Business as Usual
汐路が首筋に違和感を覚えながら目を覚ました。
暖かなソレが何なのか手で触れ柔らかなそれに違和感を覚え隣に顔を向けるとニヤニヤと笑っている棗が布団に潜り込んでいた。
「ちょっ……棗!?」
「おう、起きたか?昨日は最高の夜だったろ?」
「え?」
一瞬汐路はいつ棗とそう言ったことをしたのだろうと記憶を辿るが、昨日は普通に一人でベッドに入った記憶もあった。
「え、嘘でしょ?昨日は一人でベッドに入ったし。」
「おう、嘘に決まってんだろ? 仮にやったんなら華音やマコも一緒だ。アタシは華音やマコを仲間外れにするような真似はしねぇからな。」
そう言いながら汐路の頭の下から腕を引き抜きベッドから出た下着姿の棗は、脱ぎ散らかしたいつものシュータースタイルの服装を身に着けていく。
「服まで脱いでたの!?」
汐路の突っ込みに棗は悪びれる様子もなく顔を向け言い放った。
「昨日も言ったように今日はエリオナんところに向かうって言ったろ?歩いても一日かかるんださっさと着替えて出発するぞ。起床時間になってもテメェが起きてこねぇから起こしに来ただけだ。」
「あ、ゴメン。すぐ着替えるから。」
「ああ、アタシらは先に飯食ってっからよ。早くしねぇと汐路だけ携帯食で腹膨らませることになるぜ?」
棗が汐路の寝室から出ていき、汐路はベッドから降りパジャマに乱れがないか確認した後、念のため下着の股間の部分は見つめほっと息を吐き出す。
棗達と違いデニムのパンツに、一般的なTシャツ、それと森の中を歩くため虫刺されなどを予防した上着を羽織るとリビングに移動した。
「し、汐路ちゃん。おは……おはよう。」
「汐路ちゃんおはー。」
棗は朝からヘビィなアメリカンな食事を食べるタイプだが今日は珍しく食卓には、日本食が並んでいた。
「あ、白米にお味噌汁。それに焼き魚? 珍しいわね。」
「おう、たまにゃぁこういうのも悪くねぇだろ?マコはいつもアタシに合わせアメリカンな飯を作ってくれるがマコも華音もそしておまけの汐路も和食がくいてぇとおもってな。」
「あ、私ってオマケ扱いなんだ。」
「オマケ以外に何があるんだ?アタシの嫁でも華音の嫁でもマコの嫁でもねぇし。」
食事を終え、4人はセーフハウスからでてエリオナの居る水の都「サレナ」へと歩き出した。
もちろん棗達3人はいつものように武装をして。
まだ開拓村とサレナを繋ぐような街道はなく、湖に沿い歩きサレナへと向かう。
そのさなか、モンスターに出くわすこともあるためだ。
とはいえ、以前のトロールの時のように森の奥にあるモンスターの巣に向かうわけでもなく、戦闘行為を重視したフル装備ではなくサレナに向かうため1日歩き続けるための身軽さも考慮した装備だった。
棗はプラティパスとその予備マガジン、そしていくつかのショットシェルとベネリM4というイタリア製のショットガン、華音は普段から使う装備がそもそも個人的な趣味の物であるため変わらず、マコはサブアームのXD mod.3と予備マガジン、そしてH6mare's regといった形だ。
「相変わらずアンタらは重装備よね。」
「そりゃモンスターの居る世界だからな。武装せず出歩くなんておっかなくてできねぇだろ? お前くらいじゃないか?武器を持たずにフラフラあるいてんの。」
「一般的な日本人だと武器を持って歩くって感覚が変なのよ……。」
「いい加減ひとつき以上もこの世界にいるんだそろそろ日本から切り替えろ。毎日のようにモンスターが村を襲うような異世界だぞ?汐路が銃を撃ちたがらねぇのは別に構わねぇし戦えねぇのも問題ねぇ。この世界の女子供だって戦えねぇ奴は居るしな。だが文化や習慣、常識ってのはこの世界のもんだからよ。」
「この世界基準でも常識がない判定の棗にいわれるなんて……。」
「なっ なっちゃんは、ど……どこに居てもなっちゃん。」
「なっちゃんは、自分の教義と線引きで判断するから仕方ないね。」
フォローしているのか微妙な言い回しでマコと華音が口をはさんだ。
「っと、しょうもねぇ話をしてたらそろそろ見飽きた半魚人野郎のおでましだぜ?」
口笛を鳴らした棗が即座にショットガンを構えそれと同時に華音もライフルを構えた。
マコはゆっくりとスリングで下げていたmare's regを構えている間に棗と華音が発砲していく。
近距離では無類の破壊力を誇る12GAのスラグ弾がサハギンの頭部を一撃で破砕し、華音の素早い3タップが穿っていく。
それと同時にマコは目の前にいるサハギンの数が棗と華音の二人で対処できることを確認し周囲を警戒し見渡した。
日本に居た頃のサバイバルゲームでも棗達はスリーマンセルで行動することが多く、レバーアクションライフルを使用するマコは正面の戦闘より周囲の警戒に回ることが多かった。
もっともマコの周囲警戒は棗程のものではない為、熟練のサバイバルゲーマーの接近を許したり挟撃を許してしまうこともしばしばあった。
それでもこの異世界で、暗殺者でもないただの知能の低いモンスター相手ではマコの警戒でも十分通用した。
「「クリア」」
数秒の戦闘でモンスターを撃退すると、棗はサハギンの死体に向かって歩いていく。
「相変わらずコイツの硬鱗は金になるからな。デカくて形の良いモンだけ剥いでいくか。魔石は……アタシらには無理だから放置でいいか。モンスターの餌になっちまうらしいが数匹なら平気だろ。」
そう言いながら2か月に及ぶ異世界生活により慣れた手つきで棗はサハギンの鱗を剥ぎ始めた。
「最初はちょっとアレだったけど私も異世界に馴染んできてるなぁ。もう血まみれの鱗を洗ったりするのもなんとも思わなくなってきたよ。」
「はっ 言うじゃねぇか。なら今度からコイツから鱗を剥ぐのもやってみるか?」
棗の軽口に汐路は、顔を歪め心底嫌そうな表情を露にする。
モンスターとの戦闘が数回あったがこの世界の住人と違い一回の戦闘時間が圧倒的に短く、休憩も華音のセーフハウス内という安全なところで行うため移動はスムーズに行われ日が暮れる前に棗達は水の街サレナへとたどり着くことができた。
あとがきのような物
ベネリ イタリアのブランドでベレッタ傘下のブランド
M4 軍・法執行機関向けにも使われるセミオートショットガン。米軍ではM1014として採用されています。
見た目は好きですが、私はハンドガンの競技者でありショットガンを撃つスキルはないので前モデルのM3を数回撃ったことがある程度です。
ちなみにベレッタ自体もA300や1301といった非常に高品質なショットガンを作り販売してます。
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