↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定スキルしかありませんが、世界最強に溺愛されてます  作者: 蛍坂菜月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/2

第一話:格差転生と最強のマネージャー

はじめまして、作者の蛍坂菜月(ほたるざかなつき)です。本作を見つけていただき、ありがとうございます!楽しんでいただけたら嬉しいです!

「おい、あの男が例の……」

「ああ。『氷の女帝』の金魚のフン、黒木蓮だろ」

「パッとしない男なのに、なぜあの美少女が従わせているんだ?」

「きっと、口にするのも恐ろしい弱みを握っているに違いない……!」

王都の冒険者ギルド。

突き刺さるような周囲のヒソヒソ声を背中に受けながら、俺――黒木蓮(クロキ・レン)は、静かにため息をついた。

違うんだ。誤解だ。

俺は弱みなんてこれっぽっちも握っていないし、むしろ毎日「いつ捨てられるか」とビクビクしている、ただの情けない居候(ヒモ)なのだ。

すべてが始まったのは、半年前のあの日。

高校の登校中、幼馴染の白銀凛(シロガネ・リン)と一緒にトラックに跳ねられ、気がつけば異世界の王宮に召喚されていた。

凛は神々しい光に包まれ、世界を救う【聖剣士】、さらには『全属性魔法適性』と『神速の剣技』という世界最強クラスのチート能力を授かった。

対する俺に与えられたのは、街の商人でも持っている『鑑定』と『アイテムボックス』。戦闘能力はほぼゼロ。完全に勇者召喚の「オマケ」だった。

王宮の貴族たちが「そこの無能な男は路頭に迷わせるか、兵卒にでも落とせ」と冷酷に言い放った、その瞬間。

可憐な銀髪をなびかせた凛が、すさまじい魔力の奔流を放ちながら、玉座の国王を睨みつけたのだ。

『レンも一緒にいさせて。……もし彼に指一本でも触れるなら、今すぐこの国を滅ぼす』

あの時の凛の目は本気だった。国を滅ぼす超絶美少女の脅しに怯えた国王たちは、慌てて俺を凛の「専属マネージャー兼雑用係」として雇うことを認めた。

それからの日々は、まさに「おこぼれ」の極みだった。

冒険者となった凛は、【銀髪の破壊神】の二つ名に恥じぬ強さで、襲いかかるドラゴンや魔王軍の幹部を秒で塵に変えていく。俺の仕事は、凛の後ろをトボトボと歩き、彼女が倒した魔物のドロップ素材を『アイテムボックス』に拾い集めるだけ。

昨日も、国宝級のドラゴンの逆鱗をギルドに売却しただけで、俺の個人口座には国家予算レベルの金が振り込まれた。

「今日も凛のおかげで、こんなに豪華な飯が食える……。本当に、情けないな、俺……」

宿屋の一室。俺は自分で作った最高級魔獣の肉料理を皿に盛り付けながら、一人ごちた。

凛を守れる男になりたかったのに、現実は彼女の圧倒的な強さにぶら下がっているだけの存在。申し訳なさと情けなさで胸が痛む。でも、幼馴染として、一人の男として、彼女があまりにも可愛すぎて、どうしても側の特等席を離れたくないのだ。

ガチャ、と部屋の扉が開いた。

現れたのは、国中の男から求婚される超絶美少女にして、常に冷酷・クールで無口な「氷の女帝」――白銀凛。

「おかえり、凛。今日も大活躍だったみたいだね。ご飯、できてるよ」

俺が微笑みかけると、凛はピクッと身体を震わせ、前髪の隙間から鋭い視線をこちらに向けた。

相変わらず、ゾッとするほど冷たい視線だ。異世界に来てから、彼女は俺に対してほとんど口を聞いてくれなくなった。きっと、強くなりすぎて、俺のような無能な男には愛想を尽かしているのだろう。

「……ん」

凛はトスッと椅子に座り、俺が作った料理をスプーンで口に運ぶ。

そして、端正な顔立ちをピキリとこわばらせ、低い声で言った。

「…………悪くない」

それだけ言うと、彼女は黙々と料理を食べ進めた。

やっぱり、俺の料理も「悪くない」程度なんだろうな。もっと美味しいものを作れるようになりたいけれど。

だが、俺は知る由もなかった。

その時、凛の脳内がどんな大パニックを起こしているかを。

(っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!)

凛の心臓は、破裂しそうなほど脈打っていた。

(今日もレンがご飯を作ってくれた……! しかも私の大好きな味付け! 『世界一美味しい! レン大好き!』って言いたいのに……っ! なんで私のバカな口は『悪くない』なんて可愛くないこと言っちゃうの!? 冷酷ぶってる場合じゃないのに! レンが格好良すぎて、顔を見ると緊張して上手く喋れない……っ! もし嫌われたら私、生きていけない……!)

凛の本当の目的は、最初からただ一つ。「レンに絶対に怪我をさせないこと」。

レンの安全を確保するためなら、敵が近づく前に半径1キロを更地にするのも厭わない。彼女の冷徹な戦いぶりは、すべてレンへの限界突破した愛情の裏返しだったのだ。

「ごちそうさま。……部屋に戻る」

凛はパッと立ち上がると、耳まで真っ赤に染まった顔を隠すように、逃げるように自分の部屋へと駆け込んでいった。

「はは……。やっぱり、嫌われちゃってるのかな」

一人残されたリビングで、俺は苦笑する。

こんな最強の美少女になっちゃったら、俺みたいな普通の男なんて相手にされないよな。

でも、と俺は拳を握りしめる。

手元にあるのは、凛が「これ、いらない」と無造作に投げてよこした超高級魔道具の数々と、俺の『アイテムボックス』に溜まった国宝級の素材たち。

俺は『鑑定』の画面を開き、それらの詳細なデータを睨みつける。

「いつか、凛を本当に助けられるくらい強くなってみせる。……俺なりのやり方で」

すれ違う二人の想い。

しかしこの時、二人はまだ気づいていなかった。

レンの『鑑定』によって最適化された素材の運用と、魔道具の完璧なメンテナンスこそが、凛のチート能力を極限まで引き上げる「最強のバフ」になっていたことに。

二人は無意識のうちに、世界最強の二人三脚を完成させていたのだ。

そして明日、俺たちを揺るがす最初の「事件」が起きることを、この時の俺はまだ知らなかった。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。本作は、私にとって初めての異世界転生のジャンルへの挑戦でした。至らない点も多かったかと思いますが、こうして第一話を形にすることが出来ました。第二話、第三話と続けていきたいと思っています。

2026年7月 蛍坂菜月

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。