第七十七話:南大陸のお得意様発見
ユニコーン王国というのは国の神獣のユニコーンから取った名前だそうだ
国ではユニコーンに日常的に乗っているらしい。
「……それで、陛下のお爺さまがサン王国との国交を拒絶したわけですか?」
「そうなりますね。軍艦四千隻で来られても説得力がないですよ」
「そうね」
「困った奴らです」
「軍艦の数が多いのが厄介ですね」
「五年前にサン大陸統一戦が始まり十二カ国あった国も今では北東のサンと
南西の我がユニコーン王国の二カ国のみとなりました。食糧自給率は双方
八割は確保していますが大陸中央部でのにらみ合いで厳しいのが現状です」
「余所にちょっかい出せるサン王国と互角に戦えるなら
そちらも余裕があるんじゃないの?」
「そういえばそうだな」
「どうなんですか?」
「医療用アルコールを作るのが限界といった所ですね。陛下でも飲酒は
一日に一本と制限を自らに課している位です」
「国力的には負けているという事ですね?」
「先に先制したサンの輩の方が領土が広いのは確かですね
我らも技術力では負けていませんが食糧だけはどうしようもありません」
「どの位の人が住んでるの?」
「当国が七億八千万人程度でサンが九億程度でしょうか」
「ジュノー大陸と同じくらいか?」
「この大陸の人口はいくらくらいなんですか?」
「十六億といった所だ」
実数の繊細は未だに不明だが十六億以下という事はないだろう。
「それで前の話に戻りますが食糧を譲って頂けるのでしょうか?」
「サン王国には宣戦布告された間柄だ。対価を頂ければ融通しますよ」
「それは有り難い。では今食べている米というのを一千万トンと
小麦を一千万トンほど融通して頂きたい」
「ヨハン、幾らで売る?」
「そうですね、輸送費を持って頂けるなら一トンで金貨二枚と小金貨二枚
輸送費がこちら持ちならば金貨四枚になりますね」
「それならば南部米というのを五百トンにフリーダム米というのを五百トンを
我が国が輸送を引き受けよう。小麦に関しては輸送をお願いしたい」
「ではユニコーンの輸送船が入れるのはここより南東にある一港のみで
エンジェルへの入場には制限をかけさせて頂くが宜しいか?」
「それで問題ない」
魔法契約書を使わないのか?
相手が下手に出てるんだ通常の契約書で問題はないだろう。
「ではこれで契約完了です。港にある分は全て持っていって頂いて
問題ありません」
「それでは沖合に待たせてある輸送船をすぐに入れて積み込み作業を行う
貴国の好意には陛下に代わって感謝する」
「お手をお上げください。こちらこそご武運をお祈り致します」
「では悪いが失礼する」
忙しい御仁だ。エクレールに呼んだら来たんだろうか?
「ノア様、確信しました。彼らには魔法技術と言いますか
魔法を知らないと思われます。敵対国のサン王国も同様でしょう」
「魔法が使えない人は多いけど。存在しない国なんてあるのかしら?」
「前金でユニコーン金貨でしたか、それを五十万枚も払っておいて
魔法契約書を使わないなんてあり得ません」
ユニコーン金貨が白金貨と同等か。材質は確認済みだし嘘を言っている
ようにも見えない。
ここは新規のお得意様と考えて割り切るか。
「魔法がない世界か。でも俺達も最近は魔法を使ってないよな」
「機械文化が発達すると衰退するのかも知れませんね」
「まあ良かったじゃない。穀物が余りそうだったんでしょう」
「今年は去年以上の収穫高になりそうだしな」
「難民は勝負の年ですからね。かなり真剣に開拓に励んでますよ」
「酒を熟成させるにはチャンスだけどな」
「お酒ばかり作っていられないでしょう」
「数は少ないけどペガサスもいるって言ってたわね。ぜひ欲しいわ」
「戦闘機の方が遙かに速いぞ」
「夢がないわね」
俺達は補給の指示と魔法を使わないように指示だけ出して本国に帰国。
帰国すると西大陸の戦争の様子を聞かされた。
何でもロアン王国が街へ飛行艇での特攻を仕掛けてきて大損害がでたので
お返しにトレミー帝国も街への特攻をやり返したらしい。
「双方ともに十二回の特攻ですか?」
「街が三個ずつ半壊したようね」
「これを繰り返すとロアンの方が有利かな?」
「トレミー帝国の方が大きいから痛み分けじゃない」
「でもやられてやり返さなかったら次が来るからな」
「まさに負の連鎖ですね」
「これで暫くは再びにらみ合いになるだろう」
「それと別件ですが、南方の三カ国が南で戦争を仕掛けて負けて
帰国したそうです。かなりの空軍をもっていると思われます」
「今度は南西大陸とかなのか」
「あまり増えても困るな」
「順番にかたづけていかないとね」
俺達に負けて戦力が余っているのは判るが、サン王国かユニコーン王国と
戦争でも始めたのか。それとも別の国か?
花見は大雨の為に見送りになって季節は五月。
米も蒔き終わりそろそろ麦の収穫が気になってくる頃だ。
「やっと、ノルトで決着がつきました。南軍と呼んで良いのか判りませんが
若者を中心とする南軍が北軍を圧倒して敵は首脳部の命を代償に決着です」
「それで併合の話は?」
「それは後日考えると言う事で貿易だけを先に再開したいそうです」
「うちに喧嘩を売ったんだ。高値で売って構わないぞ」
「わかりました」
機械化部隊の威力は絶大だな。俺が学院に入学する前のアルタイル王国が
今のフリーダムに襲われたら三日持たないだろうな。
良い香りだ。
「若様、ここが人気の珈琲店です。男性に人気だそうです」
「ご注文は何に致しますか?」
「栗ケーキにブルーマウンテンのセットを三人前ね」
「かしこまりました」
「コンラート、手慣れてるな」
「空軍士官はここの常連が多いんですよ」
「あれがテレビですね」
「国営放送だけだけどな」
「そういえば、チャンネルセーラで南で零型戦闘機の編隊を見たと
漁師のインタビュー特集で言ってましたよ」
「零型は本国防衛以外には使ってないはずだよ」
「サン王国あたりに零型をコピーされたら一大事だな」
F-4をコピーまたは同等品を作れるほどの技術があるのか
うちだって見本があったからぎりぎり作れたんであって見本なしだと
転生者でそれも技術畑の人間か。
「おまちどうさま」
「苦いけどそれがいいね」
「砂糖が高かった頃ならとても飲めないね」
「砂糖を使ったケーキか、俺がガキだった時は夢の菓子だったんだけどな」
「時代が違うよ」
十年前は味噌が最先端で醤油開発が始まったばかりで砂糖や胡椒は夢の
食べ物だったのに軍備の近代化に馬から車にそして航空機か
目覚ましい発展振りだな。
「そういえば、水洗トイレは導入したのか?」
「特別価格で金貨二枚ですからね。導入しましたよ」
「主要都市の三割は導入したんじゃないか」
「エクレールは九割以上だぞ」
「女性がいる時には話せない内容だよね」
「違えねえな」
その三日後には旧型のアレス航空の定期便がハイジャックにあったという
報告が来た。
「まさか、女性用の下着のワイヤーを武器に人質を取るとはね」
「マイセン空港で補給待ちだったんだろう」
「どうするんですか?」
「サントス王国への亡命なんて受け入れられないよ」
「突入作戦か?」
「きつそうだな」
「これからは女性にも搭乗する時は金属探知機の検査を受けてもらわないとね」
四時間後に犠牲者二名を出して捕り物劇は終わったらしい
犯人グループの六人は全員射殺だ。
そして六月一日に遂に電話サービスの開始だ。
「リリーナが喋っていいぞ」
「初めての電話なのに宜しいんですか?」
「気にするな」
「拝啓、おばあさまお元気ですか……「ガチャン」
「あれ、線が抜けちゃいました」
三日後には拝啓、お元気ですかという歌が出来た程の反響でアレス通信の
電話交換手は朝八時の開始から夕方六時までは休み時間以外は大忙しだ。
「電話は設置費用が黒金貨一枚に電話機が金貨二枚ですか
非情に悩みますね」
「通話時間が民間は二十分が上限だというのもきついよな」
「徐々に改善だな」
アレス通信の交換手は全て国税省の委託職員で不穏な会話はすぐに録音
そして中央に送られて別件逮捕という驚愕の監視体制だそうだ。
そして遂にサン王国が前回の倍の八千隻に艦艇を増やして
我が国の南部五百キロに領海侵入してきた。
国の領海はその国の元首が決めるので、我が国の領海は五百キロだ。
俺もギュンターと共に空母で見学だ。
「五式機動機雷をバラ巻け」
「第四攻撃大隊、第二、第三爆撃大隊、五式機動機雷を均等に投下せよ」
「了解」
掃海艇なんてないだろう。さてどうする。
「敵船は停船してボートを降ろして機雷の除去を行うようです」
「旧式のフレア弾ならびにトルネード弾を積んだ爆撃機隊を発進させろ」
「了解、第四から第十一爆撃中隊発進せよ。目標は敵船団
相手は軍人だ。無差別爆撃を許可する」
「繰り返す無差別爆撃を許可する」
八千隻の戦闘艦も停船した状態では六百機の爆撃機の前にはただの目標に
過ぎず、四時間で戦闘の決着はついた。
「やはり、魔法の使用の痕跡はありませんでしたね」
「これで無線の届く範囲に味方がいなければ
今回の結果を知らないままだろう」
「そうすれば時間が稼げますね」
「そうでした、ノア様、これを見て頂きますか?」
「ギュンター、これはどうしたんだ?」
「ユニコーン王国へ小麦を運ぶ貿易船が正体不明の航空機に投げ込まれた
手紙だそうです。なんでも国の要人に見て欲しいそうです
勿論、呪詛的な事も考えてコピーした物ですが」
なになに、国名は日本で発信者は内閣総理大臣ね。
食糧の緊急輸入を行いたいので各月の十五日に東京タワーの第二展望台で
夕方五時まで待つか。場所は貴国の都市エンジェルの南八百五十キロか。
「ギュンター、今日は何日だっけ?」
「六月十二日ですよ」
「悪いけど三日ほど厄介になるよ」
「構いませんが、何もないですよ」
「いいさ、軍艦だろう」
誰かな、今の総理大臣は?
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