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ミレニアム1001  作者: みづきゆう
第三章、赤と白の訪問者
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二、スノウ(2)

 リーナは、


「レッド、乱暴らんぼう。ニュート死んだらどうする?」


「うるさいから寝かせただけ。すぐに気がつくよ。さあ、パパッと用意するよ。リーナ、袋にある男性用化粧道具出して。それと、こいつ視力いくつだっけ? 0.1の使い捨てコンタクトで間に合うかな。」


 で、午後になった。ニュートはリーナといっしょに屋台やたいに立っていた。屋台では、ホットドックを販売しており、リーナがつくる係りで、ニュートは売る係りだ。


「すごく似合にあうよ。だんぜん、いまのほうがいい。」


「ったく、レッドのやつ、あとでおぼえていろよ。あ、ダメダメ。写真とるな! 私達はモデルじゃない!」


 ホットドックを買いにくる客より、イケメンと美女のカップルを見学にくる客が圧倒あっとう的に多かった。メガネをはずし、はやりの服を着て、今風いまふうのアイドルイケメンに変身したニュートは、国文科のオッサン学生とは、もはや別人だ。


(え? 彼って、マーシー・カーティスなの? あのダサイ男? 顔がいいのはわかってたけど、こんなにかっこよかったんだ。ねぇ、となりにいる子、あの子、カーティスの妹さんだって。きょうだいそろって、美形ね。うらやましいわ。)


(あの子、リーナちゃんて言うんだってさ。ああ、ダメダメ。ナンパは、ヤバイって話だ。ほら、レッド・ドラゴンがさ、この前あの子に手を出そうとした体育科の学生、しめあげたってウワサだ。


 兄貴のカーティスも、妹にはけっこうウルサイってきいてるしな。それに、あれだけのイケメン兄貴をもつ妹だったら、おれ達じゃあ、まず相手してくれないだろう。かわいいけど高嶺たかねの花だ。)


(ねぇねぇ、知ってる? カーティスさんて資産家みたいなのよ。社会人で仕事しながら、教養のために古典なんてやってるくらいの人だものね。


 彼が運転している古いタイプのスポーツカー、この前ネットで値段調べたけど、マニアのあいだじゃ、かなりの高額で取引されてるみたいなのよ。限定販売の希少きしょうタイプみたい。


 いったい、いくらぐらい、お金持っているのかしらね。あれだけかっこいいし、玉の輿こしねらってみたかったりして。)


 何はともあれ、屋台は例年より、はるかに売り上げが多かったのは事実だ。そして、翌日、大学の新聞部が発行した大学祭特集の記事は、一面に美形きょうだいの写真を大きくのせていた。この新聞もよく売れ、さらに新聞部に写真も売ってくれと、学生がつめかけたという。


 いつもの姿にもどったニュートは、新聞を持ちながら、ひやかしにくる学生をずっと無視むしし続けていた。そして、帰りぎわ、新聞部の部室から、リーナが出てくるのを見つけた。手には封筒ふうとうのようなものを持っている。


 何を持っているのかなと思い、声をかけようとしたらレッドがきたので、思わずかくれてしまう。リーナはレッドとともに、どこかへと行ってしまった。


 新聞のことで何かあったのかなと思いつつ、ニュートは帰宅きたくした。それからまもなく、レッドとリーナは帰ってきた。リーナは、何も言わなかった。けど、ニュートは気になって仕方しかたが無い。


 リーナがキンブルといっしょに夕食の用意をしている最中、こっそりとリーナの部屋にしのび込んだ。そして、荷物をあさる。封筒があった。昨日の屋台での自分の写真だった。


(この写真をもらいに行ってたんだ。けど、どうしてこんな写真。)


 ・・・ニュート、いまのほうがいい。


 ニュートはため息をつき、写真を封筒にもどした。


(帝国風にまってきたんだな、リーナは。古い考えのもとで、貴族として育った私では、もはや理解不能か。けど、リーナといっしょに、売り子をしたのは楽しかったな。)


 ごうれば郷にしたがえか。リーナがのぞむなら、時々でいいなら、そういう姿をしてもいいだろう。そうすることにより、自分のそばにいてくれるのなら、それでいい。


(娘にてられまいとしている、父親の心境しんきょうだ。父親か。リーナはいま、私に何をのぞんでいるのだろう。父親としての顔をすると、もうかなり、うるさがられるし。)


 また、ため息が出た。リーナの部屋から出て、さらにまたため息。そして、部屋に帰ってからも、夕食までため息がとまらなかった。



 その晩、レッドのもとに、ジョナサンから電話が入った。どうやら、大学祭でのクレームのようだ。


 レッドは、


「目立つ行為はさせるな、と言ったじゃないかって? そんなのきいてないわよ。新聞部のエサになったのが、そんなに気に食わないの? あら、ネットで美形きょうだいって、もう流れちゃってるの? ケータイでかなり撮影さつえいされてたしね。。


 ・・・・。


 そんなにどならないでよ。もう、ここにいるって、世界中にバレちゃってるしさ。この前アガった、クマにおそわれた身元不明の遺体だって、どっかの国のスパイだったじゃない。あんたが派遣はけんしたガードにも引っかからなかったし、スノウが見つけてくれなかったら、この城に侵入しんにゅうされてたかもね。

 

 なら、いっそのこと有名にしたら、かえって安全じゃないかと思ったのよ。まだ、マーシー・カーティスだけと、ニューティス・リーガンは時間の問題でしょう。別にいいんじゃない? ダムネシアのマッドは、帝国にいるってもう常識だしね。


 たぶん、カンのいい人は、すでにマーシーがだれか見抜みぬいているはずよ。ネットで流れたのなら、以前、彼が接触せっしょくした人達もさわぎたてるはずよ。ダムネシアの反応は、どうなっているのかしら。


 とにかく、あれだけのイケメンさんよ。おまけに資産家だって、学生のあいだじゃ有名だしね。玉の輿ねらってる子も、けっこういるみたいよ。そんなに、どならなくてもいいんじゃない? 彼は、いつまでもかくれているタイプじゃないわ。それに、かくし続けられるタイプでもない。


 なら、立場をおおやけにし、公器こうきとしたほうが得策とくさくよ。これで、どこかの国も簡単に手出しできなくなるし、彼の安全は国民が守ってくれるわ。なにせ、巨万の富と発展する未来、強大な力を国にもたらしてくれる、貴重品だしね。

 

 彼の値段? さあ、つけられないわね。帝国は幸運だったのよ。ダムネシアはどうして、彼を追放なんかしたのかしらね。事情とやらは、うかがっておりますけど、私には、父親の愛情をめかけの子に取られた、嫉妬しっとくるった女の事情程度にしか考えられないわ。


 たぶん、それがダムネシア女王サマの本音でしょうね。前国王サマは、とてもニュートをかわいがっていたようだし、わざわざ、お印までご用意なさい、ひそかにだけど、公的にも王子だと証明する証書類をフェルド殿下をつうじて、おわたし下さったくらいだもの。


 ・・・・、たしかに、彼は、王子サマよりも科学者として価値のほうが上ね。それに、彼は、自分が王子だという事実には、いっさい関心もってないわ。親が見つかって喜んでいるだけよ。そう、それだけ。


 話は終わり? だったらもう切るわ。え? 今度、スパイをナントカする時は、先にちゃんと連絡入れろ?


 むりむり。私はともかく、スノウの行動は、私にだってわからないもの。この前だって、血のついた服の切れはしをもってきて、私に報告したくらいだものね。もう、そろそろ、ネコの正体、教えてくれてもいいんじゃないかって? まあ、ネコにクマのマネなんかできないものね。


 たぶん、話してもいまのあんたじゃ理解できないわ。そのうち、ニュートが気がついてくれるから、彼から説明を受けなさい。じゃあ、おやすみ、クライス。」

 


 パソコンをたたいていたニュートの指がとまった。そして、あくびをする。時計を見たら、すでに夜中一時。寝たほうがよい。


(提出課題を片付かたづけてから、仕事か。家でできる仕事とはいえ、両立はけっこうむずかしい。けど、やるってタンカ切ってしまったし、挫折ざせつしてリーナにかっこわるいとこも見られたくない。あきっぽいと言われるのもいやだ。)


 ガサリと窓の外から音がきこえた。ふくろうでもいるのかな、と思い、カーテンを少しつまんでみる。窓の近くの木の枝に、月明かりにらされた白い影が見えた。なんだ、スノウか。


 フーッ! とつぜん、白い毛が逆立さかだった。そして、パッと枝から飛び、一瞬いっしゅんにして、スノウの姿が消えた。ニュートは目をうたがう。スノウが消える直前、何かに姿が変わったように見えた。


(な、なんだったんだ、いまのは。飛んだ瞬間、つばさのようなものが見えた。姿もネコではなかった気がする。見間違みまちがいでなければ、あれはたしか、色は白いけど、レッドのトレーラーの絵と似ているような・・・。)

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