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「なんだよ、冴も楽しんでるんじゃないか」
「だって、こんな綺麗な景色、楽しまないと悪いわ」
私の言葉に孤は不思議そうに首を傾げた。
「冴みたいなやつがどうして自殺しようとしたのかわかんねーな」
「私、みたいなって」
「オレは人間の気持ちがよくわかんねーけど、そうやって何かを綺麗だとか思う奴は人生を諦めたりしないと思うんだよな」
私は俯いた。
「……孤はそう言ってくれるけど、他の人は違うのよ」
「どういう風に?」
父にも母にも、ましてや友達に話せなかった、話したくないと思っていたことが孤と話していると不思議と自然に口から出た。
「私ね、昔から詩を作るのが好きだったの。でもね、友達はみんな私を馬鹿にしたのよ」
――うわ、そんなの書いて恥ずかしくないの?
――そうやって夢見がちだから勉強ができないんじゃない?
「友達に馬鹿にされて、私は人前で詩を作らなくなった。夢見がちだって言われないように風景や色々な事も心の中から遮断して」
でも、
「でもね、そんな事しても一度貼られたレッテルって剥がされないのよ。私は普通にしたいのに、みんなが私を変わり者扱いして、避けて、しまいには私は1人になったわ」
理解者になってくれると思っていた両親も私が悪いと言って取り合ってくれなかった。
「でも、諦めずに両親に言い続けたら逆に気味悪がられてこんなアパートで一人暮らしよ。半分は両親が負担してくれてるみたいだけど」
だからこのセカイは私を救ってくれないって分かったから自殺しようとしたの。
話を締めくくると孤は苦い顔をしていた。
「冴も大変だったんだな。でも、オレは冴を馬鹿にしないからな」
私はくすっと笑った。
「ありがとう、孤」
孤は照れたように鼻の頭をポリポリとかいた。




