絶好のチャンス
美咲が風呂から出た後、美咲はベッドに入る。
美咲は、俺の寝るスペースを用意してくれた。
「風峰はここで寝て……」
空いたスペースを手でポンポン叩く。
俺は言われた通り、そこで寝ることにした。
部屋の電気を消した。
部屋は真っ暗で何も見えない。
そして、とても静かだった。
いや、静かではない。
美咲の呼吸音が聞こえる。
一緒に寝るのが恥ずかしいのか、美咲の呼吸が少し荒い。
いきなり、美咲が腕に抱きついてきた。
俺はドキッとした。
腕なんていつも抱きつかれているはずなのに、なぜかいつもより緊張する。
「ねぇ、風峰……もし、私が妹だったらどうする……?」
突然美咲がそんなことを聞いてきた。
「……美咲が妹だったら、俺は嬉しい」
そう答えた。
「私、風峰の妹として生まれてきても良かったなーって思ってるんだ」
「なんでだ?」
「だって、風峰優しいじゃん。頼りになるし」
そう言われると、素直に喜んでしまう。
大好きな美咲からそう言われて、とても嬉しかった。
「俺も、美咲の兄として生まれても良かったかもしれないな」
「そう?へへ、嬉しい……」
俺は思った。
今なら本当のことを言ってもいいのではないか。
「美咲、話したいことがあるんだ……」
「ん?なに?」
「実は……」
美咲は俺の妹なんだ。
血も繋がっている。
本当の妹なんだ。
そう言いたかった。
だが、言葉が出ない。
言いたいのに、口が動いてくれない。
嫌われるのを恐れている自分がいる。
「……すまん、なんでもない」
言えなかった。
本当のことを言う絶好のチャンスを逃してしまった。
「そう……それじゃ、おやすみ」
「……ああ、おやすみ……」
「……このまま腕に抱きついててもいい?」
「……別にいいぞ。それじゃあ、おやすみ」
俺は美咲の頭を撫でる。
美咲はフフッという声を出した。
そして俺は、美咲の頭に手を置いたまま寝た。




