その輝きはあの人から
そんなこんなで再び体育館に帰ってきた俺は、未だザワザワと喧騒に包まれた生徒の中をサッと掻い潜り、元の位置まで戻ってきた。
「ただいま」
「おおっ、無事だったか……」
「まあね、てか危険もないだろ」
そんなやり取りを交わしつつ、春雨に先ほどの礼を言う。春雨は爽やかに良いよと言ってくれた。流石はイケメンだ。
すると、隣にいた春雨が勢いよく立ち上がった。
(え、なに? どうしたの春雨?)
「どうした春雨?」
疑問に思った俺はそのまま春雨に聞いてみた。がしかし春雨はキラキラとした瞳を真っ直ぐ向けている。
そしてその真っ直ぐにある場所といえばーー体育館ステージだ。
と、そこには、遠目からでも光って見える程の輝きを持つ女子生徒がいた。普通ならばあり得ないだろうが、何故かその人が誰なのか分かった。
(てか、あんなに輝いているのは一人しかいないか)
そうーーー神倉先輩だ!
俺は思わず立ち上がった。すると、段々と体育館内がどよめきに包まれ始める。
神倉先輩の存在感は誰もが一目で分かるほどに常軌を逸していた。
だが、後々聞くと、周りとのちょっとした光の強弱で輝いていた様に見せていたらしい。だがこの時それを知るわけもなく、なんだか興奮した雰囲気の中俺も同様に興奮しているのだった。
(あの神倉先輩と、俺が知り合いだなんてな)
だが、俺の場合は、そのすごい神倉先輩と自分が知り合いだという事実に酔いしれたかっただけなのかもしれない。
だがこの時の俺は、大抵の高校生は求めるであろう自己承認欲求を満たされた状態で、愚かしくもやけに気分が舞い上がっていたのだ。
「おい、高利っ! あの神倉先輩だぞっ!?」
「うん、そうだね!」
「ん、神倉先輩だけなのか?」
「あっ、ホントだ……」
(確かに言われてみればそうだ。みんな神倉先輩がいるって事だけに注目してるけど、よく考えれば選手が入場する場所は体育館の後ろからだよな……?)
俺がそんな疑問を抱いている時だったーー突然神倉先輩の声が体育館中に響き渡った。
「皆さん、長らくお待たせしました。それではこれより"激励会"を始めますっ!」
その一言で体育館内が異様な熱気に満ち、全校生徒が興奮した雰囲気のまま"激励会"が始まるのだった。




