誇りの花
誇りを胸に生きてきた。
何があっても下を向かないように、いつも顔を上げていた。
そう、思っていた。
不意に知人の男性に言われた。
「貴女は姫百合のような人だ」
「姫百合、ですか?」
戸惑って彼を見返す。
「姫百合を知らないか?」
「いえ、知っていますけど」
見たこともある。
オレンジ色の小振りの可愛らしい百合の花だ。
凛としている他の百合に比べたら可憐なものになる。
だからこそ尚更戸惑いが強い。
誇りを胸に顔を上げて生きてきた私のセルフイメージは凛とした姿だ。
自分ではだからイメージじゃないと思ったのだけど。
「それなら自覚がないか?」
「自覚?」
彼は一つ頷くと告げた。
「貴女は可憐で可愛らしい」
「え?」
言われたことのない言葉に驚く。
「やはり自覚がないようだな」
私は首を傾げた。
「私は別に可憐ではないと思いますけど」
可憐とは程遠い認識だ。
「やはり自覚がない。だが可憐というのは自覚した途端に可憐ではなくなるからな」
彼は一体何の話をしているのだろう?
そもそもどうしてそのような話をし始めたのだろうか?
それを訊こうとしたけど、その前に彼が腕時計に視線を落として告げた。
「悪い。そろそろ時間だ。またな」
彼は片手を上げて去っていった。
呼び止める間もなかった。
「もう。何なの」
私にはもやもやだけが残った。
読んでいただき、ありがとうございました。




