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第3話 『風呂という名の公開処刑』

「次の調査よ」


 看守長の一言で、俺は連行された。


「……なんか嫌な予感しかしないんだけど」


「いいことよ」


「その言い方やめろ」


 案内された先。


 そこは——


「……いや待て」


 湯気が立ち込めている。


 石造りの広い空間。


 水音。


 そして——


 複数の女の声。


「ここって」


「浴場よ」


「だよな!?」


 思わず叫んだ。


「なんでここに俺連れてきた!?」


「生活環境の観察」


「観察の内容がおかしい!」


 だがその時——


「ねぇ看守長〜」


 奥から声がした。


 振り向くと、


 タオル姿の女たちがこちらを見ていた。


「……誰?」


「新入り?」


「……え?」


 一瞬の静寂。


 そして——


「え、ちょっと待って」


「その体格……」


「まさか——」


 全員の視線が、俺に集まる。


 まずい。


 めちゃくちゃまずい。


「男よ」


 看守長があっさり言った。


「え?」


「え?」


「ええええ!?」


 一斉に騒ぎ出す。


「本物!?」


「初めて見た!」


「ちょっと近くで見ていい!?」


「いやダメに決まってるだろ!?」


 だが誰も止まらない。


 近い。


 距離が近すぎる。


「ちょっと待て待て待て!」


「触っていい?」


「ダメ!!」


「なんで?」


「なんででもダメ!!」


 混乱の中——


 ぐいっと腕を引かれた。


「逃げるわよ」


「え?」


 銀髪の女騎士だった。


 そのまま、浴場の端へ引っ張られる。


「な、なんだよ」


「ここにいたら危険です」


「今さら!?」


 だが彼女の顔は真剣だった。


「……正直、分かります」


「何が」


「落ち着かないんです」


「お前もか!」


 騎士は一歩近づく。


 距離が、またおかしい。


「見てると……変な感じになる」


「だから近づくなって!」


「確認したいんです」


「何を!?」


「本当に存在してるのか」


「してるわ!!」


 その時——


「逃げるなんてずるいわね」


 背後から声。


 看守長だ。


「全員に平等に観察させなさい」


「させるな!!」


 完全に包囲された。


 浴場の中で。


 美女たちに。


「どうするの?」


「どうもこうもない!」


 視線。


 興味。


 好奇心。


 全部が俺に向いている。


 そして——


 誰も“遠慮”という概念を持っていない。


「……無理だ」


「何が?」


「俺の理性が」


 看守長が笑う。


「いいデータね」


「データにするな!!」



 その日、俺は学んだ。


 この島には——


 “距離を保つ文化”が存在しない。


 そして俺は——


 そのど真ん中に放り込まれた。



 逃げ場はない。


 助けもない。


 あるのはただ——


 距離感のバグった美女たちだけ。


 ……これ、ほんとに生きていけるのか?

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