第1話 決して夢見ることなかれ
大学生とは素晴らしいものなり!
苦学の末、ようやく第一志望の大学に受かった俺は、それはもう渡り鳥が温暖の地へたどり着いたかのように浮かれていた。学校や塾に支配される時間はもう終わった。勝手気ままな我が生活を邪魔するものはここにはいない。我に敵あらず。さながら十六世紀スペインの無敵艦隊だ。
時間のマスターキーを持った俺はすべての時間を随意に操ることができる。サークル、バイト、デート。……まあ、ごくたまに勉学。
俺の頭中におけるキャンパスライフは夢と希望で満ちあふれていた。
……そんな初々しい時期が確かに俺にもあった。
人間は、まだ起きていない未来の事象について拡大解釈をする癖がある。何かイベントがある前に当日の妄想をすることがよくあるのではないだろうか。ある偉人は言った。「遠足は当日ではなく前日が一番楽しい」のだと。
俺にしてもそうだ。入学してしばらく経つと嫌でもわかってくる。そんなキャンパスライフはまやかしだと。
大体、高校生の時も、いわゆる「ぼっち」でなかったものの、友達は決して多い方ではなかった。風変わりな奴が二人くらいいただけだ。人を引っ張るカリスマ性なども持っていなかった。
そんな俺が、サークルやバイトはまだしも、女子を引き連れてデートなるものにいそしむことがどうしてできるだろうか。夢見がちにも程がある。
人間はすぐに理想を思い浮かべて期待してしまうが、現実はそう甘くない。努力をした者にのみ理想や夢を語る権利があるのだ。そしてその理想や夢を掴むことができるのは努力した者のほんの一部である。
俺には夢や理想を語る資格がない。自分の性格を変えるような努力をしていない。縁結びの神様が間違って俺のところに縁を持ってこないだろうか。考えが甘い。
入学前に戻って俺の希望をトンカチで割ってやりたい気分だ。いや、俺自身を殴ってやりたい。




