第1話 『唯一の男、収監される』
目を覚ました瞬間、俺は絶望した。
——周囲、全員女だった。
「……は?」
石造りの天井。鉄格子。重い空気。
どう見てもここは、牢屋だ。
いや、それよりも問題なのは——
「ちょっとアンタ」
目の前に立つ女。
銀髪。長身。鎧姿。
どう見ても騎士だ。
そして——めちゃくちゃ美人。
「な、なんで男がここにいるのよ」
「それ俺が聞きたいんだけど!?」
周囲を見渡す。
他の牢にも人影がある。
……全部、女。
「まさか……」
騎士は目を見開いた。
「“男”が存在するなんて……伝承レベルよ」
「いや俺普通に生きてたけど!?」
「嘘よ。男はとっくに絶滅したはず」
いや、どんな世界だよ。
頭がおかしくなりそうだ。
その時——
ガチャリ。
重い扉が開いた。
「騒がしいわね」
現れたのは、黒髪の女。
スーツのような服装。
そして——圧倒的な色気。
「看守長」
騎士が敬礼する。
看守長は俺を見て、固まった。
「……へぇ」
ゆっくりと、近づいてくる。
俺の顔を覗き込む。
近い。近すぎる。
……めちゃくちゃいい匂いするんだけど。
「これが“男”?」
「ちょ、近いって!」
「興味深いわね」
そう言って——
いきなり胸を押し当ててきた。
「!?!?!?」
「体格差、筋肉量……なるほど」
「なに分析してんの!?」
柔らかい。
ヤバい。
状況が理解できないのに、体が反応してしまう。
「反応してるわね」
「するに決まってるだろ!?」
「やっぱりそういう生態なのね」
ニヤリと笑う。
完全に遊ばれてる。
「決めたわ」
看守長は言った。
「この男、処分しない」
「え?」
「国家に報告する」
「ちょっと待て」
嫌な予感しかしない。
「貴方、貴重な資源よ」
「資源?」
「この島における、唯一の“男”」
背筋が凍る。
「……どういう意味だよ」
看守長は微笑んだ。
とても美しくて——
そして、とても危険な笑みだった。
「これから、毎日“調査”させてもらうわ」
「……は?」
「安心しなさい」
耳元で囁かれる。
「優しくするとは、限らないけど」
「待て待て待て待て!!」
俺は叫んだ。
だがその声は、誰にも止められなかった。
——こうして俺は、
女しかいない監獄島で、
唯一の男として飼われることになった。




