エピローグ
「お、お祖父様私には無理です。」
「まぁまぁ、華。ちょっと話をしようじゃないか。お茶を出してあげるから座りなさい」
「…はい」
泣きそうになりながら、座り心地がいかにも良いであろう椅子に腰を掛ける。
どうしてこうなってしまったんだろう。
いいえ、原因は解ってる。
私は病気なのだ。
ただ、自分では治す気が全く無いのに関わらず、何故か急にお祖父様が治す気満々になってしまっただけで…。
コトン。
そんな事を考えている内に、温かい紅茶が出てきた。
ハーブティーの匂いが心を落ち着かせる。
一口飲むと気分は大分落ち着いた。
「華、良く聞きなさい。
私も理事長という立場で色々してしまったが、全ては可愛い孫の為。
私もそう長くは生きられないんだよ。
…かと言って、両親の居ない華を1人残して逝ってしまうのは不安で仕方が無いんだ。
今までは、私達夫婦で甘えさせて育ててしまったけれど、私達の遺書だと思って聞いて欲しい。
高校3年の間に病気を治しなさい」
「…わかりました」
お祖父様ずるい。
遺書だと言われてしまえば、断れない…。
でも、お祖父様とお祖母様の事は、絶対悲しませたくない。
「約束したからには、3年の間に必ずこの゛男性アレルギー゛を治します!!!」
涙目の瞳だが、先程までとは少し違う輝きの瞳を祖父は見た。
あの約束を破る事が嫌いな孫が『約束』と言う言葉を使ったんだ。
必ず3年間で克服する事を願いたい。
「あっ、そうそう。
言い忘れていたけど、元々男子校だった夏凪学園に女子クラスを作ったのは知っているだろうが、女子寮も新たに作っておいたからね。
華の病気の事を考えると寮から通った方が良いだろう。
荷物は届けてあるから、明日からは寮から通うんだよ?」
「!!!」
確かに、私の男性アレルギーは病気と言う位に悪い事を考えると寮から通った方が良いかもしれない…。
何せ、男の人の顔を10秒見たら倒れてしまう位なのだから。
でもでもでもっ!!!
荒療治過ぎませんか?お祖父様!!!
「後で、寮長さんにご挨拶しておいで。寮の地図を渡そう。」
そう言って地図を渡しながら祖父に微笑まれた。この姿に私は弱い。
何せ、両親が居なくなってから祖父母に面倒を見てもらっていた私は、自他共に認める祖父母コンプレックスなのだから。
この祖父母コンプレックスも寮生活で少し治るかな?
「ご馳走様でした。これから、寮にご挨拶に行って来ます。」
軽く会釈しなから微笑んで理事長室を後にした。
「地図によると、寮はこの辺りかな?」
校舎のグラウンド裏を進むと温暖の植物園がある。
そのまま石畳の通路を通って行くと薔薇のアーチの先に窓がステンドグラスで出来た鳥籠の様な形をした建物が現れた。
可愛い
何だか、小さな秘密基地の様。
コンコン。
ノックして中に入ると、中には目を惹く螺旋階段。
カツコツと音を鳴らして女の子が降りてくる。
綺麗で知性的な顔立ちをしている。
「初めまして。今日からお世話になる夏凪華です。」
「初めまして。貴方が理事長の娘さんね。私は、寮長を務める碓氷栞です。まぁ、寮長と言っても年齢は同じよ。」
そう言った後、栞さんは私の事を下から上まで眺める。
綺麗なお姉さん的な栞さんに見られると恥ずかしくなって少し俯いてしまう。
ドタドタドタッ!!!
何何何!!?
螺旋階段を見ると褐色の肌にショートカットヘアのいかにも元気満々な女の子。
その後ろからゆっくりとツインテールに眼鏡を掛けた女の子も目をキラキラさせながら降りてくる。
「はっじめまして〜!!!私、新名薫です!!!理事長の孫なんだって?さっき聞こえちゃったよ~!!!あの理事長に、こんっなカワイイ孫がいたんだね~!!!」
「キャーッ!!!カワイイ〜ッ。お目目がくりくりしてて、ちっちゃくて肌白い〜。髪もサラッサラだね~。あっ。私、鮫島杏です〜。身長何センチ?趣味は?好きな食べ物は?私が好きな物は~、カワイイ物で〜、趣味は手芸!!!今度、華ちゃんの洋服作らせて〜。着せ替えごっこしよう。着せ替えごっこ!!!」
えっと…。
眼鏡を掛けた杏さんは、第一印象が大人しいと思っていたのに、検討ハズレでした。
しかも、早口…。
返答に困ってる今も何だか色々いじくられてます。
「ちょっと杏!華さんが困ってるじゃない。一旦離れなさい!
華さん、ごめんなさい。寮の説明をしていないのに。簡単に説明させて。此処の寮は16部屋が全部個室よ。今の所、埋まって居るのは8部屋でその内今居るのは私達3人ね。
他に寮母さんの園生さんて方が居るけど今はお買い物へ行っていて不在なの。ごめんなさい。後は、食事はダイニングルーム。昼は学校の食堂で。後は、ゲストルームとバスルーム、雑談室などがあるわ。」
お祖父様やっぱり女子クラスは、今年度のみって考えてるのね。
ここまでしてくれたんだもの。
頑張って男性アレルギーを治さないと。
「では、私達は自室に戻るわね。分からない所があればその都度聞いて頂戴。
これから、宜しく!華さん。」
「宜しくお願いします。皆さん。」
私は、皆と握手を交わして自室に入った。
明日は、入学式。
これから頑張らないと!!!




