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異世界転移するも"ただの人"だった私、掘っ建て小屋で神官に監視されてます  作者: 君影想


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11/11

11 トキコはかわいいね



「おい~!ジブンの話をもっとちゃんと聞け~!」


 宙はベッドに寝転がった状態のまま、ベッドの端に腰かけていた私の腰を両手でホールドすると、そのままベッドの上に私のことも倒そうとしてくる。

 一応抵抗してみるが、こんなのはいつものプロレスなのでしばらくわちゃわちゃした後に力を抜いて、あえて宙の上に倒れる。


「上に乗らないでくださ~い」

「しかけたのは宙なんだから我慢してくださーい」

「重いで~す」

「なに?デブっていいたいの?」

「ヒスらないでくださ~い」

「私にごはん一生食べるなって言いたいんでしょ!!そのまま死んじゃえばいいと思ってるんだ!わかりました!私もう絶食するから!!!」


 私の言葉を聞くと、途端にげらげらと宙が頭の下で笑い出す。

 つられて私も笑うと、より笑いが止まらなくなったらしく身体をジタバタさせながらヒーヒー言っている。


 そのまま二人でしばらく笑ったのち、二人とも疲れてきたのか笑いが「ムフフ」だとか忍ぶようなものになり、それが逆に面白くてまた笑ったりもしながら段々と落ち着いていく。

 そしてやがて、なんとも心地良い沈黙が部屋に満ちる。

 笑いすぎて体温が上がったのか、いつも宙からする甘いお菓子のような甘い香りがふわりと、いつもより濃厚に立ち上がってくる。


 ゴロンと身体の向きを変えて宙の隣に身体を横たえると、淡い水色の瞳と視線がぶつかる。

 なんとなく手を伸ばしてみると宙は眉を下げてクスっと笑うと、同じく手を伸ばし私と手を繋いでくれる。指と指の間の皮膚の薄いところに、宙の指が触れて少しくすぐったい。


「そういえば、ジブンのことちゃんと黙っててくれたみたいだね。ありがと」

「…あたりまえじゃん」

「トラニ、どうだった?」

「なにか察してるみたいだったけど、深く突っ込んで聞かれることはなかった」

「…へぇ~」


 宙の瞳が星のように煌めき、口元は夜の空を切り裂く三日月の形を描く。

 繋がれた手には先ほどより力がこもり、空いている宙のもう片方の手が私の頬に添えられる。


「アイツ、なに考えてるんだろうね」

「さぁ?でもトラニ様のことだから、気づかないふりしてくれたんだと思う」

「…トキコはかわいいねぇ。トキコみたいな子大好き」


 より笑顔を深めた宙は、私と繋いだ手をほどき両手で私の頬を包む。

 そして、その黄金の蝶の羽のような睫毛が私の顔に触れてしまいそうなほどの距離感で、私を上目遣いで見つめる。


 …宙が、なにを考えているのかよくわからない。

 私をからかって、いつもみたいに遊んでいるのだろうか?

 大好きだとか大嫌いだとか、いつも軽口のように言い合うけど…


「ねぇ、私のために嘘つくのはつらかった?」

「宙のためだから仕方ないとは思ったけど、でも…楽しくはなかったかな」

「そっかぁ。かわいい~…」


 日本人がやるには不自然なくらいにごくごく自然な動作で、宙は私の鼻の上に口づけを落とす。


「そのかわいさに免じて、ジブンのこと話すことを許しちゃおっかなぁ」 

「えっ」


 これは、まさに今日宙にお願いしようとしていたことだった。

 前回のアレだけでも心苦しかったのだ。できることなら、普通に宙のことも話したい。


「ただし、二フリナって名前は出さないんで欲しいんだわ。たまたまこの小屋に迷いこんで来た友人の…そうだな、エルギ…はさすがにやりすぎか。うーん、普通に東洋の国からやってきたソラさんとの話ってことにして。ソラさんは…まぁ、東方の国からやってきた使用人ってことでいっか。転生者ってこともモチロンヒミツ。それでもいいなら、これからはジブンのこと話していーよぉ」

「えっ、いいの!?」

「いいっていってるじゃ~ん笑 さすがに一人でリスク背負わせるの酷いかなぁって思ってさぁ」

「わ、ありがとう!!!よかった!!ずっとドキドキしてたからさ!!助かるよ!!!」


 ここのところ胸の中のかなりの割合を占めていた憂鬱事項が、私から言い出さずとも解決しそうな気配に一気に心が晴れる。

 多少は嘘をつく必要があるみたいだが、この程度だったら大したものではない。

 でもよく考えてみれば、私が宙に協力していたのだから、私から宙にお礼を言う理由などないのだが、ありがたいことには間違いない。

 

「なんかあったら言ってねぇ。ジブンはこれまで通り、2日に1回…トラニが来ない方の日に来るから」

「なんかミスって鉢合わせたら面白いのに」

「事故すぎて笑う」

「私も絶対に笑う」


 宙と私はしばらくくだらないやり取りをした後、「じゃあ、そろそろ」「帰るね」というやり取りをしては全然関係ない話で盛り上がるという流れを4回くらい繰り返して、5回目の「じゃあ」でようやくその日は別れた。




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