プロローグ
「こんなことはもうやめよう」
お願いだやめてくれ。切実に願う。
矢野も白神先生も高ノ鳥さんも倒れてしまった今、頼みの綱は俺と黒條さんしかいない。
「もう手遅れじゃ。わしはこの街とともに滅びることに決めたからのう」
「カノジョ」は聞き入れる様子もなく叫ぶ。本気だ。最早話し合いでは解決しないか……。
「私が……囮になるから……その間に箱を……」
黒條さんが俺にだけ聞こえるようにぼそぼそ言った。
彼女を囮にするのは気が退けるが、他に打つ手立てが思い浮かばない。
仕方がない。
俺は頷くしかなかった。
「何をこそこそと!」
「カノジョ」は俺たちに霊気を飛ばしてくる。
必死によける。あわやのところで霊気が服をかすめる。
早くしなければやばいな。
黒條さんもそう思ったらしくなんとか俺に近づき、
「いくよ。……私の後に……続いて」
と言って、箱目掛けて突撃する。
「甘いわ!」
「カノジョ」は大きく手を振りかざす。
霊気の嵐がこちら目掛けてやってくる。
黒條さんは必死に術を使って防いでいく。しかし、ついに防ぎきれなくなり霊気の嵐に飲み込まれてしまう。そしてそのまま吹っ飛ばされてしまった。
「黒條さん!」
くそっ!
俺は黒條さんを助けに行きたい気持ちをこらえ、箱に目掛けて突っ込む。
「いい加減あきらめろ!」
霊気がより一層増してこちらにやってくる。俺は手で防いだり、避けながら前進する。
「ちっ」と「カノジョ」は舌打ちをする。
いける!
箱に手を伸ばす。
よしやった!
そう思った瞬間だった。
背中に激痛がはしる。
「くあっ!」
身体の自由が利かなくなり、地面にたたきつけられる。
「惜しかったのう。裏からは気付かんかったじゃろ」
「カノジョ」のしてやったりの声が頭上から聞こえる。
くそっ! くそっ! くそっ! あと少しだったのに!
ぼやけた視界に黒い霊気が街目掛けて飛んでいくのが映る。
……これで終わりなのか? 街は……崩壊してしまうのか?




