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異世界転移するも"ただの人"だった私、掘っ建て小屋で神官に監視されてます  作者: 君影想


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7 王国の皆には内緒だよ☆



「えっと、つまりあなたは転移者ではなく…転生者??」


 霜月宙__ことニフリナは私のその言葉にニコニコと笑って頷いた。


「そう。ジブンもびっくりしたわ~。気づいたらこんな世界にいて、しかも王族ってね」


 彼女は日本からの"転生者"。ゆえに、見た目は外国人の"ニフリナ"、でも魂は日本人の"霜月宙"。

 そしてこの国を支配する王の一族たる”リンドローゼ家”の末端。彼らは竜の王、そして白鳥の王子の血を引く一族だと言う。

 "白鳥の一族"というワードに、明らかに質問したい顔をしたらしい私にニフリナは「それはまた今度。今はもっと楽しい話しよ?」と悪戯っぽく笑い、自身の唇の前に人差し指を立てた。


 正直、ニフリナの話は信じられるようなものではない。死んだと思ったら姿形が変わってこの国で生まれ直しただなんて。…が、私もこの世界に気づいたら転移しているので、私が言えた話ではない。

 というか、日本への理解度・解像度から信じざるを得ないし。


「えと…二フリナ、様?」

「様とかいらな~い。もちろん敬語もねぇ。王族だけど端っこの方だし。というか、せっかくなんだから二人のときはソラって呼んでよぉ。あ、そういえばいつ生まれ?たぶん近いよね?」

「え?9月18日?」

「んもう~そうじゃなくっていつの年の生まれか、ってこと。あ、ジブンは平成15年なんだけど~」

「…え、本当に!!?私も!!!」


 ぺらぺらぺらぺらと怒涛の勢いで話しかけられて、半ば聞き流していたが、聞き覚えがありすぎる年号と数字が聞こえてきて思わず反応する。


「あ、やっぱ?同じくらいかとは思ってたけど、年まで一緒だったんだ」

「うん!うん!!え、羊年?羊年だよね?」

「ジブンも早生まれじゃないからがちがちの同学年だね。…あ、ちなトキコっちってMBTIはなに?」

「え~、唐突だなぁ。ちなみに、なんだと思う?」


 あまりにも久しぶりの、「同級生」との会話に私は一瞬で夢中になった。

 昔見てたアニメやらテレビの話、好きな漫画の話…ふざけてピラメキダンスを一緒に踊った時はなんか…色んな意味で泣きそうになった。

 正直、宙みたいなタイプの人間と現代で会った際に心の底から仲良くなれるかは若干怪しい。しかし、ここの世界にはたった一人の同級生で、唯一私の常識が通じる本当の仲間だ。


「ねぇ、転生ってどんな感じなの?」

「えぇ、うーん。むずかしーな。"死んだ!”と思ったら、ふと目覚めたら”二フリナ(19歳)”になってたみたいな。二フリナとして19歳まで生きてた記憶もあるんだけどさ。なんだろ?もしかしたら転生っていうより乗っ取りなのかも?」

「こわ。悪霊じゃん」

「しつれーなヤツぅ~。ジブンそんな悪い存在じゃないもん。元はただの大学生だったし。…逆に転移ってどんな感じなの?」

「杏仁豆腐食べてたと思ったら人の髪食べてて、ここいいた」

「は?意味わかんないんですけど~~」


 そういってギャハギャハと笑だす宙につられて私も思わず笑いだす。

 これまでこのちょっと面白いだけでなんの価値も意味もない私の異世界転移を、笑ってくれる人も、悲しんでくれる人も誰もいなかった。それどころか杏仁豆腐がなんなのかすらわかってくれる人もいなかった。

 そうか。どうやら、私はずっとこれを誰かに話したくて、笑い飛ばしてしまいたくて仕方なかったらしい。


「ねぇ、さ」


 しゃべってしゃべってしゃべって、気づいたら日が暮れていた。

 外をみて、「あ、やべ」と呟いた宙に思わず声をかけてしまう。明確な言葉は決まってなかったけど、伝えたいこと…求めていることはただ一つだった。

 そして、そんな私に宙は目を細めて「ぜったい思ってることおそろだわ~」と笑う。


「え、あ、本当?…また会いたいって__宙も思ってくれてるの?」


 言い終わった後に、なんだか恥ずかしくなる。

 こんなこと、こんな風に言うつもりじゃなかった。


「あたりまえじゃ~ん。またはなそ~」


 宙になんて返されるのか不安になる前に、そんな言葉が返ってきて思わずホッとする。

 そんな私をにやにやと眺めながら「んじゃ」と手を上げる宙に、「見送るよ」と声をかける。

 玄関まで行くと、宙は「危ない危ない、忘れてた」と突然立ち止まり私の方を振り返った。


「あのさ、ジブンのことなんだけど…ラウズトラニにはヒミツにしてもらっていーい?」

「ラウズトラニって…トラニ様のこと?」

「そうそう」

「えっ…いや、いいけど…なんで?」

「まぁまぁ__ね?色々あってさ。よろしくお願いしたいんだわぁ。別にラウズトラニに限らず、王国の皆には内緒だよ☆って感じなんだけど。今のところは二人だけの秘密にさせて欲しいんだわ」


 突然アニメ声になった"王国の皆には内緒"云々のところは、たぶん某魔法少女のセリフをもじって言っているのだと思う。が、あまりにも色々雑すぎる。このセリフを言ってみたかったから、この提案をしているのではないかとすら思える。

 ただ、両手を合わせて小首を傾げながら「ね?」と繰り返し懇願してくる宙の願いを、断るべき大きな理由も思い当たらず私は首を縦にふった。

 …個人的にはトラニ様に嘘をつくのはあまり気が進まない。

 しかし、どうしてもというほどではないので、宙がそう望むのならばという感じだ。


「ありがと!本当に助かるよぉ」


 明らかに気が進んでいなさそうな私のことは気にせず、宙はご機嫌そうだ。


「じゃあ、魔術をかけてあげよう。大丈夫。これで君の嘘は秘匿される」


 そう言って宙は私の瞳を覗き込む。

 宙って魔法使えたんだ、なんて思考は水色と金でグルグルと回る宙の眼を前にして消えていく。

 脳に直接さわられて、なにかを刻まれているような、でもすごくすごく気持ちがいい。

 

  __一生この瞳を見ていたい。



 あれ、わたし、わ、わ、わ、わたし…えっと、ええと…


「は~い。おしまい」


 そう言われても未だ宙の瞳を見つめ続ける私のことを、宙はギュッと抱きしめた。

 体温が低いらしい宙の腕の中は所々骨ばっているところはあるが、しなやかな筋肉のついており、心地が良い。

 私の身体はいつの間にか震えていたらしい。そのことに、抱きしめられて遅ればせながら自覚する。だが、宙に優しく頭を撫でられ少しずつ落ち着いていく。

 

 震えが止まると、宙は私からゆっくりと身体を離した。

 そのことに、思わず「寂しい」なんて思ってしまい恥ずかしくなる。

 でも、だって、あっちの世界にいた時は、友達だとか母親だとかにふとした時にくっついていたのだ。それが心地よかったし、好きだった。こっちに来てからは誰かと触れあうどころか話すことも難しくなって…


「…じゃあね~」


 私は、私が行ってもいいとされるギリギリの範囲まで宙としゃべりながら歩いて、別れてからはその姿が遠く消えてしまうまで全力で手を振り続け、「またね!!!」となんども声をかけ続けた。

 声をかけると毎回宙は律儀に振り返って、その度に宙に笑われたけど、でもそれも面白いし嬉しかった。




2話や今回の話で出てくる"震え"については、同じ"ものがたり"シリーズの『来世はお姫様になりたい!~異世界転移なんてうまくいくわけがナッシング!~』でも触れられていますので、ご興味がある方はぜひm(__)m

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