笹城万葉
皆様、沢山の評価とブックマークをありがとうございます。
御池千弥に初めて会ったのは就職活動の真っ最中、会社説明会の会場でだ。
彼女の隣の席が空いていたので座ったのが縁で、その後面接で再会。小柄だけど元気良く可愛らしい、私には無い要素ばかりの正反対なんだけどライバルだけど私には珍しく気に入った。
まっすぐなのだ。私には無い素直さが羨ましかったのかもしれない。
聞けばここが第一志望だと言う。お互い頑張ろうねと連絡先を交換した。
その後いくつか会社を受けていくつか内定をもらった。
彼女はどうなったかな…と連絡してみれば第一志望に決まったと言う。
東証一部上場の超優良企業、給料も待遇も申し分無い。最後の一押しが彼女がいること。私もそこに決め手続きをした。
それからは何度か彼女と会い、入社前研修までにはすっかり仲良しになった。
とにかく彼女は可愛い。でも、世間の諸々の常識とはかなりズレている。一言で言えば世間知らず。
聞けば父親は絵描きで母親は専業主婦。高校まで親子三人山奥で暮らしていたと言う。大学でこちらに出て来て祖父母宅に下宿。就職も決まったので晴れて一人暮らしを始めたらしい。
大丈夫か?
本気で心配したが、会社の最寄り駅と同じ路線駅前にあるコンシェルジュ付き女性専用マンション。
どうやら祖父が心配して決めたらしい。初任給で払えるのか?と本気で思ったが、祖父の決めた場所で祖父が家賃を払うのが独立の条件だったそうだ。
「なんか、監視されてるみたい」
とこぼすが、それもあながち嘘ではない。
だいたい千弥を知れば知るほど放っておけなくなった。彼女の祖父の気持ちが痛いほど解る。
実際彼女から私のことを聞いたからと祖父母宅の夕食に招待され、くれぐれもよろしくと泣き付かれた。
千弥の面倒をみて守ることが私の使命となった。
うん、とことん頑張るぞ!
千弥の敵は私の敵!
私は俄然張りきった。入社前研修からおぼこい千弥に手を出そうとした馬鹿がいたがもちろん粉砕。面白がった協力者も出来て、それは自然と増えていった。
ひとえに千弥の人徳の成せるわざと思う。私もそうだったように何故か構って助けたくなるのだ。本当に純粋な好意。
とはいえ絶対安心は有り得ない。千弥に近付く男には細心の注意を払い観察し仕分けしていく。
そして研修最後に私は宣言した。
「千弥が欲しかったら将来執行役員や取締役になれるくらいの実力を見せなさい。そこらの男に私の千弥は渡さないわよ!」
ふんだ!今は色恋より仕事を優先させろ。金も実力も権力も身に付けてらっしゃい。でないと私だけでなく彼女を溺愛する祖父だってきっと許さない。
それから無事入社式を終え新入社員は全国へと散っていった。同期はあれだけ沢山いたというのに本社勤務の女子は私と千弥の二人だけ。男子は僅か十人。
まず半年間全部署を順番に回り顔と業務内容を覚えることから始まった。長い研修期間だが半年かけて本社内の全てを把握しろってことかな。上手くやれば今後全部署と繋がり連携が取れる。
私達二人は秘書課への配属が既に決まっている。その為か各部署の研修は男子の半分の一週間づつ、残りの期間は受付業務に就いた。
ちなみに男子も全員一週間づつだが受付業務の研修をしていたのには驚いた。
その為か、社員の皆が取り次ぎをした受付担当とか他の些細な業務とかでも毎回ちゃんと感謝の言葉を伝えてくれる。当たり前のことなんだけどちゃんと感謝を伝えるって大事なことなんだなって、そんな会社の空気は気に入った。そしてこの会社に決めるきっかけになってくれた千弥に秘かに感謝している。
何より毎日が楽しい!
実に有意義な半年間を過ごし、千弥は会長の第二秘書、私は社長の第三秘書になった。それぞれ先輩秘書から仕事を習っていく。
いつの間にやら同期は千弥を中心にちょくちょく集まるようになった。お子様な千弥を愛でて楽しむ会、通称チャカイの始まりである。ここでは色々な情報も交換され、なかなかブラックな側面も併せ持つ楽しい集まりだ。
その中でも、古池徹夜は特に優秀な優良物件だった。男性陣のリーダー的な存在で腹黒い卸せない男だ。普通なら私の思うようには決して動かないだろうが、こちらには千弥がいる!
異性としては願い下げだが、千弥を守る相棒としては最高に心強い。率先して私の計画以上の成果を見せてくれる頼もしい男だが、やはり気は抜けない。
秘かに千弥のパートナー候補に残しつつも、抜け駆けされないよう厳しく見張る。この男、100%は信用出来ない。いや、したくない。悔しいことにやっぱり私より優秀なんだもん!
まぁ、ただ優しく性格の良い男じゃ千弥は守れないしパートナーとして物足りない。あのくらいひねくれた腹黒さは必要だろう。
気に入らないけど目をつぶろう。
でも、先ずは仕事を頑張れ。お手並み拝見してやるから。
それまでは……千弥に色々余所見をしていてもらおう。
ふん、せいぜい、やきもきするといいわ!
一先ず完結とさせていただきます。
今後、もしかしたら他の他者視点を追加するかも?
あくまで『かも』ですが……
お読みくださいましてありがとうございました。