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第1話 創世の竜、マスタードラゴン

十歳の誕生日、海外で暮らす爺ちゃんから送られてきた大きな段ボールの荷物。


中に何が入っているか分からないが、誕生日プレゼントなので期待してしまう。


段ボールの封を切り、中に入っていたプレゼントは……。


『やあ、初めまして。今日から君の教育係になった《創世の竜》こと、《マスタードラゴン》だ。私のことはマスターか、先生と呼んでくれたまえ』


「……ドラゴン?」


偉そうな態度を取る小さなドラゴンだった。


体は黒に近い紫色でとても綺麗で眼の色は前に学校の授業で見た黒曜石のように輝いていた。


ドラゴンは世界で最高にして最強の生物と言われる人気の幻獣だ。


もちろん小学生の俺でもドラゴンは憧れの存在ではあるのだが、目の前にいるこのドラゴンに対しては憧れというよりも胡散臭さが感じ取れる。


とりあえずこの自称教育係のマスタードラゴンを持ち上げて……。


『お?いきなり私を持ち上げてモフモフか?良いだろう、思いっきりこのキュートなボディを存分に抱きしめるが──』


「クーリングオフって出来るかな?」


爺ちゃんに送り返すためにこいつが入っていた段ボールの中に入れよう。


『まさかの返品!?ファーストコンタクト失敗!?私、何かやらかした!?ま、待つんだ、龍宮千歳たつみやちとせ君!』


龍宮千歳、それが俺の名前だ。


胡散臭いドラゴンを送り返そうと思ったが、当の本人ドラゴンは大慌てをして説明をし始める。


『私は本当に君の教育係として、君の祖父、アルフレッドから送られてきたんだ!!』


俺の爺ちゃん……アルフレッド・サードラゴン。


生粋のイギリス人だが、若い頃に日本人の婆ちゃんと出会って一目惚れをして結婚した。


爺ちゃんと婆ちゃんの間に生まれた父さんはイギリス人と日本人のハーフで、母さんは日本人。


つまり俺はイギリス人のクォーターという事になる。


ちなみに龍宮の苗字は婆ちゃんので父さんが日本で暮らすためにそちらを名乗るようになったらしい。


まあ、それはさておき、マスタードラゴンを机の上に置くと俺は椅子に座ってジト目で見つめながら聞く。


「教育係って……俺、こう見えても成績優秀なんだけどな……」


自慢ってほどじゃないけど、偉大な爺ちゃんに負けないように勉強は頑張って優秀な成績を収めている。


家庭教師も塾も必要ないぐらい自分で勉強しているからイマイチ教育係の必要性を感じられない。


『君が頭脳明晰で成績優秀なのは知っている。アルフレッドから君の自慢話を死ぬほど聞かされているからな』


マスタードラゴンはその時のことを思い出したのかげっそりとした表情を見せた。


「じ、爺ちゃん……」


爺ちゃんはいわゆるジジバカで他人に孫自慢をするほど俺のことを愛している。


恥ずかしいから孫自慢を止めて欲しいと何度もお願いしていたのだが、どうやら無駄だったようだ。


『私が君に教えるのは人間が教えている勉学ではない』


「じゃあ何を?」


『魔法だ』


「魔法?」


魔法……それは人間の体に宿る魔力と呼ばれる不思議な力を使って発動する奇跡の術。


魔法は昔は禁忌の力と言われて魔法使いや魔女が迫害されていた歴史もあったが、今は世界中で科学と同様に当たり前の技術の一つとして認知されている。


ちなみに俺の爺ちゃんは世界最高クラスの魔法使いで《大賢者》と呼ばれるほどの実力者だ。


そんな大賢者である爺ちゃんの事を尊敬しているが、唯一のコンプレックスがあった。


「それは無理だよ。だって俺は魔力無いし」


大賢者の孫である俺には魔力が無い。


実は魔法使いや魔女の子孫に必ず魔力が受け継がれるわけではないのだ。


もちろん偉大な魔法使いや魔女の子供に遺伝で魔力が受け継がれているケースがあるが、魔力が宿るのは恵まれた幸運や才能と言っても過言では無いと言われている。


だから、大賢者の孫である俺が魔力が無くて魔法が使えないことはショックだったし、大泣きしたことも覚えている。


『それなんだが……あー、私の口よりもアルフレッドの言葉の方がいいか。待ってろ、確か一緒に手紙が入っていたはず……』


マスタードラゴンは自分が入っていた段ボールの中を漁り、何かを探し始めた。


『お、あったあった。アルフレッドからの手紙だ。ここに君の知りたいことが書かれている』


そう言って俺に渡してきたのは爺ちゃんを象徴するドラゴンの紋章による封蝋がされた手紙だった。


「手紙?直接話したいならテレビ電話でも良いじゃん」


『それがそうもいかないんだ。何せアルフレッドは知っての通り、超有名人だからな。犯罪者や馬鹿どもに盗聴される恐れがある』


「そういうことね」


爺ちゃんの魔法使いとしての地位や力を狙う人間は少なからずいる。


俺も何年か前に爺ちゃんを脅迫するため、犯罪者に誘拐されかけた時があった。


その時は幸い爺ちゃんが助けてくれて誘拐は未遂になったが、俺を溺愛している爺ちゃんは怒り狂ってその犯罪者と背後にいる黒幕を全て半殺しにして刑務所送りにした。


あの時の爺ちゃんは頼もしいと思うと同時にとてつもなく怖かったなと思い出しながら手紙の封蝋を解く。


手紙は爺ちゃんが若い頃に必死で覚えた日本語で書かれていて、内容を軽く読んだ瞬間……俺は驚きのあまり口を手で押さえた。


「魔力が封印されている……?」


今までずっと魔力が無いと思われていたが、実は魔力が封印されていたのだった。


その理由が赤ん坊の時に膨大な魔力が宿っていることが判明し、このままでは体が耐えきれずに命を落とす可能性があった。


爺ちゃんは俺が生きられるように魔力を封印する術式を身体中に刻み、体が十分に成長する時を待っていた。


『……アルフレッドは大切な孫である君を生かすため、守るために魔力を封印したんだ。そして、君の魔力を封印している術式を解く鍵をアルフレッドから預かっている』


マスタードラゴンは小さな指で器用に指パッチンをすると右手の中指に銀色に輝くドラゴンの姿を模した指輪が現れた。


「指輪?」


『その指輪は君の魔力の封印を解く鍵であり、魔法の杖にもなる。さあ、アウェイキングと言え』


「え?ア、アウェイ、キング?」


言われるがままにアウェイキングと言う単語を口にすると指輪が光ると一瞬で大きくなって形を変えた。


先端にマスタードラゴンを模した金色の綺麗な装飾が施された60cmほどの大きな黒い杖だった。


「これが、俺の杖……?」


『杖の名前は特に決めてないから君が決めればいい。そして、もう一つ……』


もう一度指を鳴らすと今度は裏面に魔法陣とマスタードラゴンを模した絵柄が描かれたタロットカードのようなカードの束が現れた。


「カード……?」


『それは私の力を元にアルフレッドが作り出した魔法のカードだ。全部で100枚ある』


「魔法のカード……あれ?このカード、ほとんど白紙だけど……」


カードをひっくり返すとほとんどが白紙のカードだった。


数えると10枚だけ色々な姿形をしたドラゴンが描かれていた。


『その10枚はアルフレッドの力で生み出された特別なドラゴンだ。残りの90枚は君が生み出すんだ』


「生み出す?もしかして、ドラゴンを?」


ドラゴンを生み出すってそんな夢みたいなことが本当に出来るのだろうかと驚く俺にマスタードラゴンはニヤリと笑みを浮かべて俺を指差す。


『さあ、千歳よ!君には大いなる力を授けられた。今から君は魔法使い見習い。そうだな……《魔法少年》としてこれからビシバシ鍛えていくからな!』


「嫌だ」


『即答で拒否するな!それでも君は小学生か!?それでも大賢者・アルフレッドの孫か!?ドラゴンを生み出せたり、魔法を覚えられるんだからもっとワクワクしろ!!』


マスタードラゴンから杖とカードを一方的に渡されて何が何やらと言った感じで魔法少年にされてしまった俺。


爺ちゃんが俺に何をさせたいのかイマイチよく分からないから今度会う時にそこのところはしっかり聞くとして、一つだけ確かなことがある。


それはこのやかましいマスタードラゴンによって俺の日常が大きく変わり始めてしまったことだった。




自分の好きな要素、子供の頃に思い浮かべた夢やロマンを叶えるような話を書きたいと思い、執筆しました。

よろしくお願いします。

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