した、行為を。……あの野郎は、邪魔したのだ。


それは男のプライドをへし折るものであった。正常な思考の持ち主ならば、何を言っているんだコイツは、となるだろう。


しかし、男にとって、あの行為は全て当たり前なもので、極々当然の、常人がまるで歯磨きをするかのように、行うものだったのだ。



「もう……無理だ。もう……もう……いいな。いいよなぁ? ……なぁ?」



男は疑問を口にする。しかしそれは、誰かに向けたものではない。男にとって、それは既に決定事項なのだから。

男は狂っていた。酷く恐ろしく、残酷なまでに狂っていた。



ーーーしかし、馬鹿では無かった。



男は、あの夜から毎日、ルーティンのようにこの道を歩く。そしてあの畑へと向かっていた。あの忌まわしき記憶が残る、あの畑に。



しかし、男は分かっていた。何度この道を通ろうとも、もう二度とあの二人には会えないという事を。



しかし、男は渇望してやまなかった。それは、男が毎日のように想像する……いわば夢とさえいえるもの。



一人の少年は倒れ込み、酷く無惨な姿を晒し。もう片方の少女は、少年とは違う意味での無惨な姿を晒して衰弱している。



ーーーそして、そんな二人の横で、最悪の笑顔で笑っている男の姿。



そんな妄想を男は毎日毎日毎日するのだ。



ああ、なんて、なんて素晴らしいだろうか。



狂った男は、またも醜悪な笑みを貼り付けて、今日もまた同じ道を歩く。



しかし、何度も言うようだが、男は確かに理解していた。例え、このまま待っていたとしても、あの二人は自分の前には決して現れないという事を。



この男は渇望し狂っている。

そんな狂気の塊を逃した、その事実を、普通の人間はどう受け止めるのだろうか。


……はたして、どう、受け止めたのだろうか。



大した事ない? 大ごとにはならない? きっと大丈夫?



ーーーそんな考えを抱いてしまった自分自信を、ただの男子高校生はどう思うだろうか。はたして、どう、後悔するのだろうか。



まだまだ、何も終わってなどいない。

『始まり』は決して終わる事はない。ただ、忘れ去られるだけ。



そしていつか思い出す。

けれど、その時。その思い出した時に、どうなっているのかは分からないが。




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