森狼の恩返し、大森林の出口。
翌朝、俺は生温かい風と獣臭い匂いで目覚めた。
目の前には、大きな牙と舌が迫ってきていた。俺は、ギャー!喰われる!と目を瞑ったが、感じたのは痛みではなく、生温かい液状のものだった。
改めて見ると、それは昨日助けた森狼達で、顔についたのは、こいつらのヨダレだった。獣クサ!
俺は、森狼達から離れて、ヨダレまみれになった身体に魔法を使う。
「ランドリー」
獣臭い匂いが無くなり、石鹸のいい匂いになった。
森狼達の朝食をどうしようと、迷って森狼達を見ると、口の周りに血が付いていたので、自分達で狩って食べたのだろう。若干、俺のじゃないだろうかと思い、身体を確認した。
森狼達には、水を魔法で、飲ませてあげて、俺はタマゴサンドを出して、朝食を済ました。
出していた荷物を影収納にしまい、結界を解除して、焚き火の跡に土をかける。
そして、森狼達に身体を向けた。2頭も、こちらを見て並んで座っている。
「元気になってよかったよ。今度は捕まらない様に気をつけろよ。じゃあな。」
俺は、森狼達に手を振り出発した。
暫く森を進んでいると、後ろから足音が聴こえる。
俺が振り返るとそこには、さっき別れた森狼達にだった。
「どうした?まだ俺に用があるのか?」
俺が、声を掛けると、
「ヴォル!」
雄の方が、肯定する様に鳴いた。
「う〜ん。なんだろう。俺がやったのはお前達をたすけたぐらいだからなぁ。もしかして、お礼がしたいのか?」
考えながら、思いついたことを俺は森狼達に聞く。
「ヴォル!」
「ヴォン!」
今度は2頭揃って鳴いた。
「律儀な奴等だなぁ。どっかのクソ妖精どもに見習わせたいよ。」
「そうだなぁ。俺を乗せて森の外まで、連れてってくれないか?」
俺が、そうお願いすると、
「ヴォル!」
「ヴォン!」
揃って了承してくれた。
「じゃあ、短い間だが、宜しくな。」
そう言って俺は、森狼達に近づき、背中に乗った。
俺は、まず呼びやすい様に其々、名前をつけた。
雄の方が、ヴォルフ。
番いの雌の方が、ヒスイだ。
ヴォルフの方が安直な名前になってしまったが、2頭共、気に入ってくれた様子だった。そして、俺の名前も教えておいた。
ここから、森を進む速度が凄く早くなった。
流石、森狼と言われるだけあってか、ヴォルフ達は、森を泳ぐ様に進んでいく。途中で、オークやグレイグリズリーなど出てきたが、俺の魔法やヴォルフたちの種族魔法なのか、木でできたツリーウルフが出てきて、連携して倒したりした。
そんな感じで進んでから、8日程経った。もう直ぐ森の外に近いのか、森の中をてらす陽の光が多くなり、魔物もゴブリンやコボルトなど小型のタイプが増え、また小動物も多く見られるようになった。
暫く進み、あと、50メートル程で森の外に出られる所で、止まってもらい、俺は背中から飛び立ち、ヴォルフ達の顔の前に移動した。
「ヴォルフ、ヒスイ、お礼は十分返してもらった。ここまでありがとうな。」
俺は、ふたりに向かって、頭を下げた。
「ヴォル」
「ヴォン」
ふたりとも、寂しそうにしている。
「そんな声出すなよ。俺も寂しいんだからさ。」
そう言ってふたりの顔に身体を寄せる。
ふたりも匂いをつける様に、顔を擦り付けてくれる。
最初の時の様に、硬く獣臭い匂いでは無く、ロトの髭の様にフワッフワでいい匂いがする。
旅の間、俺のランドリー魔法で毎日綺麗にしてあげていたからな。
俺は名残惜しい気持ちが強かったが、二人の顔から離れた。
「また、会いに帰ってくるからさ。ヴォルフとヒスイに会わせたい友もいるしさ。」
「じゃあ。行ってくる。」
俺は、ヴォルフとヒスイに、背中を向けて、森の外に向かった。
後ろから、旅の無事を願う様なふたりの遠吠えを聴きながら。




