俺には体育祭とか関係ないし
お久しぶりです。
体育祭編の始まりです。
普段と何ら変わらぬ日常そのもの。
普段通りの登校から、普段通りの朝の時間。
そして普段通りの担任の話ーーーと、ここで普段通りではない事が起きてしまった。
「よし、お前ら〜! もうすぐ夏休みな訳だが……なにがあるか分かってるよな?」
その担任の言葉にクラス一同首を傾げる。
「あ、分かったっ! 夏休み明けの体育祭だろ!?」
「「「あー……」」」
一人の男子生徒が元気よく声を上げた。
そしてそれに他のクラスメート達も納得の声を漏らす。
かくいう俺も納得していた。
(なるほど。確かに、夏休み明けすぐにある体育祭の準備とかが夏休み中にあるよな……)
なんて納得していると、担任が満面の笑みで首を振って来た。
「違うぞ?」
「「「え……?」」」
クラスメート達が戦慄の声を上げた。
はいはいはい。知ってますよそりゃあ。
俺、いや俺たちは、その残酷な現実から少しでも目を背けたかったんだ……。
そして冷酷な担任が、とうとうその言葉を口にしてしまった。
「お前ら特進は……『夏期講座』があるから」
「「「うぎゃあぁぁぁぁぁぁ」」」
教室のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。
(うーわ……やだなぁ。めんどいなぁ)
俺も悲鳴をあげたかったがそれを何とか我慢した。
しかし、と俺はクラス全体を見回す。
こう見ると、案外冷静というか、普通にしている奴も結構いる。
(やっぱ……こういうとこで学力の差が出るのかねぇ)
こうなったら諦めも肝心だろう。
俺は辛い辛い現実を乗り切るための覚悟を決めた。
「んでだ、さっきついでに言ってくれたんだが、夏休み明けには体育祭がある。ってなわけで、お前ら講座終わった後の、午後から準備よろしく〜」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁあ???」」」
おっと。今度は先程は冷静に構えていた奴らが、主に声を上げた様だ。
逆にさっき叫び声やら上げていた奴らは逆におとなしいな……。
(俺は……俺は、まあ。あんまり係とかにもならないだろうし、関係ないよな)
今思えば、そんな甘いことを考えている時点で間違いだったのだ。
人が落ち込むのは何故だか分かるだろうか。
落ち込む、という自体の理由はきっと人それぞれで、その人その人によって何かしらの理由があるだろう。
けれど俺は思う。
自分の想定していた事と、実際に起こった事の落差が余りにも激しいから、人は落ち込むのだと。
例えば、元々振られる事が前提の、学校一の美少女に告白したとしても、それはそんなに傷付かない筈である。
だってそれはーーー想定と結果に差が無いから。
けれど、普段から仲良くしていた女子に思い切って告白したとして、それでもし振られてしまったとしたら。
恐らくそれは、これ以上ない程に落ち込むのでは無いだろうか。
……まあ、俺、告白したことないから分からないんだけど。
そして今、体育祭なんて自身には全く関係だろうと考えてしまった俺に、急激な落差が襲い掛かる。
それは酷く平坦な担任の声。
「じゃ、ウチのクラスの体育祭実行委員はーーー石田、お前に頼むな」
…………。
………………………。
ーーーは?




