十二話 智也の本音
涼しい風が通り過ぎてゆく。
リンリンと鳴くスズムシの鳴き声に負けず劣らず、コウロギの鳴き声も同時に耳に響いてくる。
日は段々と降り始め、夕陽の色がますます色濃くなっていくのをただただ眺める。
それとともに智也は秋を感じた。
これからしようとしている話は、そんな秋の穏やかさとはまったく似合わないことだと思うと、少し滑稽に思えた。
「なぁ陸」
智也は隣のベンチに座る陸に呼び掛けた。視線は陸の方ではなく、誰もいない遊具の方をぼおっと眺めている。
「ん?」同じく陸も、視線は遊具の方にあった。
「あのハクって奴のことだけどよ。おれ、やっぱあいつのこと気に入らねえ。大体楽器も弾けねえくせにバンドやりたいとか、本当甘えにもほどがある。正直邪魔でしかねえよ」
振り向きはしなかったものの、陸は少々目を見開いた。
「てっきり智也は、あいつが約束を守ってきたから全部飲み込む気でいるかと思ってた」
「嫌なんだよ。ああいう怠けた奴見てると。絶対長い目で見たらあいつはおれらの足を引っ張ることになる。そうなる前に、早いうちにおれはあいつを追い出したい。部活は三人から成立するだろ。なら、あいつが抜けても問題はねぇだろ」
「そんなにあいつのことが嫌いなんだな。まぁ、おれは別にあいつが抜けても抜けなくてもどっちでもいいけどさ。……あの菱川って人、道ずれになって抜けていくかもしれないってわかってるのか? そしたら部員足らずですぐ廃部なんだぞ」
当然の如く、その計画には穴があることを示す陸。
智也はあたかもその発言を知っていたかのように、再び自身の考えを語り出した。
「だからそうならないために、その菱川がいないところであいつを追い込むんだよ。あいつが部を抜け出したいって自分から思えば、菱川も何も言えねぇだろ?」
「まあ、そこまでしてあいつを追い出したいって言うなら好きにすればいいんじゃないか? おれはどうせ何もしないし」
「けど必要なときはちゃんと手貸せよ」
「あぁわかったわかった」
智也自身、自分が感情的になって立てたこの計画には色々な問題点があることを理解していた。
見た感じ、菱川すみれは非常にセンシティブで細かいことに気づきやすい人間。
そんな彼女が、今後追い込まれてゆくハクの異常に気づかないわけがない。
まして、彼が辞めるといった果てには彼女も一緒になって辞めると言いかねないことが一番の問題点であることも承知の上。
だがそれをわかっていてもなお、自分がハクを追い出したいという感情の方がずっと勝っていた。
絶対に、あいつを追い出してやる。
智也は深くこころに刻む。
――音楽を舐めている奴と、一緒に音楽をしてたまるか。




