『諦め』とはそう簡単に出来ないモノの事である
激励会を終えて、その翌日。
俺はぼーっと考え事をしていた。
例えば、人は諦めようと誓ったモノをそう簡単に諦められるモノだろうか。
否、それは違うと思う。
諦めるモノと言っても、人によって様々だとは思うが。それでも諦めようとまでしなきゃ諦められないようなモノを、人はそう簡単に諦めることは出来ない。
何かを諦める、口で言うのは簡単だが、実際のところ本当の意味で諦められた奴は一体何人いるのだろうか。
恐らく、そんなにいないのではいだろうか。
そんな事を考えつつ、俺は昨日自分が誓った事を思い出す。
ーーー元から無かった関係を自分の中で終わらせるんだ。
そう俺は強く決意した。
これ以上神倉先輩に近づいたとして、お互いにとって良いことは何もない。少なくとも神倉先輩には良いことなど何もないだろう。
そう分かっている。
分かっているんだ。本当に。
なのに、あんなに誓ったのに。俺は未だに諦めきれずにいる。
もしかしたら、この関係を本物に出来るんじゃないかと。
別に恋人のような関係になりたい訳でも、親友のような関係になりたい訳でもない。
そう言うんじゃなくて。
言葉でも上手く表せない。
けれど、俺の望みは確かにあった。
ーーーもし、この関係を嘘だと思うのなら。
ーーーそもそもこの関係が何なのかも分からない。
ーーーでも俺にとっては大事な関係で。
ーーーだから、この嘘の関係を本物にできるとしたら。
どうやら、俺は諦める事が出来ないらしい。
微かに溢れでた笑みを、俺は自分で驚きながら。
(神倉先輩に相応しい、そんなヤツになろう)
そう自分に新たな誓いを立てた。




