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小さな花の物語  作者: 燈華


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私を忘れないでの花

クラスメートの彼が転校することになった。


隣の席で時々話をするだけの関係。

彼も周囲もきっとそう思っていたはずだ。


だけど密かに私は彼が好きだった。

だから聞いていた引っ越しの日に見送りに行った。

告白ではない。

あくまでも見送りだ。


彼は現れた私に驚いたようだったけど、少しだけ時間を取ってくれた。


「元気でね」


青い小花の可愛らしい忘れな草の花束を手渡す。


「ありがとう。君も元気でね」

「うん、ありがとう」


うまく笑顔を作ることは、できただろうか?


ーー私を忘れないで。


心の中だけでこっそりと呟く。

声に出して告げることはできなかった。

言われたら彼も困るだろう。


彼は微笑んで告げた。


「またいつか、会えたらいいね」


驚いた。


「う、うん。会えたら、いいね」


本心だろうか?

いや、綺麗にさようならするための言葉だろう。

でも、そう言ってくれたのは嬉しい。


今までありがとう、という過去への視線ではなく、いつか会えたらいいね、という未来への視線だったから。


「そろそろ行かなくちゃ。来てくれてありがとう」

「ううん」


彼はすっと真面目な顔になった。

私も真面目な顔になる。


「またいつか」

「うん。またいつか」


真面目な顔のまま二人で告げて、同時に吹き出すように微笑(わら)った。

こういうお茶目なやりとりももう出来なくなるのは寂しいと涙が込み上げてきそうになる。


「それじゃあ」

「うん」


軽く手を上げた彼に私も小さく手を振り返す。

踵を返した彼は足早に去っていく。


その背を見送っていると涙が(こぼ)れそうになり、慌てて背を向ける。

本当に泣いてしまう前にと、歩き出した。


曲がる角まで来て、曲がりながら最後にと思い、そっと彼のほうを見ると、彼は立ち止まって私のほうを見ていた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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