第5話 初めてのドラゴン創造
平日が過ぎ、土曜日の朝。
家で朝食を食べ、支度をしてすぐに真那ちゃんの家のコンテナハウスに集まる。
真那ちゃんのお母さんは土曜出勤で不在らしいので秘密基地を作るなら今日しかない。
いよいよ念願の秘密基地作成に取り掛かる。
まずは作業の邪魔にならないようにコンテナハウスの中にある物をできるだけ外に運んだ。
元々コンテナハウスには物はあまり置いていなかったのですぐに終わり、次は俺だけにしか出来ない大仕事だった。
「初めてのドラゴン創造か……」
秘密基地を作ってもらうためにマスタードラゴンから与えられた俺が望むドラゴンを生み出せる100枚の魔法のカード。
そのカードを使って今回は5体のドラゴンを生み出す予定だ。
『千歳、やり方は全て教えた。後はぶっつけ本番、とにかくやってみるんだ。もしもの時は私がフォローする』
「分かった……アウェイキング!」
竜の指輪を魔法の杖……《創世の魔杖》に変化させる。
ちなみにこの創世の魔杖と言う名は真那ちゃんが考えてくれた。
魔法の杖と魔法のカードはマスタードラゴンから自分で名前をつけろと言われていたが、思い浮かばなかったのもあるが名前を決めてないと真那ちゃんが知った時はものすごい形相で……。
「ダメだよ!ちゃんと杖とカードに名前をつけないと!名前は魔法使いにとって、とても大切なものなんだから!」
ファンタジー作家を目指す真那ちゃんにとって杖とカードに名前が付いてないのは見過ごせないらしい。
名前をつけるにしても俺はネーミングセンスがイマイチだと自覚しているので真那ちゃんに命名をお願いしてもらった。
杖とカードもどちらもマスタードラゴン由来の物なので、《創世》と《マスター》の名前を付けたものになった。
「マスター、カードを」
『ああ。とりあえず、5枚だな』
マスタードラゴンが魔法のカードを5枚取り出して俺に向かって投げる。
するとカードはマスタードラゴンとは別に自らの意思を持つように俺の周りをフワフワと浮かぶ。
「千歳君、頑張って!」
「うん、ありがとう」
真那ちゃんからの声援を受け、心を静かに落ち着かせて創世の魔杖を両手で持つ。
精神を杖に向けて集中させると足元に魔法陣が浮かぶ。
「創世の力が宿りし百の竜の子よ、我が想いと夢を体と力に変え、優しき心を宿せ!我が魂の祈りより、今ここに目覚めよ!インカーネーション!」
マスタードラゴンと一緒に考えた呪文を唱えると魔法陣の光が強くなり、俺の全身から金色の魔力が溢れ出し、創世の魔杖を5枚のカードに向ける。
「行くぞ……《創世の百竜》!!」
創世の魔杖と共に名付けられた100枚のドラゴンのカード……創世の百竜。
創世の百竜からドラゴンを創造するために必要なのはマスタードラゴンが最初から言っていた魔法を使用するのに重要な空想力だ。
俺がどんなドラゴンを創りたいか……この一週間ほどで取り戻した空想力を膨らませ、理想のドラゴンを創造する。
カードが光り輝くと少しずつドラゴンの形に変化していく。
ドラゴンの姿形をイメージすると同時にドラゴンの名前を命名する。
「空間を操り、統べる竜!《No.11 スペースドラゴン》!!」
渦巻き模様が描かれた体に小さなパズルのキューブを持ったドラゴン。
「物を建て、築き、作り上げる竜!《No.12 ビルドドラゴン》!」
頭に小さな黄色のヘルメットを被り、背丈と同じぐらいの大きな木槌を担ぎ、背中に沢山の工具が入った籠を背負ったドラゴン。
「命の育む樹木の竜!《No.13 ツリードラゴン》!」
葉っぱの翼を持ち、背中に小さいが立派な木が生えているドラゴン。
「不変にして安らぎの岩石の竜!《No.14 ストーンドラゴン》!」
全身が岩石で覆われ、所々に煌びやかな宝石が埋められたドラゴン。
「輝きと発展の金属の竜!《No.15メタルドラゴン》!」
全身の鱗が頑丈でキラキラと輝く金属になっているドラゴン。
5体のドラゴンが無事に誕生し、初めて感じる不思議な達成感を得た。
「で、出来た……」
『おお、一発成功とはやるじゃないか。見事、百点満点だ!』
「わぁ!みんなどれも個性的で可愛い!」
マスタードラゴンは初めてのドラゴン創造を褒めてくれて、真那ちゃんは5体のドラゴン達にメロメロだった。
ひとまず5体のドラゴンが無事に誕生してくれてホッと一息つくと、マスタードラゴンが近づいて尋ねてきた。
『ところで千歳、体に不調は無いか?』
「不調……初めてのドラゴン創造でちょっと疲れたかな。魔力をどれぐらい使ったか分からないけど」
『……末恐ろしいな』
「何が?」
『いや、何でもない。千歳、ドラゴン達に指示を出すんだ』
「分かった」
俺は三人で話し合い、こんな風な秘密基地を作りたいと言う設計図みたいな紙を取り出してドラゴン達に見せる。
「こんな感じの秘密基地を作りたいんだ。頼むよ」
設計図をじっと見つめるドラゴン達。
そんな中、最初に動き出したのはスペースドラゴンだった。
『グルッ』
両手に持ったパズルのキューブを回転させて動かしていくとコンテナハウスの奥の空間が歪みだし、やがて黒色の渦巻き模様の空間が生まれた。
スペースドラゴンは俺達に向かって手を向けてハンドサインで待つように意思を示すと、そのまま渦巻き模様の空間の中に入り込んだ。
『スペースドラゴンは秘密基地に必要な空間を作っているんだ。時間はそう掛からないだろう』
マスタードラゴンがスペースドラゴンが何をしているのかと説明する。
すると今度はビルドドラゴン、ツリードラゴン、ストーンドラゴン、メタルドラゴンの4体のドラゴンが動き出した。
ツリードラゴンは背中の大樹から木材、ストーンドラゴンは全身を覆う岩石から石材、メタルドラゴンは金属の鱗から金属材料を次々と出していく。
この3体のドラゴンは秘密基地を作る際に必要な材料を無限に生み出してくれる。
生み出された材料をビルドドラゴンが木槌や籠に入った工具を使って大まかにカットしていき、そこから更に加工して仕上げていく。
材料を次々と加工していくの速さは凄まじく、あまりの速さにビルドドラゴンの分身が何体も見えるほどだった。
加工が完了した材料をビルドドラゴンは渦巻き模様の空間に合わせるように置いていく。
まるで子供が積み木を置くように次々と材料を置いていき、最後に金具でしっかりと固定していく。
本来なら数ヶ月かかってもおかしくない石材で出来た門と木材で出来た扉があっという間に完成した。
しかもただの門と扉ではなく、ビルドドラゴンが工具を使って石の門に見事なドラゴンの彫刻を掘り、更に金属で装飾を作ってそれを扉に打ち込んだ。
「出来ちゃったよ……見事な門と扉が……」
「これが、マスタードラゴンさんの力……創世の百竜の実力……」
自分の魔力と空想力から生まれたドラゴンとは言え、ここまで凄いとは思いもよらなかったので唖然となって口が空いたままになってしまった。
『何言ってるんだ。こんなのはまだ序の口だぞ』
「「え?」」
ガチャ!
すると、出来たばかりの扉が開くと、中から出てきたのはスペースドラゴンだった。
『グルルッ!』
『『『『グリュー!』』』』
スペースドラゴンはドヤ顔でグッドサインをすると、ビルドドラゴン達は頷いて渦巻き模様の空間の中に飛び込んでいく。
『仕事が終わった、とスペースドラゴンが言っている』
「空間を広げ終えたってこと?」
『グルグル!』
スペースドラゴンは頷いてから目を閉じると、体が光ってカードの姿になり、俺の元に飛んだ。
「えっと……仕事が終わったからカードに戻ったのか?」
『創世の百竜のドラゴン達がカードに入っている時は基本眠っているような状態なんだ。生まれたばかりで大仕事をしたから疲れたんだろう』
「そっか……ありがとう、スペースドラゴン」
聞こえているかどうか分からないけど、頑張ってくれたスペースドラゴンに感謝の気持ちを伝えてカードを指で撫でた。
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