表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

俺の中の"何か"が揺れる。

体育祭編4話目です。

今回登場した人物ーーー真鍋君については覚えておいてもらえると嬉しいです。

彼はこの体育祭編で大事なキャラとなります。


俺はその担任からの問いをどう答えて良いのか分からなかった。

俺たちの関係性ーーーそれは……。


「ただの知り合いです」


結局、俺の考えはそれに至った。

今の俺たちの関係性はそれ以上でもそれ以下でもない。


それに対する先生の反応は、


「お前さっき知らないつったろ〜、嘘つきやがったなあ〜ー」


そう言いながら、ケケケと笑った。

俺は、そんな先生から視線を逸らし、奥の方で何人もの教師に囲まれている神倉先輩を見る。


(なにを話してんだろ……)


けれど、今の俺は取り敢えず、この職員室から退出することを最優先とした。


「じゃあ、俺が体育祭実行委員ってことでも良いんで……これで今日は失礼します」


「分かった。じゃ、頼んだぞ〜? 実行委員」


そんなからかうような笑みを浮かべた担任に一礼し、俺は職員室を出た。

窓の外を見れば、まだまだ明るく空は青いままだった。

と、俺が空を眺めながら憂いていると。


「ーーうっせぇよ!」


そんな声が聞こえて来た。

第1体育館側からやって来たその人達は、見るからに部活動を頑張ってますよな格好だった。


(うわぁ……絶対関わりたくねえ。逃げよ)


俺はその人達が来た逆方向に逃げることにした。

非リアで陰キャ、さらには部活動も何もしていない俺にとって、部活の集団はこれ以上ない程に恐ろしい存在なのだ。


「だから、この前のアレは違えんだって!」


「はぁ〜? お前、高橋とデートしてたろぉ?」


(チッ、うざいなこの会話……)


思わず心の中で舌打ちをしてしまった。

しかしそれもこれも、このバカでかい声で話す会話が悪い。

まじこの、『リア充なんだぜ俺』的な会話は控えて欲しい。


(ま、俺には関係ないし……教室帰ろ)


そんな風に考えながら、鞄を取りに教室に向かって歩き始めたその時ーーー。


「あっれー? 真鍋じゃーん」


……とても聞き覚えのある声を聞いた。

同じ声をよく聞いていた。何回も同じ声を聞いた。


ーーーけれど、俺が聞いていた声とは明らかにどこか違っていた。


「おっ、美里じゃん。どしたん? って、あー……そういやお前、体育祭の実行委員長になったんだっけか」


「えへへー、まあそうだねー。でも、部活も普段通り頑張りますからっ」


「おう、当たり前だな」


「言ったなコイツ」


そうして周囲からは笑い声が上がる。

そんな中、俺は全く笑えていなかった。

先程教室に向かって歩み始めた筈の足は、とっくに歩みを止めてしまっている。


何だろうか、この変な気持ちは。

きっとこれは、俺が本来持ってはいけない類の気持ちだ。

それなのにーーー。


俺は自分に腹が立った。

自分が酷く気持ち悪かった。

俺が、俺なんかが持ったら心底おこがましい様な感情。気持ち。


それをたった、たったーーー神倉先輩が俺と話す時とは違うテンションで、声音で話しているというだけだというのに。

そんな当たり前の事実を目の当たりにしただけで。


こんなにも、俺の心の奥で"何か"が揺れるのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ