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小隊の変遷と報酬(1)

帝国騎士ニアリングがツェトラ達と再び合流したのは、マクスウェルとの邂逅かいこうから2日後のことである。

女帝からの任務を帯びた騎士の方が、女帝から貸し与えられた魔法の駿馬しゅんめを駆って追いついて来たというわけだ。


「本当にお土産を選んでいたのだけど」

「予定が柔軟に動くのは冒険旅行ならではでありましょう」

「まあ、そうなのですが」


「なんなら陛下が直々に報酬の受け渡しにいらっしゃるところだったんですが?」

「そ、それはそれで困りますっっ!」

「そうでありましょう」


鼻を鳴らしたニアが、魔法都市のヴィルヌーヴ子爵夫人の屋敷の一室で、機嫌よくアイテムボックスを開いた。

魔法の駿馬で早駆けをこなす間にボックスの中身が散らかってしまったようで、ニアは皇帝陛下からの報酬を探すのに集中してしまった。


彼女が家主のご厚意でシャワーを浴びる間に、ツェトラは姉上からの親書を読んでおいた。


【忍者】ヒエンの中途退職を円満に認めた旨が、冷静な筆運びで記されていた。

ツェトラがスカウトを行った冒険者達が無事に騎士団に採用され、遊撃隊として活動を始めたとのことである。

さすがはジャセンタ異母兄上あにうえとシャイナ異母姉上あねうえのいるA級小隊(パーティ)だ。

ヒエンもアルトもいるこの場で異母兄姉いぼきょうだいの話を持ち出すと横道にそれまくる上に実に煩雑はんざつになるので、ツェトラは喜びを苦労して内心に留めた。


「……まことにかたじけのうござる、ツェトラ殿」

「ご用命ありがとうございました、ヒエン殿」

ぜにの他に報酬に出来そうなものが武器だの防具だのしかないのですが、よろしかろうか」


「大丈夫です」

「では、のちほど銭と一緒にアイテムボックスに届けておきます」

「楽しみにしておきますね。これからのことは決まりましたか」

「もう一度、気の済むまで修行をし直してみようと思います。いつかツェトラ殿がご自分のギルドを持ったり、国を作ったりしたらお知らせください。このヒエン、専心お仕え申し上げるゆえ」


なんだか話が大きくなっている気がするが、もし、彼が心に描いているだろう想像をその通りに実現できたならば、それも悪くない。

「個人的に、呼べば助けに来てくれる人がいる状況に憧れているんですけど……」

「もちろん、着替えと風呂の最中でなければいつでも駆け付けますぞ」


「すぐに出発しますか」

()()()所を少しもお目にかけられませんでしたからな……。せめてこの場は【忍者】として、颯爽さっそうと去りましょう。では!」

ソファから素早く立ち上がり、丁寧に一礼したヒエンが、転移魔法でいずこかへと姿を消す。

もう少し関わってみたかったところだが、次の機会がないとも限らない。

湿っぽいのはナシだ。


「ツェトラは今からこれがしたいとか、あるの?」

向き合って座っているアルト師が、柔らかく微笑んで問う。

「1つ気になる依頼がありますが、まずは『白き豹の血統』との勝負までに、もう少し実力をつけておきたいところです」

「じゃあ、ぼくらの家に来る? 特訓するならハガネのおっさんの飛行戦艦ふねとかに行ってもおもしろいよ」


アルト=ブラッドと彼女の永遠の恋人たる吸血鬼の居城も魅力的だが、ハガネ師と一度も顔を合わせたことがないのを思い出す。

手紙で問い合わせを送った時に、追伸として弟子入りを願ってみたら即OKだった。

アラルガンド師やカーティス姉御に聞いた限りでは、豪快で意外と筆まめな好漢だという。

実際、さまなざま武器の扱い方を記した直筆の書物を惜し気もなく魔法で送って来たりしてくださっている。


ちょうど、魔法都市の北の山脈をさらに北上すればハガネ所有の飛行戦艦の停泊所に行けるとも聞いていることだ。一度お訪ねするべきだろう。

エメもハイジェも、ツェトラの意見に賛同してくれた。


「決まりだね。ぼくは途中の山小屋あたりまで一緒に行くよ」

「アルトのお家への分かれ道があるんでしたよね?」

「うん。リュデイアに顔を見せておかないといけないから。きみのこともまだまだ心配なんだけどねぇ」

「ありがとう、アルト」


アルトにはアルトの優先順位がある。

力強く支えてくれる師匠たちに心配をかけないようになりたいと、ツェトラは思った。

2022/1/6更新。

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