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アイリスの事件簿  作者: 白雪刀花
探偵が進む道
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1/11

プロローグ「その名はアイリス・ホームズ」

これは両親を失った少女が復讐心と共に難題を解き明かし両親の仇に近づいていく推理系小説です


プロローグ

「その名はアイリス・ホームズ」

私は、とある男を追っている。

その男に復讐するために。

私には、恵まれた才能があった。

IQ400。

そして、人目を惹きつける美しい容姿。

普通ならば、それだけで十分すぎるほど恵まれた人生を送れただろう。

けれど――私にとって、この才能はただの道具に過ぎない。

復讐するためなら、使えるものは何でも使う。

その男の名は――。

「コードネーム……M」

闇社会の頂点に君臨する男。

犯罪組織の裏側で暗躍し、数え切れないほどの人間を踏み台にしてきた存在。

そして、私の両親を殺した男。

私は探偵という立場を利用して、推理によってMを追っている。

いつか必ず――この手で裁くために。

私の父と母は、このノートン探偵事務所で働いていた。

二人は、この事務所の前任者であり、かつて「名探偵」と呼ばれたゲーラ・ノートンの助手だった。

ゲーラおじさんが引退する際、父と母にある依頼を任せた。

それは、二人に探偵として独立してもらうための最後の仕事だった。

――私が、まだ六歳だった頃の話だ。

その依頼が、すべての始まりだった。

私は、この目で見た。

父が殺されるところを。

そして――母が殺されるところを。

目の前にいたのは、一人の大男。

コードネームM。

父と母は、私を守ろうとした。

けれど、子供だった私には何もできなかった。

ただ、震えながらその光景を見ていることしかできなかった。

やがて母は、最後の力を振り絞るように私を抱きしめた。

温かかった。

あの優しい母の腕の中は、いつもと変わらないはずだった。

けれど――。

母の瞳には涙が浮かんでいた。

そして、その瞳から光が消えていった。

「……お母さん?」

返事はなかった。

Mはそんな私を嘲笑うように見つめると、何事もなかったかのようにその場を去っていった。

私は、その後数日間、自分の部屋から出ることができなかった。

何も考えられなかった。

何もしたくなかった。

ただ、母の最後の表情だけが頭から離れなかった。

――どうして。

――どうして私のお父さんとお母さんが。

――どうして私は何もできなかったの。

そんな疑問を抱えたまま、私はある決意をした。

私は、ゲーラおじさんのもとを訪ねた。

そして――。

「私を、弟子にしてください」

これが、私の人生を変えた一言だった。

復讐するためだけじゃない。

もう二度と、こんな苦しい思いを誰にもしてほしくない。

大切な人を目の前で失う悲しみを、誰にも味わってほしくない。

だから――。

「私を弟子にしてください。探偵になって……必ずMを裁いてみせる」

ゲーラおじさんは、しばらく黙って私を見つめていた。

そして、その隣には一人の女の子がいた。

私と同じくらいの年齢。

ツインテールの髪を揺らしながら、こちらをじっと見つめている。

彼女の名前は――リリア・ノートン。

ゲーラおじさんの孫娘だった。

そして、後に私の最大の相棒となる女の子。

ただし――出会ったばかりの頃の彼女は、今とは少し違っていた。

「あなたに探偵は無理」

開口一番、そう言い放った。

「私の助手としてなら、雇ってあげてもいいよ」

なんとも偉そうな女の子だった。

まあ、無理もない。

何せ彼女は、「名探偵」と呼ばれたゲーラおじさんの孫なのだから。

けれど――私は負けるつもりなどなかった。

「私があなたの助手? なるわけないでしょ」

「なっ……!」

「見たところ脳筋みたいだし。戦ってもいない相手を見下すのは良くないわよ」

「の、脳筋!?」

リリアの顔が引きつった。

私はさらに続ける。

「そもそも、あなたが私より上だという根拠は?」

「え?」

「勉強。運動。推理力。空間把握能力。他にもいろいろあるけど……あなたは、その全部において私より優秀だと言えるの?」

「……!」

今思えば、とても六歳児同士の会話とは思えない。

けれど、当時の私は本気だった。

そしてリリアも、引くつもりはなかった。

そんな私たちを見て、ゲーラおじさんは大笑いした。

「はっはっは! なるほどな!」

そして、私たち二人を交互に見ながら言った。

「なら、二人で勝負だな」

「勝負?」

「そうだ。どちらが探偵になるのか――どちらが助手になるのか」

ゲーラおじさんは楽しそうに笑った。

「これからのお前たちが、どこまで成長するのか……見ものだな」

それから私たちは、たくさんの依頼を受けた。

猫の捜索。

迷子のペット探し。

ちょっとした人探し。

失くし物の捜索。

危険性の低い依頼ばかりだった。

最初は何かあるたびに言い争っていた。

推理で競い。

依頼の解決速度で競い。

どちらが多くの情報を集められるかで競い。

時には、くだらないことで喧嘩もした。

けれど――。

いつの間にか、私たちは互いのことを理解するようになっていた。

そして、九年の月日が流れた。

私たちは、日本にあるノートン探偵事務所にいた。

目の前にいるのは、かつて私たちを導いてくれたゲーラおじさん。

彼は、満足そうに笑っていた。

「アイリスの勝ちだな」

私は黙って彼を見る。

「これから、この探偵事務所はアイリス、お前のものだ」

そして、少し考えるような仕草をしてから続けた。

「……事務所の名前も変えるか?」

私は、迷わず首を横に振った。

「いいえ」

「ほう?」

「私には、ゲーラおじさんへの恩がありますから」

そして、隣に立つ少女を見る。

そこには、昔と変わらないリリアの姿があった。

「それに――私には、リリアがいます」

リリアが少し驚いたように私を見る。

私は微笑んだ。

「だから、事務所の名前はこのままで構いません」

そして私は、胸を張って名乗った。

「私は――ノートン探偵事務所二代目」

「アイリス・ホームズです」

――こうして。

一人の少女と、一人の助手による物語が始まった。

数々の事件。

数々の謎。

そして――闇社会の頂点に立つ男、コードネームM。

これは、両親を奪われた少女が、探偵として成長していく物語。

復讐のために始めた推理は、やがて多くの人々を救う力へと変わっていく。

名探偵を目指す少女と、その隣に立つ助手。

二人の名前は――。

アイリス・ホームズと、リリア・ノートン。

これからもよろしくお願いします

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