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19.彼女も彼もまだそのままで


 空に浮かび腕を組むルキフェルに、ウェインが立ち上がり振り返る。


「ご挨拶だな、ぬいぐるみ。やっぱりクソ生意気だわ」

「フンッ。それは我の台詞だ、小僧。そっくりそのまま返させて貰おう」

灰燼(かいじん)()せ」

「塵となれ」

「ちょっとちょっと! いきなり何を喧嘩してるのよ、もうっ!」


 あっという間に睨み合い始めたルキフェルとウェインに、聖奈(セナ)は慌てて声を荒らげ止めに入った。

 一日ぶりでも彼等はやっぱり不仲だ。いったいどうしてなのかはわからないが、どうしても馬が合わないらしい。付け加えれば聖奈がウェインを見て抱くもやもやも相変わらずだったのだが、こちらも理由が自分でもわからないままだ。

 それはそれとしても、と眉をつり上げ咎めるような視線を向けると、ふたり揃ってグッと言葉を詰まらせる。

 そういう顔をするくらいなら堪えるなりなんなりすればいいのに、と呆れた溜め息混じりに聖奈はウェインを見上げた。


「それで、どうして此処に来たの? しかも手助けまでしてくれて……」

「んー?」


 ルキフェルの頭を鷲掴みにしようとして避けられたウェインが、間の抜けた声を返しながら聖奈を見下ろす。

 しかし返事とは裏腹にそのアクアマリン色の美しい双眸には、ほんの少しだけ罰が悪そうな後悔にも似た感情が浮かんでいた。


「考えたんだ。あんたらがいなくなってからずっと」

「……」

「魔族のこと、それから人間と神族のこと、その関係を。俺なりに、一人で考えた」


 ウェインは何かを思い浮かべるように目を閉じ、だがすぐに情けなく眉を下げて、また口を開いた。


「そしたらさ、違うのかなって思い始めた。伝え聞く話と、実際に話して知る魔族ってのは。ルキフェル(ぬいぐるみ)はウザイが、アリシアちゃんは凶暴ってわけじゃない。同じ年頃の人間と大差ない、普通の子だ。だって小さい頃から聞いてた魔族って、それこそ殺らなきゃ殺られる奴らなんだぜ?」

「そんな風に伝わってるんだ……」

「ああ。危険な存在、滅ぼすべき存在ってな。それが常識だった……けど、あの遺跡にいた魔族のおっさんたちもそうだが、絵本で見るような凶暴性はない。話をする余地が残されていないなんてこともない。ずっと信じてなかったが、かつては手を取り合えたってのも嘘じゃないんだなとまで思えた。そう気付けたらもうじっとしてらんなくて、追っかけて来た」

「……でも、」

「あんたのことをあの遺跡で助けようって思ったのも、あんたが普通の人間に見えたからで、見殺しになんてしたくなかったからだ。それなのに危ないからって理由だけで、はいそうですかって受け入れられるかよ」


 そう話すウェインの表情は、晴れやかにも見える。後悔なんて微塵もない。聖奈にはそう思えた。

 それに、とウェインは付け足す。いたずらっ子のようににんまりと笑いながら、彼は言った。


「知ってたか? エルリフ(あの村)の住人は魔族に対してわりと好意的なんだよ」

「えっ!?」


 目を丸くして声を上げると、ウェインは満足げにくすくすと微笑む。


「俺もあの村を出る時に知ったんだけどさ、かつて森に住んでいた純血の魔族の話しあったろ?」

「うん。遺跡の元々の持ち主のことだよね?」

「そう。そいつはずっと昔から森に迷い込む村人を魔物から守ったり、村まで送っていったり、とにかく尽くしてくれたんだそうだ。対して村人たちは魔族のために畑で獲れた物を礼がわりに渡してて、当時としてもありえないくらい上手くやってたんだと。だから、今でも他の土地の人間よりも魔族に対して好意的なんだ」


 ふ、とウェインの視線がゆっくりと下ろされた。辿るとそこにはアリシアの姿がある。

 彼女は聖奈から体を離し、うっすらと涙が滲む淡い赤の瞳でウェインを真っ直ぐに見詰めていた。


「八百屋のおばちゃん、気付いてたぜ? 確信はなかったみたいだが、アリシアちゃんが魔族なんじゃないかってさ」

「っ!?」

「もしそうだったら、隠れて生きてかなきゃならない世の中が嫌になるって言ってたよ。あの様子じゃ宿屋の店主も気づいてたかもしれないな」


 言いながらウェインは自分の荷物を探ると、紙袋を取り出し聖奈へと押し付けてくる。聖奈は両手で受け取り、アリシアと共に中を覗き込む。

 少しだけくしゃくしゃになった紙袋の中には紙包みがいくつかあった。


「これは?」

「おばちゃんから渡されたサンドイッチ。悪くはなってないと思うんだがな」

「作ってくれたの?」

「みたいだな。ったく、俺が絶対追いかけるって見越して作りやがって……それで予想が外れたらどーすんだっての」


 むっすりとした顔でぼやくウェインと、紙袋の中身を交互に見て聖奈はアリシアと顔を見合わせ、笑った。するとウェインの眉間に皺が深く刻まれ、不機嫌さが僅かに増したようだが、構いやしない。

 やがて吹き出すようにウェインも笑うとくるりとルキフェルに向き直り、不敵な笑みに表情に変えた。


「ってわけだから、てめぇがいるのは不服だが今後もついて行かせてもらうぜ?」

「そうか、不服だというのなら此処で去れ。その方が互いに気持ちが良かろう?」

「去るならてめぇのほうだ。ぎたぎたに切り刻むぞ」

「面白い、貴様ごときの技量で出来るならやってみろ」

「だから! もう、喧嘩しないの! 何かある度に喧嘩を売るのも買うのもだめだからね!」


 気付くとすぐにこれだ。先代魔王を自称するなら流せばいいのに、愛らしい外見に中身が引っ張られているのだろうか。もっともウェインもウェインなのだけれど。

 紙袋を片手に立ち上がりじとりと睨むと、やはりウェインとルキフェルはうっと言葉を詰まらせて振り向いた。

 だからそんな反応をするなら、言い合いをしなければいいのに。聖奈は深く息を吐き出しながら、


「まったく、どうして喧嘩ばかり……ん?」


 地面に放ったままの剣を拾い上げようとして、動きが止まる。

 え、ちょっと待ってなんだこれ。それを見詰めたまま、聖奈は困惑する。


「セナ様?」

「セナちゃーん?」

「どうした?」


 三人の声にようやく我に返って、聖奈は一度しゃがみこみおそるおそる手に取ってみる。

 もちろんそれは生命体というわけではないのだから、噛み付いてくることはない。当たり前だ。しかも軽い。それも、今まで使っていたものよりもずっと

 何が起きているのか、聖奈の頭では全く理解が出来ない。むしろどんどんわからなくなっていく。

 聖奈はとりあえず、拾い上げたそれを三人に見せる事にした。


「えーっと、こんな事になってたんだけど……?」

「え? 何が、ですか?」

「てかスゲー剣だなあ。どしたんだ、それ?」


 こてん、とアリシアとウェインが首を傾げる。

 どうしてこう、整った容姿を持つ人達がやるとどんな仕草も様になるのだろうか。

 と、変な方向に行きかけた思考を慌てて引き戻し、聖奈は二人に告げた。


「いや、だからこれ、さっきまで私が使ってた剣……なんだけど……」

「……へっ?」

「……は?」

「ふむ……」


 ぽかんとするウェインとアリシアに対して、彼らの横に浮かぶルキフェルは小く頷いた。

 彼は何か心当たりがあるのだろうか、と二の句を待つ聖奈にルキフェルが口にした言葉は想像を超えていた。


「それは魔剣だな」

「ま、魔剣……?」

「うむ、魔剣だ。グリフォンとの戦いの中で振るっていた(つるぎ)にセナ、貴様が顕現させたのだ」


 よくわからないが――どうやらいつのまにやら魔剣を手にしていたらしい。



 * * *



 ――〈魔王〉と呼ばれる者は、その魂に見合う武器というものを顕現できるものらしい。

 ルキフェルは武器を扱うという事をしなかったことから顕現することはなかったらしいが、過去の〈魔王〉たちもそうして武器を顕現していたそうだ。

 これは〈魔王〉に限ったものではなく、〈勇者〉また同じであるらしい。そして〈魔王〉と〈勇者〉が死すると決まって顕現された武具もまた、役目を終えたと言わんばかりに消え失せてしまうそうだ。

 そうした不可思議な能力を〈魔王〉と〈勇者〉が持つ理由はよくわかってはいないが、〈魔王〉と〈勇者〉は単なる称号ではなく、その名を与えられた者には人智を超えた多くの加護が働き、その中に特殊な空間にある武具を引っ張り出す力もあるのだとか、武器が残らないのは強力過ぎる力が慢性的に振るわれればいずれ世界が壊れるからだとか言われているが、未だ推測と推論の域は出ないようで。


「つまり、これは私が無意識に〈魔王〉の力を引き出した結果ってこと?」

「その通りだ」


 すっかり魔物の気配がなくなってしまった草原で、ウェインが〈エルリフ〉の八百屋の店主から渡されたというサンドイッチを皆で分け合い食べながら、聖奈が鞘に収められた(くだん)の剣を指差し問うと、ルキフェルは大きく頷いた。

 〈魔王〉や〈勇者〉の顕現する武具には正式な銘というものがない。

 故に持ち主が好きに名付けて呼ぶのが通例であるようなのだが、あいにく聖奈に武器の名を考えられるような頭を持ち合わせていなかったため、ルキフェルに頼んで銘をつけて貰った。

 ――魔剣レイヴァテイン。

 どこかで聞き覚えがあるようなないような、そう名付けられた魔剣は元々鞘に収められていたものより細身で、凝った造りになっているのだが、不思議なことにぴったりと収まった。元の飾り気のない剣に戻ったのかと言われればそうではなく、抜き出せば魔剣のそれで、ルキフェルたちは何かしらの魔法的な力が働いているのだろうと推測を立てている。


「じゃああれは? 白い炎みたいなやつ。あれも〈魔王〉の力ってやつ?」

「そうだ。あれもまた力を引き出してのもの。魔法の一種であろうな」

「ふーん……」


 ちぎって分けたサンドイッチにかぶりつくルキフェルから、聖奈は利き手である右手の手のひらに視線を落とす。

 もちろん、そこにはあの白い炎などない。握ったり開いたりしても、現れる気配はない。


「そういえば、あの時のセナ様の眼、鮮やかな蒼の色をしていましたね」


 と、もきゅもきゅとサンドイッチを噛んで飲み込んだアリシアが、微笑みを携えて言った。それを聞いてかウェインが思い出したように、ああ、と続ける。


「してたなぁ。こう、煌くような蒼っつうの? 普段の色もいいけどあれも綺麗だったなー」

「えっ、ちょっ、ちょっと待って!」


 慌てて彼らを制止して、その顔を交互に見ながら聖奈は尋ねた。


「蒼の眼ってなに……? あのときの私の眼の色、変わってたの!?」

「はい、そうですよ。綺麗な色でした」

「なんだ、気付いてなかったのか? つっても仕方ないか、自分じゃ見えないわけだし」

「なにその恥ずかしい変化!?」


 ほのぼのと語るウェインとアリシアに、聖奈は思わず叫んだ。

 眼の色が蒼になってた? ないわ、ないない。そういうのに憧れなんてないし、恥ずかしいだけだ。ただでさえ魔剣なんてものを顕現しちゃったわ、白炎を操れそうな予感だわで穴に入りたい思いだというのに。

 ――いや、そもそも〈魔王〉とか呼ばれた時点で羞恥を捨てるべきだったのかもしれないが。


「いやでも捨てたくはない……! 〈魔王〉であるとは受け入れても、それ以上は……! こんなのはほんと兄さんの担当のはずだと思うよ、今更だけど……!」


 項垂れて、聖奈は頭を抱える。

 確かに魔法にはほんの少し興味があるが、その程度。その程度なのだ。できればその辺の一般人で。それだけで良かったのに、〈魔王〉って。魔剣って。白炎って。力を使うと眼が蒼くなるって。


「無理」


 ――完全にキャパシティオーバーである。

 聖奈は深く長い溜息を吐いた。


「せ、セナちゃん? 平気か……?」


 気遣うような声音に、聖奈は顔を上げてウェインを見詰め、力なく笑った。


「平気平気、慣れるしかないもんね。大丈夫、順応性は高いほうだって兄さんから褒められたことがあるから」


 本当は全然大丈夫ではないのだけれど。ウェインにもそれがわかったのだろう。彼は間髪容れずに大丈夫そうに見えねえから! と叫んだ。

 だが大丈夫じゃないと叫んだところで状況は一切変わりはしない。夢の中というわけでもないし、事実は事実として受け入れなければ。

 聖奈はもう一度、今度は深呼吸をするように息を吐き出して、左手に残っていたサンドイッチを口の中に放り込んだ。


「……ん。さて、そろそろ行こっか。あんまりゆっくりしてると四日じゃ着かなくなっちゃう」


 立ち上がり、服についた土と埃を叩いて落とす。

 聖奈の言葉に異論はないのだろう。ウェインやアリシアも立ち上がり、各々が荷物を手に取った。

 何の荷物もないルキフェルがアリシアと共に石畳の敷かれた街道へと戻り、道なりに歩き出す。

 聖奈も荷物を手に取り、魔剣の収められた鞘を腰のベルトに下げて追おうと顔を上げると、一歩も動かずにこちらを見たまま佇むウェインの姿が目に入った。


「どうかした?」


 首を傾げると、ウェインは緩やかに首を横に振り小さく笑う。


「いんや、なんにも。ただ、こうしてしみじみ見ても、セナちゃんは〈魔王〉っぽくねえなあと思って」

「〈魔王〉っぽさ、ねえ……まあ、ぽくないって自覚はあるけど」


 ゆっくりと足取りで街道へと向かうウェインを追い掛け、聖奈は横に並ぶ。

 普通に歩くウェインの歩幅は、聖奈の一歩より圧倒的に広い。少しだけ小走りになりながらも並んで石畳の上を歩いた。


「話の中で書かれてるような〈魔王〉はさ、世界を手中にーだったり、こんな世界なんて壊してやるーとかそんな感じなんだよな」


 彼の語る〈魔王〉像は、聖奈の世界におけるそれとよく似ていた。

 あの世界には存在せず、この世界には実在するという大きな違いはあるけれど、物語の中の〈魔王〉の多くは決して善良じゃない者たちだ。


「ウェインもそんな風に思ってたの?」

「うんにゃ。あんま信じてはなかった。ただ……魔族の王であるのならきっと、俺らに危害を加えるような存在だとは思ってたかな」

「〈魔王〉って、魔族の王っていう()()なんだって、ルキフェルが言ってた。でも、称号とは言われていても、〈魔王〉には力がある」


 ――きっと、物語に描かれているような〈魔王〉ことが可能であろう程の力が。

 だからこそ、この世界の人間たちの間で伝わる物語にはそうした姿が描かれているのだと思う。魔族と、人間と神族の間に走る亀裂を生み、決定的な溝となった原因はわからないにせよ、決して見過ごすことの出来ない力があるから

 聖奈はウェインを見上げる。


「……ウェインは、〈魔王()〉が怖いと思う?」


 彼は驚き当惑しながらも、聖奈を人間だと言う。

 それを疑っているわけではないし、心苦しいわけではない。ただそれでも人間(ウェイン)にとって〈魔王〉は(おそ)れる存在であるのは今なお変わりないと思うから。

 これまで聖奈にも実感がなかったが、グリフォンとの戦いを経てルキフェルから様々な事を聞かされて向き合った今は、否応にも〈魔王〉という異質なモノなのだとまざまざと突きつけられて否定が出来なくなってしまったから。

 聖奈はただの人間の娘などではない。ウェインが思っているような無力な娘などではない。だから。

 静かに問いかけると、ウェインは驚いた様子で目を丸くして聖奈を見下ろしていたが、やがてふるふると首を横に振った。


「いや」


 静かに、しかしはっきりと口に出された否定。ウェインの顔がふっと緩む。


「確かに、あんたは〈魔王〉なんだろう。でも結局のところあれだけ凄い力を発揮できたとしても、常にを望めない以上はセナちゃんはものすっごく弱いままじゃん?」

「同意をもとめられましても……確かに弱いけどさ」

「いじけんないじけんな。だからこそ、怖がる必要もないのかねって思えたわけだしな」


 言い切ったウェインは軽快に笑った。私が弱いから怖がる必要もないって、事実ではあるけど釈然としない。

 なんだか腹立たしくて視線を前に戻すと、その先には何か話しているのか、空に浮かぶルキフェルを見上げるアリシアの姿がある。

 ああした姿を見ると、グリフォンから守れて良かったと強く思えた。


「……なあ、セナちゃん?」

「うん?」


 ぽつ、と名を呼ばれ見上げると、ウェインは真剣な面持ちで聖奈を見下ろしていた。

 そのままたっぷり数秒。彼はそっと口を開いた。


「あんたに世界を思い通りに出来るくらいの力があったとして、そんなあんたにとって大切な誰かが殺されてしまったとしたら……〈魔王〉でもあるあんたは、どうする?」


 と、そんなことを訊ねられる。

 それは聖奈には想像しがたく、けれども〈魔王〉としてならば想像できるような問いかけだった。僅かな逡巡で、答えはすぐに導き出せる。

 聖奈はウェインを見上げたまま、にっこりと笑う。


「――どうもしないよ」


 はっきりと告げると、ウェインは面を食らったように目を瞬かせた。


「どうもしない。世界を思い通りに出来る……それだけの力がありながら大切な人を守れなかったのなら、私は私自身の弱さを憎むだけなんだと思う」


 実際にそんな状況に直面した時、どうなるかはわからない。

 だが強大な力があってもなお守れないというのならば、己の中に非があるとしか聖奈には考えられなかった。

 だから、どうもしない。

 報復? 復讐? そんなのは八つ当たりに過ぎない。そんな事をしたところで、取り戻せるものも得られることもないのならば。

 聖奈は前に向き直る。と、前方でアリシアが振り向き、笑った。手を振って応えると、彼女は更に嬉しそうに笑み、


「……ないな」


 ぽつりとした声に、改めてウェインを見上げた。


「んん? 何か言った?」


 首を傾げて問い掛けると、ウェインは目を伏せて緩く首を横に振り、


「なーんでも。ただ、セナちゃんはつくづく〈魔王〉っぽくねえなあと思って」

「〈魔王〉っぽくなくて悪かったですねーだ」

「あはは、そんなむくれるなよー。かわいいけどなー?」

「嬉しくなーい」

「おかしいな、本気で言ってるのに」


 何故だかすっかり普段の様相を取り戻したウェインに内心で首を捻りながらも、楽しげな表情をされては尋ねられず聖奈もまた微笑む。



 ウェインの歩幅は、聖奈が気付かぬ内に合わせられていた。


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