第五十八話:海軍は君を待っている
十月の終わりに遂に十三型の戦闘機と爆撃機の廃棄処分が行われた
これで残存の稼働爆撃機は零型を抜くと十四型の四百四十機程度のみとなった。
「結局二型爆撃機は出来なかったか?」
「無理を言ってルッツ型戦闘機を改良してもらいましたからね」
「今攻められたら。防戦しか出来ないな」
「まあ兵士だけでもバルバロッサは二百万以上、ロアンも百万以上の
死者を出していますからあと一年は戦争は起きないと思いますが」
「既に大型機での特攻攻撃の破壊力を大国は身をもって思い知っただろう
あの飛行艇もどきで攻め込まれたらルッツ型だけでは対処は厳しいな」
「その時は不本意ですが、夏に発足したアレス航空機にフレア弾を満載して
敵国にぶつけるまでです」
「ルーカス型の民間航空機の製造は順調なのか?」
「はい、月に二機のペースで製造中です。西のルミエールから東の
イースタンの街まで給油を挟んでも僅か二十時間です
現在は二百人乗りの新型を開発中だそうです」
たとえプロペラ機でも国の最高機密だという事でヨハンの意見で他国への
国際便はないので国際便は船と飛行艇頼りだ。
「そろそろ、うちでも飛行艇を作れるんじゃないのか?」
「ダンの話だと去年レベルの飛行艇なら作れるそうですが費用で見ると
一機作るのにアレス航空の飛行機が十機は作れるそうです」
無駄に頑丈だったからな。
うちの航空機ならノア砲の一撃で確実に墜落するな。
さて書類の決裁をするか。
「ノア様、よろしいでしょうか?」
「ユリアン、どうしたんだい?」
「はい、トレミーから挿し木を輸入してセリーヌの近郊の魔道ハウスで
栽培していたブラックペッパーが一年半で遂に実をつけました」
「そうか、遂に必需食料品の完全自給の達成か!」
「これで来年以降は特殊な食料品以外の輸入は必要なくなります」
そうか、カレーのスパイスの全ては未だに国内では揃わないんだな。
カカオとコーヒー豆なんかも輸入頼りだな。
「よくやってくれた。冬は仕事のペースを落としてくれよ
また倒れられたら大変だ」
「承知しました」
二型爆撃機は出来なかったが、これでトレミーに対する依存度は激減したな
後は商業の活性化か。
「ノア様、リリーナ様が出産室に入られました」
「わかった、すぐに行く」
民間航空機を長男の名前から名前をルーカス型に命名したから
次は新型船舶かな?
遅い、既に六時間か。
「若君、少々時間がかかっているようですね」
「そうだな、既に九時間か……」
「オギャー、オギャー」
「おめでとうございます。三千四百グラムの元気な女の子ですよ」
「産まれたか!」
「おめでとうございます」
「リリーナ、でかした」
「でも女の子でしたよ」
「性別なんて関係ないよ」
「また頑張って産みますね」
「よし、名前はわたしの最初の領地から取ってクレアにしよう」
「クレア・フリーダム様ですか? 良い名前です」
うちの娘は嫁にはやらんと言う気持ちが少しは理解できそうだな。
ルーカスとは一歳違いだがシャルとミーアの娘とは同級生になるし
ニコの子供とは無理かな。
こちらでは一月生まれから十二月生まれまでが同じ年と認定されて
裕福な家は誕生日を祝うが新年に年を加算するのが決まりだ。
俺は一月生まれだから違和感はないが六月生まれだと年が加算されるまで
半年待つことになる感じだ。
「ノーラにも子供が生まれたし、ノアは二人目ね」
「ルーカスは最近はどうですか?」
「そうね、ミルクの量も減ったしそろそろオートミールから普通の食事に
変更すべきね。お豆腐と小骨の無い魚がいいかしら」
「アリスも子供を産むの?」
「まだ三年は先ね」
三年先でもまだ十三歳だけどね。
アリスとセーラも学院の二年生か。
一息入れるか。
「ノア様、このポスターを見てください」
「求む、海軍は君を待っている
悪くないがモデルの女の子は十二歳程度だろう?」
「ノーラ様のポスターの効果で空軍の女性比率は一気に三割を超えています
しかし海軍の女性は未だに一割を超えていません。ここは若年層に的を絞って
募集をかけようというアイデアです」
「マルコ、一度航海に出れば二ヶ月は帰って来れない海軍だと厳しくないか?」
「海軍は食費も空軍に負けていませんし女性乗組員は二人部屋ですよ」
ほとんど仕官待遇か。そこまで女性に飢えているとは。
「それでポスターを見せに来ただけじゃないんだろう?」
「はい、飛行士は十二歳以降になりますが、一般乗組員の最低年齢を
十歳に引き下げて頂きたくお願いに来ました」
小学校五年生に甲板で仕事をさせるのか。
「海の勤務は厳しくないか?」
「ノア様のように一月生まれなら実質的には十一歳です。航空機の整備などは
小さくて軽い人間の方が楽なんですよ」
「本人にやる気があって親が承諾するなら構わないぞ」
「そう言って頂けると思って既に別のポスターも用意済みです」
はっきり十歳以上と明記されてるじゃねえか
更に九歳で見習いとして雇うだと? 海軍はどれだけ女性に飢えてるんだ。
結局の所は軽くて優秀な飛行士を獲得したい空軍も九歳で見習いの十歳で
正式採用の海軍の案を採用して軍で技術的な教育をするらしい。
そして一週間後にユキさんが第一王子を出産したお祝いに国を挙げて
式典をするという事で俺とリリーナとヨハン夫妻に招待状が来た。
「以前とは活気が違いますね」
「長い戦争だったからな」
「陛下、それにヨハン様、奥様の身はこのギュンターが必ずお守り致します」
「頼むよ、私達は会議に行ってくるよ」
今回はヤンの提案で精鋭五百連れての二隻の飛行艇で訪問だ
指揮はギュンターで各国のトップに招待状がいっているらしい。
「この城を見るとそろそろフリーダムも防衛拠点を設けてもいいかと
思いますね」
「二型戦闘機じゃない。三型か四型が出来てからだな」
「ノア陛下並びにヨハン宰相、こちらの部屋へどうぞ」
「我が友よ、よく来てくれた。国のトップが来てくれたのは貴国だけだったよ」
「おめでとうございます。ミュラー陛下」
「ありがとう。友好国のロアン王国でも宰相だけだったよ」
「ロマノフ宰相もお久しぶりです」
「久しいな」
上座の二つはトレミー帝国として、席は全部で十六だから一カ国で
二つとして、ジュノー大陸の国にも全ての国に招待状を出したのか。
二つ席が空いているという事はどこか欠席した国があるのか?
「それでは会議を始めたい。議題は東大陸から来たメッセージの返答についてだ」
「東大陸からですか?」
「フリーダムは国土の全てに強力な転移結界を張っているから知らないのも
無理は無いね。十日前に映像によるメッセージがガイアとジュノー大陸に
届いたんだよ」
「当国はあんなでたらめな映像は信用出来ないな」
「うちもだ」
「我が国は技術班に研究させたが無理だと結論が出た」
「二百キロ離れた地点で大爆発を起こさせるなど無理だ」
「そもそも水中発射などとは信じられない」
「ノアがいるから説明するよ。東の連中は潜水艦という水中を進む船の開発に
成功したと言ってきているんだ。更に射程二百キロを超える水中から発射出来る
ミサイルの開発に成功して、実質的に防衛は不可能だと通告してきたんだ」
うちの空母でも使ってるハープーンミサイルに近いもしくは同等か。
それを対地攻撃用にした物か。
「メッセージはミサイルの映像だけだったんですか?」
「いや、海中を進む潜水艦に攻撃は不可能で我々が武装を放棄しなければ
無差別に街を焼くと通告してきたよ」
「我々はしばらくは静観する」
「わたしは無視していいと思う」
「僕は監視だけは必要だと思うよ」
「まあ、警戒だけはしても問題ないでしょう」
さて、うちには邪魔な対潜ヘリが八機あるが
生産は進んでるのかな?
「フリーダムも警戒だけは厳重にしましょう」
「今日欠席したという事はサントスの差し金でしょう」
「そう考えるべきだな」
「そうだ」
「ではどこかの国が水中から発射されたミサイルとやらで攻撃されたら
サントス領を共同で攻め込むという事で宜しいか?」
「賛成」
「異議はない」
「妥当だな」
「それで問題ありません」
「では会議は終了です。明日はパーティを楽しんで行って下さい」
国家間の会議に出るのはこれが初めてか
頭の硬い連中が多いな。
「ノア様、第零倉庫で誇りを被ってる機体を使う日が来たようですね」
「二機は開発工房だが四機を東へ出そう。当面は展開中の三号空母で
運用しよう」
「わかりました。つまり東大陸はディーゼルエンジンの開発にも成功
している訳ですね」
「そうなるな」
原子力だったらお手上げだ。
翌日は朝の八時からパレードが始まり、飛行艇百隻と銃で武装した兵士
二万人の行進だ。
「これって完全に軍事パレードね」
「飛行艇の増産と武装の近代化を国外にアピールしたいんだろう」
「それでは会場で食事を開始します」
「待ってました」
軽く二万人は入れる会場か
うちにも欲しいが今度は対潜装備に金がかかりそうだな。
輸送船を沈められたら溜まったもんじゃない。
「見て、天使アヒルの丸焼きが四千以上あるわよ」
「凄いですね、トレミー帝国はお金持ちです」
うちだって天使アヒルは四百万羽以上いるんだけどな
貴重な卵を五個も産んでくれる若いアヒルをそう簡単には食肉には回せないよ。
「あれって月光鳥の丸焼きじゃないの?」
「珍しいな、子供の頃にアレシアの祝いの席で見たのが最初で最後だったよ」
「さすがはガイア大陸で一番の大国ね」
月光鳥の味はA5和牛よりも美味しい天使アヒルの更に一段上を
行く味と言われているからな。俺も一切れしか食べた事がない。
「幸せ、一人で一羽食べたのは生まれて初めてよ」
「多すぎないか?」
「ノアの所にいるといつ食べられるか判らないでしょう」
「どうせだからチョコレートも頂こう」
「流石に本場ね。美味しいわ」
「そうですね」
酒は飲めないし対潜対策を練らないといけないので午後三時には
おいとまして飛行艇で国に戻った。
水中発射型のミサイルなんて考えるのは絶対に転生者だよな
対潜ヘリに哨戒機に駆逐艦か。それともレーダーにジャマーも必要か?
お読み頂きありがとうございます。




