美咲の家にお泊まり
「ねぇ、風峰の家に泊まりに行っていい?」
下校中、美咲がそんなことを言い出した。
「また風峰と一緒に寝たいなーって思って……いい?」
家には父さんがいる。
美咲が父さんに会ったら、美咲は絶対に自己紹介をする。
そして、美咲が俺の妹だということがバレてしまうだろう。
「無理だ。すまん」
「ええっ! ……じゃあ、私の家でいいから! 一緒に寝て!」
「おい、外でそんなこと言うな!」
他の人に聞かれたら変な目で見られてしまう。
しかし、美咲は黙らない。
俺は、美咲の口を手で塞ぐ。
「わかった、わかったよ仕方がない。で、いつ行けばいい?」
「この後すぐ!」
「本気か?」
「うん!」
どうやら本気らしい。
「俺が寝る場所とかあるのか?」
「同じ布団でいいでしょ?」
これも本気で言っているらしい。
二人で同じ部屋に寝るだけでもあれなのに、布団も一緒。
それはかなりまずいんじゃないかと思った。
「なあ美咲、その……高校生である俺たちが同じ布団で寝るっていうのはどうなんだ……?」
「風峰なら私は別に気にしないよ。あ、でも襲ったらもちろん即警察に通報するからね。まあ、襲わないでしょ、風峰。それじゃあ、私の家に行こう!」
美咲は俺の腕を掴む。
そして、そのまま歩き出した。
結局、俺は美咲の家に泊まることになってしまった。
着替えは、タンスに入ってるものを適当に貸してくれるらしい。
そして夕食後、美咲は俺にお願いをしてきた。
「風峰……その、一緒にお風呂に入ってくれない……?」
今、とんでもないことを言ったような気がした。
「え? 今なんと……」
さっき聞いたことが間違えでありますようにと願いながら、俺は聞き返す。
「だから……一緒にお風呂……」
間違えではなかった。
今はっきりと言った。
「な、なんでだよ!」
「その……いいじゃん! 別に!」
「よくない! まずいだろそんなの!」
流石にこのお願いは聞けない。
俺は一人で脱衣所に向かった。
湯船に浸かって、温まっていた。
湯加減がちょうどよく、心地よい。
俺は寝そうになった。
その時、脱衣所に美咲が入ってきた。
脱衣所で何をしているのか、俺には分からなかった。
そしてなぜか、脱衣所のドアが開かれた。
そこには、バスタオルを巻いた美咲が立っていた。
「お邪魔しまーす……」
美咲は恥ずかしがりながら、風呂場に入ってくる。
「おい美咲! 何考えてるんだ! 早く出ろ!」
「私はこのまま入る! まずは体と頭洗うから風峰はこっち見ないで!」
美咲はバスタオルを取ろうとした。
俺は急いで目をそらした。
シャワーの音が聞こえる。
美咲は本当に俺と一緒に入るつもりだ。
目をそらしていると、美咲に肩を叩かれた。
「ねぇ風峰……髪の毛洗って……?」
「じ、自分で洗ってくれ!」
「お願い……風峰……」
俺は少し考えた。
その結果、髪の毛なら大丈夫なんじゃないか、ということで、洗ってあげることにした。
シャンプーを出して手に乗せる。
そして、美咲の髪を洗い始めた。
美咲の髪は黒くて長く、俺なんかが触ってもいいのかというくらい美しかった。
「もういいか?」
「うん、あと流したらリンスもお願い……」
俺は、言われた通りにした。
髪を洗った後、俺と美咲は二人で湯船に浸かった。
この前と同じように、背中を合わせて座っている。
「なあ美咲。どうして急に風呂に入ってきたんだ……?」
「……どんな理由でも私のこと引かない?」
「ああ」
「……甘えたかったの、風峰に。この前から風峰のことお兄ちゃんっぽいなって思うようになっちゃって、それで……」
この前というのは、美奈江先輩の家に行った時だろう。
「一緒にお風呂入って洗ってもらったり、一緒に寝たくなっちゃって……私って、気持ち悪いかな……」
「気持ち悪くなんかないぞ」
「本当……?」
「ああ。本当だ」
妹が兄に甘えるのは仕方がないはずだ。
「それじゃ、そろそろ出ようぜ」
「うん……それじゃ、風峰先に出て……」
「わかった」
俺は湯船から出て、体を拭いて風呂から出た。




