ユメタロウ 参戦
一体のオーガが振り下ろした斧を、ガーディアンは両手で受け止めた。
そして片方の腕で、オーガの斧を殴り砕く。
「なんだとォオオオ?!」
隙を見せたオーガの目前で、ガーディアンは右手を左手にあてて、撫でるように肘までスライドさせた。
ガーディアンの腕に光が灯り、その輝きが血みどろの戦場を焦がす。
闘士の拳が煌めいて、オーガの腹を穿つ。鬼瓦のような顔が歪んで、野太い断末魔が響き渡り、炸裂。
突き刺さった部分から爆発が発生し、オーガは粉微塵となって消えた。
「す、すげぇ」
リューヤは、突然現れた謎の闘士の活躍に舌を巻いた。
パワフルな戦いで魔族を圧倒するガーディアン。彼のお陰で魔王軍最強の種族であるオーガ部隊はみるみるその数を減らして行き、それに伴いパタスタ要塞の兵士達は盛り返していった。
「思わぬ天運…なのか」
ヴィザレは喜んではいない。想定外の味方増援に対し、作戦指揮官であるために素直に喜べないのだ。
どこの誰ともわからぬ、見ず知らずの何者か。そんな者に助けられ、ヴィザレは複雑そうな顔をしていた。
「もっと喜びましょうよ!これなら勝てるっすよ!」
「それは…そうなのかもな」
「絶対勝てるっす!ほら、オーガが減ってるお陰でこっちの部隊も押し返してるみたいっす」
ストレンジャー能力で得た情報をもとに、リューヤは喜び勇んだ。
リューヤの言う通りだと、ヴィザレは思った。オーガは強い。
爆弾矢も巨大弩も火薬樽も退けた最強の魔族。そんな相手に戦いを挑まさせられた兵達は、勝ち目のない戦いに恐怖したに違いない。
ヴィザレの労した策を力尽くでねじ伏せたオーガは、要塞の扉に取り付いていた。あの不思議な闘士が現れなければ、今ごろオーガを始めとした魔族軍団によって、パタスタ要塞は陥落していただろう。
「…各員、謎の助太刀に遅れをとるな!コボルトやオークを倒せ!勝機は我らにあり!」
だが、今は、現実では人類側が勝っている。その事実がヴィザレを奮い立たせるのだ。
ヴィザレの号令に、奮闘していた兵士達が熱気立つ。一番怖いオーガが抑えられているのであれば、まだ勝ち目はある。
有刺鉄線に巻き込まれたオークを槍で突く。掘を登ってきたコボルトを斬り伏せる。ジャイアントをダイナマイト付きの矢で粉砕する。
パタスタ要塞に取り付かれて尚、人類の兵隊は全力で抗っていた。
無論、被害が無いわけではない。オークに叩き潰され、コボルトに囲まれ千々に引き裂かれて、ジャイアントの一撃に粉微塵となった兵士もいる。
しかし、オーガがストレンジャーによって駆逐されることで、準備を整えていたパタスタ要塞は、魔族に対して互角の戦いを展開していた。
「い、いかん」
「我らも要塞前の雑魚を…」
まだ到着していない部隊がパタスタ要塞に接近する。だが、それを塞ぐように立つ人影。
マナカだった。
「今度はこっちが邪魔する番ってわけ」
黒い外骨格に覆われ、腕からブレードを出し、魔族に向かって突撃開始。
マナカの振るった切っ先は、多くの魔族の首を飛ばした。
戦況が相手側に有利であることを、魔王は薄々感じ取っていた。
要塞に軍勢が取り付いたはずなのに、落ちる気配が一向にしない。
遠目でもこちらの部隊が減っているのがわかる。
「潮時だな」
魔王は一言そう言うと、鎧の金擦れ音を響かせつつ、振り向いた。
「ミルラー。首尾はどうだ」
「はい!もう少しで完成いたします、魔王様」
「急げ、我々の部隊は最早負けかけている。お前のゴーレムで建て直す」
「承知いたしました!このエンシェントゴーレムならば、たとえストレンジャーといえど蹴散らして御覧に入れます!」
童女のような肢体を艶かしく動かすミルラー。彼女の目の前で、彼女の動きに呼応するように、大量の石がひとりでに動き、かき集められていく。
そして、魔王の視線の先で、小山が動いた。
両手、両足を持った小山が、重々しく動き出す。一歩を踏むごとに大地が揺れる。石でできた巨大な人形は、パタスタ要塞へ向けてまっすぐに歩き出した。




